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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第九章 新婚旅行と新婚生活
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第88話 一夜だけの新婚生活

毎日1話 午前3時投稿

 昨日来た道を通って帰ることにした。克矩さんの疲労もかなり溜まっていると思うから、無理はしないで休憩を余分にとろう。龍野SAで1時間ほど休憩しても18時半くらいにはマンションに着くはず。時間はたっぷりあるから、休憩を2時間とっても問題ない。日曜日の夕方近くだし、3連休だから車は結構多い。それでも、順調に流れているから心配は要らない。


 暫くすると三木SAの看板が見えたけれども、「まだ疲れてないからこのまま龍野まで一気に走る」と克矩さんがスピードを落とさずに言った。


「眠くなったら言ってね。目が覚めるようにしてあげるから」

「え? 眠くないけど、何をしてくれるの?」

「うふふ。高速だから手を握ったりはしないわよ」

「あはは、確かにそれは目が覚めるかも」

「いや、だから、それはしないよって言ってるじゃない」

「何か期待してしまうなぁ」

「そんな期待するようなことじゃないから、真面目に運転してね」

「でも、今の話で当分は眠くならないと思うよ」

「だから、何も話してないのに、期待だけしないでよ」

 速度は90km/時くらいで流れている。明日が混むのかなぁ? 私たちの日程は、きっと正解だったのだと思う。


「詩織さんは疲れたでしょう? 日頃こんなに歩いたりしないものね」

「そうね、日頃はこんなに歩かないもの。ちょっと疲れたわ。……静かにしてると私が眠ってしまうかも」

「それでも、今日は急いでないのに駆け足で回ったよねぇ」

「美術品とか調度品とか、当時の生活環境を示すものが多いから、結局はどこも同じような展示になるのよね」

「訪れる人たちも、それぞれに思惑があるから、自分の興味ある館だけ入るのよね、きっと」

「そうだろうねぇ。僕たちも結構スルーしたけど、結局は6館入ったのだから、これで良かったと思うよ」

「最後は、殆どスルーしたけどね」

「まあ、見物疲れもあったからね」


「帰ったら、取り敢えずお風呂にする? 食事する? それとも……」

「あはは、どこかで聞いたような台詞だなぁ」

「うふふ、迷わずお風呂にしましょうね。埃と汗を流したい」

「お風呂は一緒に入ろうね」

「え? だめよ、そんなことしたら、裸を見られてしまうじゃない」

「今朝、シャワーで一緒に入ったから全部見たよ」

「あれは、貴方が勝手に入ってきたんじゃない」

「時間の節約をしただけ。今夜も時間を節約して早く寝ないといけない」

「早く寝るって、本当に何もしないで寝るの?」

「何かして欲しい?」

「克矩さん、ずるい言い方ね。何かをしようとしているくせに」

「勿論、僕は何かをしたいのだけど、詩織は何もしないほうがいいの?」

「意地悪!」

「じゃ、一緒に入ろうね」

「……うん」


 暫くすると、龍野西SAに着いた。

「営業時間は17時までみたい。早めに出てきて良かったね。ここでコーヒー休憩1時間できるわね」

「コーヒー休憩30分でもいいよ。そのあと、車のシートを倒して1時間ほど寝たほうがいいかも」

「あ、そうね! それがいいわ! 身体を横にして休んだほうがいいよね」

 というわけで、コーヒーを飲んで30分ほどゆっくりしてから、車に戻ってドアロックして仮眠をとった。

 スマホの目覚ましを1時間半ほどにして、シートを倒して目を瞑った。

「キスはだめよ。目が覚めるから」

「……でも手くらいは繋いでいようよ」


 1時間ほどで目が覚めると、彼も丁度シートを起こすところだった。

「しっかり眠った?」

「これでもう岡山までは余裕」


 トイレを済ませてから出発。間もなく備前ICを降りて国道2号線を走る。途中から250号線(旧2号線)になる昨日と同じルートだ。18時50分、ほぼ予定どおり無事に帰ってこられた。大きい荷物は彼が持って上がってくれる。私は、いつものように先に上がると鍵は掛けないまま寝室に入って服を着替えた。彼が荷物を持って入るとカギを掛けてから寝室にやってくる。もう、寝室に入ってもいいのよ。


