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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第八章 恋愛ってこれでいいの?
25/50

第75話 結心さんのデート

毎日1話 午前3時投稿

 月曜日の午後。

 結心さんからラインが届いた。土曜日のデートに続いて日曜日もデートしたらしい。詳しいことは書かれてないけれども、その内私のマンションへ遊びに来ると書いてあった。どうなったのか早く聞きたいから、「今夜にでもどうぞ」と書いておいた。私の都合になるけど、明日まで彼氏は来ない約束だから。


 夕方、今日も彼から送ってくれるとラインで連絡があった。荷物もあるとのこと。彼の荷物が増えてくると、何だか同棲してるような感覚になってくる。まぁ、正直に言って少しワクワクしてきた。この感覚は不味いような気がするけれど、細かいことは考えないようにしよう。


 いつもの場所で彼の車に乗った。

「それにしても、ここは便利ね。本当に良く見つけたわねぇ」

「本当は、詩織さんが後部座席に座ると完璧なんだろうなぁ。後部座席は誰が乗ってるのか見えにくいからね」

「あ、そうよね! 今度からそうしようか? 後部座席なら、仮に見つかっても噂になり難いわよね。途中で助手席に移動すればいいもの」

「そのほうがいいかも知れない」

「今日はもう座ったから、次からはそうするわね」


「今日の荷物は、何が入ってるの?」

「靴と詩織さんの家で着る普段着」

「旅行の時に着るものは?」

「それは、当日持ってくる予定」

「ネクタイしてくるんじゃないの?」

「ワイシャツにネクタイは、当日着てくる」

「ここでラフな服にしないの?」

「スーツではなくて、ブレザーを着てくる」

「ワイシャツだけカジュアルに着替えるのね」

「そう。荷物が減るから。いつもそうしてる」

「カジュアルシャツはカバンに入れて?」

「そういうこと」

「じゃ、これで準備完了なのね?」

「多分」


「分かったわ。今夜は結心さんが来る予定なの」

「僕は上がらないよ」

「勿論分かってるわ。水曜日からはいいの?」

「ちょうど1週間になるからね」

 彼が運転しながら笑った。

 え? これ、どういう意味なの?

