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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第八章 恋愛ってこれでいいの?
27/50

第77話 今夜も彼が送ってくれた

毎日1話 午前3時投稿

 木曜日。

 昨日に続き、今日も彼と一緒にマンションへ帰ってきた。毎日外食ばかりしていて、奥様に疑われないのだろうか? 私が無理を頼んでいる訳じゃないから知らない顔していても良いのだろうけど、でも私が原因の一旦を担っているのだから少しは気になる。聞くのも変だから気が付かない振りをする。私って、ずるいのかも知れない。影の女って、こういう気持ちになるのだろうなぁ、とぼんやり考えてしまった。


「普段着に着替える?」

「いいの?」

「着替えを持ってくるわね」

 と言いながら、寝室へ行って預かっている普段着を持ってきた。まだ、寝室で着替えることは許可しない。あと10日程なんだから我慢して貰わないとね。

「ここで着替えてね。寝室へはまだだめだからね」

「分かってるよ。ここで問題ない」

「脱いだ上着とかは、そこのハンガーに掛けてね」

「ありがとう」

「ご飯の用意してくるね」


 ご飯を食べながら、また旅行の話。

「生田神社のあと、先に布引の滝にしようよ」

「いいけど、どうして?」

「滝に掛かる時間の誤差が大きいかも知れないから、先に済ませておけば異人館で落ち着いて回ることできるでしょ?」

「あ、そうだね。歩く時間が多そうだものね」

「うん、異人館は翌日にも回ったりできるから、途中で切り上げても安心でしょ?」

「生田神社、布引の滝、異人館、六甲山という順番だね」

「もう来週の土曜日だよ。あっという間だから、漏れなく準備しないといけないわよね」

「まあ、準備というほどのものはないと思うけど」

「女は、色々とあるのよ」

「そうか、大変ね。男は、極端に言うと服を着ていれば何とかなるみたいな感じ」

「いいわねぇ。女性は着替えとか化粧品とか細々とあるの」

「バッグは大きいの?」

「一泊二日だから、大した量はないわよ。普通の大きさのバッグでいいわ」

「僕は財布だけ」と言って彼が笑う。

「お世話になります」と私も笑う。


「普段着に着替えていると、やっぱり楽?」

「そりゃ、皴になるのを考えなくてもいいし、楽そのもの」

「良かったわね。時々洗濯してあげるわね」

「ありがとう。着る回数少ないから、本当に時々でいいよ」

「旅行に行くときの服は別に持ってくるんだよね?」

「別にバッグに入れてくる」

「あ、靴はこの前入れてたよね?」

「玄関のシューズボックスに入れてあるよ」

「ありがとう。当日、ここで革靴と履き替えてから行く」


 食事が終わり、洗い物が済んでコーヒーも淹れて、ソファへ移った。

「ここはマンションだから、ベランダに出たら景色はいいの?」

「良くないわよ。周りにもマンションだらけ」

「やっぱりそうか」

「夜景?」

「そうだけど、灯りを消したら恋人ムードにならない?」

「そうね。考えてみたら、明るいところでキスとか恥ずかしいわよね」

「薄暗い程度がいいなぁ。詩織さんは?」

「私も薄暗いほうがいい」

「わざわざ電気を消すのって変かなと思って言わなかった」

「私も、準備してからって変かなって思ってそのままにしてた」

「早く言えば良かったね」

「じゃあ、電気消そうか?」

「うん。真っ暗?」

「小さいのを点けてるよ。目が慣れたら分かる」

「ほんとだ。少しずつなんとなく見える」

「うふふ。ムード出るわね」


 抱き寄せられてキスされた。いつもより、ずっと雰囲気がいい。胸を触られると凄く感じる。ムードって大切なんだと今更ながら思った。手が、当然のように服の中に入ってくる。背中のブラホックも外された。彼の手が胸に直接触っている。前回は驚きの中で新しい刺激を感じてしまったが、今日は何故か懐かしい何時もの愛撫のように感じられる。彼の手が愛おしい。彼に触られているという実感が幸せにしてくれているのだと思う。


