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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第九章 新婚旅行と新婚生活
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第84話 布引の滝・六甲山天覧台

毎日1話 午前3時投稿

 生田神社の駐車場を出て、新幹線の新神戸駅へ向かった。ナビによると約2kmだから歩ける程度の距離。思ったより近いところにあるのね。新神戸駅の駐車場なんて混んでるのじゃないかと心配したのだけど、彼が「近くに駐車場は沢山あるから大丈夫」と言ってる間に新神戸駅に着いた。取り敢えず、駅駐車場の布引の滝への通路に近いところを探してみると、案外簡単に空きスペースが見つかった。

 

「運がいいわね。生田神社もそうだったし」

「詩織さんという女神と一緒だからねぇ」

「女神は大切にしないと神罰が当たるわよ」

「はは~! 仰せのままに」

「苦しゅうない」

「自然の中を歩くから、念のため、ここでトイレに行っておいたほうがいいよね」

「そうね。そのほうが安心よね」


 彼が自販機でペットボトルのお茶を買ってくれた。細かいところに気が付く人なのね。私、この人と一緒にいると気配りも何もしない女になってしまうかも知れない。


 新神戸駅の岡山寄り新幹線下に通路があった。壁に「布引の滝0.4KM」と書いてある。

「なんだ、随分と近そうね」

「ほんとだね。15分と書いてたけど、楽勝かな?」


 新幹線下の通路を抜けると緩い上り坂のコンクリート道路を歩く。左側は切り立った断崖のようなコンクリートの壁がある。この道路は新幹線に沿っていて新幹線のホームに上がるくらいの高さまで登っていく。緩い上り坂だと思ったけれども、ハイヒールなんかでは歩けない程の登坂だ。身体を少し斜め前に倒して登った。彼が手を引いてくれたけど、「歩けるわよ、これくらい」と言いつつ、お言葉に甘えて手を握った。だって、彼は手を握りたいのよ。


 坂を登りきったと思ったら、まだ坂道が続く。「布引の滝350m」と大きく書かれた看板がある。

「あれ? まだ50mしか歩いてないね」

「成程ね、たった400mと言っても山道の距離は大変なのよ。だから15分なんだ」

「甘かったわね」

 坂を登りきると、道路は平らになって煉瓦風の橋があった。「砂子橋(いさごばし)」と書いてある。この橋は国の重要文化財に指定されているらしい。橋を渡るとすぐ先に長い石の階段とその左に平らな道がある。

「え~?! 長そうな階段があるよ。ちょっとここで一休みしてお茶飲まない?」

「坂を上がって、すぐに階段はがっくりくるよね」


 この機会だから、彼の傍にくっついて身体を預けながらお茶を飲んだ。うふ、何か嬉しい。甘えてると新婚夫婦みたいじゃない?