「水曜日もレストランに行く?」

「どっちでもいいわよ」

「じゃ、マンションで食べたい」

「うん、用意しとくね」


 マンションに着いたので、荷物を持って車を降りた。結心さんが来ると言ったからか、直ぐに車を発進して帰っていった。


 彼の荷物を寝室に置いて、服を着替えた。こうして彼の荷物が増えると、もうすぐ旅行に行くんだと実感が湧いてきた。どんな旅行になるのだろうか? 凄く楽しみ。


 食事が済んでから、水曜日に備えて1品だけ作り置きを増やしておく。

 その後暫くして結心さんがお菓子を持ってやってきた。

「土日は連続デートだったの?」

「うん! 楽しかった!」

「良かったねぇ。私は、水曜日から彼氏が来るの」

「え? それまでは来ないの?」

「そう。ほら、手術したから」

「あ、そうか。禁欲期間なのね」

「もう! そんなあからさまな表現はしないでよ」

「うふふ。顔が赤くなってるわよ」

「知らないわ!」

「でも、まだ新婚旅行まではお預けだよね?」

「うん、楽しみ。……って、こら! 何を言わせるのよ」

「正直で宜しい」


「私のことよりも、今日は結心さんの話を聞きたいのよ」

「聞きたい? うふふ。高いわよ」

「こら! 私の話はちゃんとしてるじゃない」

「土曜日の夜は、レストランで食事したのよ」

「うん、それは行くって聞いた」

「それから、久し振りに岡山空港へ行ったんよ、前に車止めたところ」

「思い出の場所ね」

「そう。恋人宣言したところ」


「私たち出会ってから2か月半くらいになるのよね」

「あっという間だったよねぇ」

「それでね、彼が『僕と付き合いだして、思ってた人間と違うとか、何か感覚的な変化はない?』って聞くのよ。

 私は『え? どういう意味? ちっとも変わらないけど』って答えたら、『良かった。僕も全く変わらない』って。

 私たちは出会ったときと印象は殆ど変わってないのよ。お互いに第一印象のままで変化なし」

「凄いよね、多分」

「多分そうよね。私たちは一瞬で恋に落ちたっぽいから、彼からすると確認期間が必要だと思ってたみたい」

「良い人だよねぇ、天野さんて」

「うん。私、そう思うだけで涙が出そうになる」

「分かるよ、その気持ち」


「それでね、ここからは、私たちが一歩前に踏み出すと、ある意味戻れない関係になってしまうじゃない」

「うんうん、そう思う。天野さんは、そのためにじれったいほど前に進もうとしなかったってことなのね?」

「そうなんだって。自分の心と私の心を見極めようとしてたのよね」

「真面目というか、本当に信頼できる人だよねぇ。私たちなんか、そんな時間なんか無視して、前に突き進んでいるわよ」

「本能のままか」

「こら! ……でも、そう言われるとそうかも」

「とても知識階級と呼ばれる人たちの行動とは思えないなぁ」

「ちょっとぉ! そこまで言う?」

「動物的でいいと思うわよ」

「私、落ち込みそう」

「だけど、詩織さんみたいな直感的に動くのも素敵よ」

「私たちは、緻密な設定の上で動いているのよ」

「それって、近藤先生の設定じゃないの?」

「あはは、そうだったわ」


「それでね、彼が言ったの『そろそろ、僕は結心さんともう少し深く付き合いたい。結心さんが望むレベルまででいいよ。結心さんの気持ちを最優先したい』」

「うわぁ! いよいよ踏み込んできたのね!」

「私は『最初から全てを天野さんにあげるつもりで恋人になりたいって言ったの。あげるというより貰って欲しいの』って」

「積極的な発言だねぇ。素敵! 結心さんの情熱が伝わってくるわ」

「情熱っていうような大したものじゃないけれど、私の本音だからね。駆け引きなんてしないもの。私は真っ直ぐ彼の胸に飛び込んでいきたい」

「あぁ、聞くだけで胸が震えるような感動を覚えるわよ」

「詩織さんが感動してどうするのよ」

「いいじゃない。私にも感動をください」

「あはは、そんな立派な会話じゃないよ」


「それで、どうなったの?」

「彼が私の目をじっと見詰めて言ったの『ありがとう』って一言だけ」

「……」

「私も彼を見つめ返して、それから目を(つむ)ったの」

「……」

「そしたら、強く抱き締められた。そして『愛してる。本当の恋人になりたい』って」

「素敵!」

「『私も愛してる。嬉しい!』って言った」

「え? それだけ? じらさないでよ」

「ここからは、有料版でございます」


「ちょっと! それはないでしょ!」

「だって、彼と私との二人だけの素敵な想い出なんだから大切にしたいの。ここからは想像に任せるよ」

「え~?! 想像したら止まらないよ!」

「何を考えているのよ! 私たちは、健全なお付き合いだからね」

「いや、そんなことはない! 絶対にキスをしたはずだわ」

「うふふ。でもね、天野さんが私を大切にしてくれてることが分かったでしょ?」

「うん、それは分かった」

「それに、私が今の交際方法に満足しているのも分かったでしょ?」

「それも分かった」

「じゃ、それでいいよね? 心配してくれてありがとう」


「旅行の話はどうなったの?」

 私も食い下がる。このままで終われるものか。

「ああ、そんなわけだから、旅行の話をするにはしたのだけど、もう少し先の話だろうから『その内』ってことになった」


 完全に、結心さんから煙に巻かれた感じで、私としては消化不良な結末だわ。少なくともキスはしたはず。あの流れだったら、絶対にそうなってるはずよ。でも、結心さんの心配をしなくていいということは分かったわ。それで今日のところは良しとしよう。



読んで頂きましてありがとうございます。


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