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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第九章 新婚旅行と新婚生活
33/50

第83話 三宮 生田神社

毎日1話 午前3時投稿

 土曜日。天気は快晴。彼が午前9時頃マンションにやってきた。ネクタイを締めてブレザーを着て、カバンを持っている。出張スタイルだ。私も、既に出発の準備は整っていて、服も外出用に着替えている。これから、彼はネクタイを外して休日用のシャツに着替えるのだ。


「ねぇ、ホテルのレストランてドレスコードないわよね? 観光地なんだから」

「大丈夫。確認してある」

「流石は抜かりないわね」

「まぁ、ブレザーあれば大抵は何とかなるけどね」

「じゃ、服を着替えてね。こちらへどうぞ。私以外は誰も入ったことないVIPROOMよ」

「おお! 感激で緊張します! 甘い匂いがするなぁ!」

 私の寝室だもの、結心さんですら知らない部屋なのよ。私のヴァージンをあげることにした貴方だけは特別待遇にしてあげるわ。

「ウォークインクローゼットの左側の前を貴方の優先席にしておいたわ」

「ありがとう! こんな特別席に置いて貰えるなんて! もう夢の世界にいるみたい!」

「うふふ、喜んで貰えて嬉しいわ。私のこと大切にしてね」

「勿論ずっと大切にします!」

「あ! 自分の服以外は触らないでね。これは絶対約束してよ」

「約束します! 絶対守ります!」


「私と話をしながら着替える?」

「ちょっと恥ずかしいかも」

「あはは、やっぱり、そう言うと思ったわ」

「からかわないでよ」

「だって、ワイシャツを着替えるだけでしょ?」

「あ、そうか。じゃ、このまま着替えるよ」

「どうぞ。それで、あとは靴を出したら完了?」

「そう」

「ワイシャツとネクタイは、クローゼットのここに吊るしておくわね」

「ありがとう」


 マンションを出る前に軽くチュッとしてから、彼が私の荷物を持って先に車へ降りていった。私は、電気などのチェックをしてから、バッグを持って鍵を閉めた。車に乗り込むと、彼がエンジンを掛ける。いよいよ、待ちに待った新婚旅行へ出発だ。ちょっとどきどきする。


 彼が車のナビに「生田神社」を目的地としてセットした。ナビが岡山ICに行けと出ているが、彼は無視して250号線(旧国道2号線)を東へ走り始めた。備前ICから山陽自動車道に入るらしい。

「ナビに従ってわざわざ混んでいる街中を逆の西に走って遠回りするなんてしない」

「ナビは遠回りを案内するから困るって話をよく聞くわね」

「ブルーハイウェイ経由でも大して時間は変わらないけどね。どちらにしても神戸まで2時間くらいだと思う」

「急がなくてもいいから安全運転でお願いしますね。疲れたら休憩しましょ」

 暫くすると吉井川の備前大橋を渡った。

「案外、スムーズに走ってこられたなぁ。このルートが正解だった。あと30分弱で備前インターに入れる」

「ナビが何度も左に行けって言ってるわね」

「あれは山陽町のIC(インターチェンジ)に誘導してるのよ。寧ろ遠くなる」

「まだまだナビは賢くないのねぇ」

「高速に乗ったら、生田神社まで1時間半くらいかな? 予定どおり、ちょうどお昼前くらいに着く」


 車は、備前インターから高速に乗ってスピードを上げた。大半が、山の中を走るので正にドライヴをしている感覚だ。

「疲れてない?」

「大丈夫。これくらいの時間では疲れないよ」

「じゃ、予定どおり生田神社に着いてから食事とトイレだね」

「はい。色々なルートがあるのだけれど、ナビの推奨ルートで行くよ」

「ナビの表示だと1時間20分が所用時間か。そうすると11時半までには余裕で到着見込みね」

「新神戸を通るのだけど、予定どおり生田神社へ先に行こう」

「そうね。恋愛の神様だから、そこから始めるのがいいわよね」


 特に渋滞もなく生田神社の近くまで来たが、途中お寿司屋さんがあったので昼食は握り寿司にした。コーヒーは飲まずに生田神社の駐車場へ向かう。それなりに参拝客は多かったのだけれど運よく神社の広い駐車場に止めることができた。生田神社の御祭神は、日本神話の女神稚日女尊(わかひるめのみこと)。若く瑞々しい日の女神だって。縁結びの神として、恋愛成就を祈願する参拝者が多いらしい。