「こんな風にして歩いたりしたことないものね。誰もいないから、ちょっとだけキスしてもいいわよ」

 彼が不審者みたいに周りをキョロキョロしてから、私を抱き寄せてキスをしてくれた。

 あ~、素敵! こんな風にしたかったのよ。

「うふふ、地元ではできないわよね、こんなこと」

「うん」

 と答えた彼の声は、少し(かす)れていた。


「階段は『雄滝(おんたき)まで270m』となってるけど、左の平坦な道は『雌滝(めんたき)まで100m』だって」

「迷わず左の雌滝へ行こう」

「そうね。レディーファーストということで」

「あはは、単に楽な方を選んだだけ」

「もう! ここでは、そう言うことは言わないのよ」

「あ、そうか! ごめん!」

「謝らなくていいわよ。二人だけの会話なんだから」

「うん」

 雌滝へはあっという間に楽々到着した。滝壺から広がって落ちる水のカーテンが素敵。ベンチに二人で並んで腰かけた。

「ねぇ、写真撮る? 二人の写真は拙いかなぁ?」

「いいけど、誰もいないから取り敢えずは別々に撮ろうよ」

 滝に背を向けてベンチに腰掛け、滝を入れた写真をお互いに撮った。

「旅行に来て良かったわ。凄くいっぱい想い出ができそう」

「そうだよね。本当に一生の想い出になる」

「あ! 誰か来たよ! 写真を撮りっこしよう。私が声掛けてくるわね」

 二人での記念写真がやっと撮れた。勿論、私の持っているスマホで撮影した。


 さて、次は鼓ヶ滝(つづみがだき)へと観瀑橋の傍にある石段を登るのね。そこから夫婦滝・雄滝へと繋がっているみたいだ。要するに、どちらから行ってもぐるりと廻ることができるようになっていた。途中のところどころに藤原良経などの歌碑があったが、歩くのがやっとだから横目でチラリと眺めるだけだった。歩くというより登ったわけで、この石段はかなりきつかった。


 鼓ヶ滝の名前の由来は、滝の音が鼓の音に聞こえるからとかで、お茶を飲みながら耳を澄ませてみたけれども私の耳は音楽的感性がないのか、良く分からなかった。次は、ここから直ぐのところに「雄滝(おんたき)夫婦滝(めあとだき)」があった。雄滝は名前のとおりというか岩肌が荒々しい感じのする落差43mもある滝だった。一筋の滝が段々広がって真っ青な滝壺に落ちている様は荘厳で綺麗。


 夫婦滝は、雄滝の滝つぼから下に流れ落ちる水が二手に分かれて滝壺で1つになることから付けられた名前のようだけど、まあ、直ぐ下だから雄滝の一部みたいな感じだった。ここにもベンチがたくさんあったので、二人で並んで滝を観てから、近くにいた人に記念写真を撮ってもらった。


 そもそも、布引の滝はこれらの滝の総称で、「日本三大神滝」の1つらしい。残り2つは「那智の滝」と「華厳の滝」なんだって。残り2つは知ってたけれども、「布引の滝」は恥ずかしながら知らなかった。その意味でも来て良かったわ!


 帰りは延々と続く石段を下るだけなのだが、疲れた脚には思ったよりもきつかった。だから、「腕を組む?」と聞いたら彼が喜んで腕を出してくれたので、彼の腕に半ばぶら下がりながら降りてきた。彼はジョギングしてるから脚は元気なのよね。新神戸駅まで戻ってきたら、私の脚は震えていて、運動不足が露呈してしまった。


 新神戸の駐車場から六甲山天覧台までをナビにセットして出発。30分ほどで到着見込みだと表示された。現在は3時前だから、およそ3時半くらいに六甲山に到着見込み。そうすると、六甲山天覧台で2時間くらい過ごせる計算だ。ちょうど良い。六甲ケーブル駅を超えて山道に入って暫く走ると、道路が曲がりくねっている。まあ、山道だもの仕方ないわよね。でも、車酔いし易い人は大変かも知れない。


 六甲山天覧台はケーブルカーの六甲山上駅のすぐ側で、駐車場も六甲山天覧台の下にある。天覧台へは階段を上がるだけ。昭和天皇が立ち寄ったから「天覧台」なんだって。標高737m。神戸の街並みは勿論、大阪も一望できる。大阪湾て案外近いのね。幸い天気が良かったので、眼下の街並みが小さな粒のようにキラキラしていて素敵だった。

 夜景が綺麗なのだろうけど、それはホテルのレストランや宿泊する部屋から眺められるので、ここでは布引の滝で疲れた脚を癒すべくコーヒーを飲みながらゆっくりと寛いだ。スイーツなんて食べたらディナーに影響するから残念ながら見送った。


「ここは夜景スポットなんだね。……そう言えば、もう、ホテルにチェックインできる時間帯だよね?」

「そうだね。一服したらホテルにチェックインして部屋で寛ごうか?」

「うん。夜景はホテルで観られるから、ここはちょっと休憩だけでいいね」

「足の疲れは大丈夫?」

「多分、大丈夫だと思うけど、あの下り坂の階段は結構きつかったわ」

「そうだよねぇ。いつもジョギングで走っている僕でさえ、疲れたよ。痛くはないけどね」


 16時過ぎに天覧台のカフェを出てホテルへ向かった。10分も走らない内にホテルへ到着。お疲れ様でした。



読んで頂きましてありがとうございます。


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