 胸の敏感な部分をくりくりと彼の指が触る。知らず知らずのうちに吐息が出てしまう。何度も味わった快感が押し寄せてくる。彼の背中に腕を回して抱き締めた。私には、それしか歓びを彼に伝える手段はないの。快感に震えて身体を逸らしたり声がでるのは私の意思による表現じゃない。彼の愛撫によって身体が勝手に反応しているだけ。私の意思は、彼を抱き締める両手の動作なの。もう何も考えられなくなって、彼の愛撫に翻弄されているだけなのに。


「胸にキスしたらだめ?」

「えっ? 嫌じゃないけど、私どうなってしまうのか怖いわ」

「ボタンを外していい?」

「……」

 いいとは言えなかったけど、抵抗もしなかった。もう、彼にお任せするわ。でも、私だけ裸になるなんて嫌だわ。――暗闇は羞恥心を取り払ってしまうみたいだ。

「貴方も上を脱いで頂戴。私だけは恥ずかしい」

「うん」

 彼も、上半身裸になった。彼が私の上半身の服を脱がす。恥ずかしいけど、暗いから見えないわよね。


 改めて彼に抱き締められると、彼の胸の肌に私の顔が直接当たっている。暖かい。彼の息遣いと動悸が聞こえてくる。私の胸も彼のお腹辺りに直接押し付けられている。恥ずかしい。身体が動くと、胸の膨らみの先端が彼の肌に擦れるような動きをして新しい刺激を感じてしまう。どきどきする。まるでセックスをしているような錯覚を覚えてしまった。私の身体中が敏感になっている。絶え間なく吐息が漏れる。呼吸が荒くなって声を抑えられない。


 彼の顔が胸に近付いて息が胸に触れる。暖かい唇が胸を這った。今までの手の感触とは全く違う柔らかいものが胸の敏感な部分に当たったと思った瞬間に、吸い込まれるような感触に声が出てしまった。そして、吸い込まれた先端に舌がねっとりと(まと)わりつくように動きながら敏感な部分を(もてあそ)び始めた。もう頭の中が真っ白。快感が身体中を駆け巡る。身体が仰け反るように反応する。何も考えられない。彼の背中に回した手が力一杯抱き締める。快感が波のように押し寄せ続けて、そして砕けて散った。私は荒い呼吸を繰り返しながら、身体の力が抜けてそのまま動けなかった。……暫くして、彼が離れてトイレに向かった気配がする。私は、そのままじっと放心状態になっていた。


 暫くして彼は戻ってくると、そっと抱き締めてキスをしてくれた。嬉しかった。思わず彼に「ありがとう」と言ってしまった。何にありがとうと言ったのか分からない。兎に角嬉しかったお礼なのだ。


「……出してきたの?」

「うん」

「私、どんどん敏感になってきてるのかしら?」

「少しずつ新しい刺激に慣れてきているのだから、敏感になってきていると思うだけ」

「初夜のときにちゃんとできたらいいな」

「心配ないよ。こうして、たくさん感じているから、初めてのときも大丈夫だと思うよ」

「そうだといいけど」

「最初は、手の刺激だけで直ぐに感じてたけど、今はそれほどじゃないでしょ?」

「感じてたけど、最初ほどじゃないかも」

「それでいいのよ。詩織さんは敏感に感じやすいタイプだから、こうして慣れていくことで、より深い快感が得られるようになる」

「そうなの?」

「だから、初夜は心配しなくていいよ」

「ありがとう」


 裸のまま、彼を抱きしめてキスをした。彼も抱き締めてキスを返してくれる。凄く幸せだった。二人の関係は、また一歩前に進んだのだ。


 あ! 服を着なくっちゃ。暗いからよく見えないわ。……どうしよう。取り敢えず、ブラや上着を手に持って寝室に飛び込んだ。寝室の灯りを付けて、身嗜みを整えてから、ソファの部屋に戻って灯りを点けた。彼も慌てて服を着ていた。明るい部屋に戻ると何か恥ずかしい。



読んで頂きましてありがとうございます。


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