 (ちな)みに、日本三大縁結び神社は、出雲大社(島根県出雲市)・貴船神社(京都市左京区)・氣多大社(石川県羽咋市)を言うらしい。氣多大社は知らなかったなぁ。私には縁のない話だと思ってたから興味なかったもの。別に神頼みする積もりもないし。あ、でもこうして参拝するのだから、一応はお願いするの。だって、ご利益があるのなら欲しいわよね。日本人の宗教観なんてそんなものよ。


「御朱印帳を買う?」

「要らない。私はそういうの集めたりしないから。恋愛のお守りは買おうね」

「取り敢えずは、あっちの木の鳥居から入ろうよ」

「そうね。これは二ノ鳥居? 一の鳥居はどこにあるのかしら?」

「まあ省略してもいいんじゃない? 見えないものは省略」

「うふふ。そうね。へぇ~、伊勢神宮の柱をもってきてるのね」

「ヒノキなんだねぇ。……神社の通路は端を通るんだよね。確か神様が真ん中を通るんだったかな?」

「朱色のが三ノ鳥居かな? その先は桜門?」

「鳥居って、殆どが朱色だよねぇ。中国から伝わったからなんだろうねぇ」

「そうでしょうね。勉強してないから知らないわ」

「こっちに手水舎があるから、ここで手や口を清めよう」

「三ノ鳥居の横でお守りを売ってるわね。帰る前に寄る」

 そのまま社殿まで歩き、鈴を鳴らしてお賽銭の「5円玉」を投げてから、私たち二人の恋愛が永く続きますようにとお願いした。

「二礼二拍手一礼だったよね?」

「そう」


「どこの神社も、本殿の周りにいっぱい社があるわよね。一応、ぐるっと回ろうか?」

「時間は十分あるから、深入りしない程度に回ろう」

「深入りって、なんて言う意味での表現なのよ」

「あ、深い意味はないのよ。更に奥までは行かないという意味だから」

「まぁ分かるけどね。この話に深入りしないでおくわ」

「あはは、一本取られたなぁ。僕は一生詩織さんに頭が上がりそうにないわ」

「そんなことないわよ。優しくしてくれたら、私は優しいわよ」

「ありがとう。右から回ろう」

「塞神社・雷大臣神社・人丸神社の3つがあるけど、それぞれ病気・料理・学問の神様なのね。お賽銭投げていくわ」

「次は包丁塚だよ」

「あら! ここにもお賽銭が要るわね。……今度は楠の神木だって。大きいわね」

「……奥に稲荷神社があるけど、ここは()()()しないでいこうね」

「あはは。ホントにそういう所があったわね」

「……本殿の真裏になるのかな? ここにはご本尊ではなく、4つの神社があるみたい」

「きっと全部、他所の神社の支店みたいなものよねぇ」

「眺めるだけで行こう。……生田の森とか金龍泉とかもいいよね?」

「本殿の左側も特にないよね。池があるけど、神社そのものとは違うし」

「うん、……私たちの参拝目的は済んだから、次へ行きましょう」

「参拝目的?」

「そりゃ恋愛成就に決まってるわ。帰る時にも鳥居で一礼忘れないようにしようね」

「はい、女神さま」

「うふふ、止めてよ。……その前にお守り買わなくっちゃ。……貴方とペアで買いましょうね」

「うん。赤と白があるなぁ。僕たちのは、僕が買うよ」

「私が赤で、貴方が白ね。……結心さんにも同じようにしてお土産にするわ。結心さんのは私が買う」


 忘れずに最後の鳥居で感謝の念を込めて一礼し生田神社を後にした。次は布引の滝。車は新神戸の駅前駐車場に置いて歩くらしい。



読んで頂きましてありがとうございます。


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