「お疲れ様でした。楽しかったわ。ありがとう。疲れたでしょ? 私は食事の用意するけど、克矩さんはお風呂にどうぞ」

「詩織と一緒に入りたい」

「少しビールを飲むでしょ? その前に、お風呂に入っておきたいわ」

 彼が、ここに泊まることができるのは滅多にないのだから、今夜はお酒も飲みたい。

「私、頭も洗いたいの。克矩さんが入っている間に、ご飯の用意するから」

「分かった。一緒に入るのは、あとからにしよう」

「どうしても(こだわ)るのね」

「着替えを持って、お風呂に入る」

「は~い」


 今日のために用意しておいた作り置きのおかずを冷蔵庫から出して、レンジで温める準備をする。メニューは、「豚肉と玉葱の甘酢炒め(酢豚風)」「鶏肉と蓮根のきんぴら炒め」「人参とごぼうの塩きんぴら炒め」「梅しそ豚しゃぶ」。そして、ビールのおつまみにサラミソーセージをお皿に盛った。ちょっとだけビールで乾杯するのだ。


 彼が出てくると「ソファで待っていてね」と言って私もお風呂に入った。一日中、外を歩いていたから、頭から身体全部洗いたかった。大急ぎで身体と頭を洗って、ドライヤーで頭を乾かす。食事前からパジャマになるわけにはいかないから、普段着を着た。直ぐにおかず類をレンジに入れて温めながら、ビールを出してコップに注ぎ、二人で乾杯した。


「素敵な旅行をありがとう! とても楽しかったし、一生の想い出に残る旅行だった。初めての夜も、凄く素敵で克矩さんに感謝してるわ」

「こちらこそ、一生の想い出をありがとう! そして、詩織のヴァージンを貰えて嬉しかった」

 二人で乾杯をして、テーブルを挟んでキスをした。あぁ、なんて素敵な夜なんだろう。昨夜に続き、夢のように幸せな夜だ。恋して良かった!

「二日間で、結構沢山見て回ったよね。案外、私は元気なんだって思ったわ」

「確かに、よく歩いたよね。布引の滝と異人館巡りは、それなりに歩いたものねぇ」

「あれくらいで丁度良かったわよ。明日になったら脚が痛いかしら?」

「今日、痛くなかったのだから、大丈夫だと思うよ」


「ビールもっと飲む?」

「いや、これでいいよ。夜の楽しみが減ったらいけないもの」

「そんな理由なの? 疲れているから、飲むと寝てしまいそう?」

「明日は、昼過ぎまで寝ていようよ。昨夜はぐっすり寝てないでしょ?」

「そうね、ちょこちょこ目が覚めたし、克矩さんがその度に手を出してくるんだもの」

「ごめん。でも裸の詩織を見たり触れたりしたら、抱きたくなってしまうのよ」

「そんな、豊満ボディじゃないのに。がっかりしてない?」

「とんでもない! がっかりどころか、目が(とろ)けてしまうくらい素敵だよ」

「お世辞でも嬉しい。――ご飯にする?」

「うん、軽くお願い。おかずが凄く沢山あるねぇ」

「欲しいだけ、お皿に入れて食べてね」

「どれも美味しい」

「良かった! 新婚旅行から帰ってきて、こうしてゆっくりとお酒を飲んだり食事をして、一晩だけでも新婚生活をしてみたかったの」

「ありがとう! 僕は幸せだよ」

「私のほうこそ幸せな時間をありがとう! 克矩さんに恋できて良かったと心から思ってるわ」

「それは僕の台詞だよ。天使だと思ってた詩織さんに触れることができて、初めてもいっぱい貰ってしまった。これ以上の幸せはないよ」

「あ~ん、まだ触ったらだめよ。食事できなくなってしまうから」


 今夜もいっぱい愛し合ってひとつになるの。――幸せな夜は静かに更けていった。



読んで頂きましてありがとうございます。


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