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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第八章 恋愛ってこれでいいの?
24/50

第74話 久し振りにのんびり

毎日1話 午前3時投稿

 土曜日の昼間。

 彼も来ないから久し振りに余裕のある土曜日。洗濯や衣類の片付けをしてから、スーパーへ買い物に出掛け、帰りに結心さんのお店に寄った。パンを買ってレジのところで結心さんにそっと聞いた。


「今日の夜はデート?」

「うん。食事に行くんだよ。うふふ」

「いいわねぇ」

「詩織さんは最近デートしてないの?」

「昨日、新幹線側道のレストランに行ったよ」

「じゃ、羨ましそうに言わないでよ」

 結心さんが、笑う。

「だって、今日と明日はデートないもの」

「もうすぐ旅行に行くんじゃろ? ええなぁ」

「行き先を神戸に変更したのよ。夜景が綺麗だろうからロマンティックかなと思って」

「私も、どこかへ旅行に行きたいな~。今夜、彼に言ってみよう」

「あら、突然飛躍するのね」

「飛躍でも跳躍でもいいのよ。詩織さんも行くのだからと強請(ねだ)ってみよう」

「あはは、私を引き合いに出さないでよ」

「今日は、悩殺スタイルで出かけるかなぁ」

 結心さんが笑いながら過激発言をした。結心さんの悩殺スタイルで落ちない男はいないと思うわ。

「上手くいったら、教えてね」

「おう!」


 家に帰ってから、いつものように作り置きの料理をした。最近は二人分の用意をするから食材も結構多くなっている。でも、料理をしていると楽しい。工夫をしたり、彼がどんな顔をして食べてくれるのかを想像しながら作るのはわくわくする。まさか、料理しながらこんな楽しみ方を味わえるとは考えてもいなかった。恋の副産物なのよね。恋の副産物と言ったら、違う想像をする人がいるかも知れないが、喜びも副産物よ。


 そう言えば、結心さんのことを考える余裕が無かったのよね。私は自分のことで一杯だったもの。彼とのことに夢中だった。だって、彼と急ピッチで愛が深まっていき、もうすぐ彼にヴァージンをあげちゃうのだもの。夢中にならない筈がないわよね。私は、今が幸せの絶頂なのかも知れない。

 結心さんは急激に恋に落ち、私に恋の素晴らしさを教えてくれた。だから、私も彼氏が欲しいと思って恋をする覚悟をしたの。私は彼氏との関係が順調に進んでいるけれども、結心さんと天野さんは意外なことに大して進んでいない。

 もちろん、二人の関係が進めばいいという単純なことではないと分かっている。それは二人が決めることなのだから。

 天野さんは案外真面目な人なのかも知れない。あるいは、結心さんを本当に愛しているからこそ、大切にしているのかも知れない。だって、行きつくところには、修羅場が待っているかも知れないのだものね。不倫となると悩みは尽きないのだ。


 結心さんの女心はどうなんだろう? 何も肉体関係を推奨しているわけじゃない。結心さんだって、それを待っているわけじゃないと思う。だから、焦ることはない。急ぐ必要なんて無い。でも、女心は『安心感』と言ったらいいのだろうか、そんなものを求めているのではないか? 結心さんは天野さんのことを信じているのは間違いないし、天野さんもそうなんだと思う。

 信じているのに、安心感が必要なのは矛盾するかも知れないけれども、それが心と頭の違いなんじゃないだろうか? 本能と理性の違いなのだろうか? 好きになったら、何だか知らないけれどもくっ付いていたいと感じてしまう。身体が、そう命令するのだ。これは、男も女も関係なくそうなんだと思う。兎に角、どこかに触っていたい。それはエッチな要求ではないの。本当に、単に触っているだけでいいのよね。


 男性が、デートで手を握ってくるのは、きっとそれなのではないだろうか? 肩を抱き寄せたりするのも、そうじゃないだろうか? 中には、エッチな気持ちがあるのかも知れないけれども、触れるというのは心が安らぐのだ。でも、それはさっき書いた『安心感』とは違うのだと思う。勿論、肉体関係などの深い関係になったら、それだけで『安心感』が得られるというわけでもないのは分かっている。

 結心さんが、「抱き締められただけで愛されていると感じた」と言っていたのは記憶に新しい。でも、その内その感激は薄らいでいくのではないだろうか? 多分、少しずつだが新しい刺激がないと、感激が薄らいでくるのではないだろうか? 私と結心さんとは恋の入り方が違うから何とも言えないが、私の経験で言うと最初の刺激は薄らいでいくのだと思う。勿論、感激や刺激だけが必要なのではない。要は心の安心なのだ。


 男と女の恋においては、性的な刺激はエッセンスとして必要なのだと思う。進展しない関係は、女からすると『女としての魅力が足りないのではないか?』と不安に思うものなのだ。愛されているのを疑っているわけではない。愛されているのを確かめたいわけでもない。信頼もしているのよね。それでも、『何か』で安心感が欲しいのよ。女って、そういう生き物なのだと思う。

 そうやって、日々、心の『安心感』を求めて少しずつでも深い関係に進んでいく。究極の関係に至ったら、そこから先には何が待っているのだろう。もし結婚しているならば、それが、きっと夫婦間のマンネリに至るのではないだろうか? 途中で子育てがあったり、色々な事件が勃発して泣いたり笑ったりして、気が付くと年寄りになっているのだ。そして、ああ人生ってこんなものなのねと思いながら死んでいく。


 あれ? 人生終わった? ちょっと待って、恋の安心感を考えていたのよね。どこで間違ったのかしら。……そう、恋には少しずつ刺激が必要なのよ。だから、結心さんの恋にも、少しずつの進展が必要なのだと言いたかったの。そうすると、幸せが持続する恋のSDGsだ。

 でも、私が天野さんに言うわけにはいかないわよねぇ。この感覚は二人の問題だもの。結心さんは、天野さんの次の動きを待っているのよ。ああ、じれったい。女心を知らない朴念仁(ぼくねんじん)め。


 結心さんのデートはどうなったかなぁ? いつも食事したあと、喫茶店でお茶を飲んで帰るだけなんだろうか? それだったら、進展するはずないわよねぇ。って、私は先輩面してそんなことを考えてる。確かに、私はマンションの自室に早くから彼を招待してしまったから、進むのが速かったと思う。

 結心さんは、そういう所が無いから普通はレストランか喫茶店しかないよねぇ。それと、空港の近くとかもあったけど。普通のカップルはそうするしかないのよね。だから、手を繋ぐくらいしかできないわね。

 私は、学校の関係者に目撃されたくないから、あっさりと目撃されにくい私の家でのデートにしてしまった。そういう意味では、結心さんより進展し易い環境になっていたのね。結心さんたちが二人きりになれるところはないのかしら? 結心さんの自宅に連れていったら、お母様が吃驚仰天(びっくりぎょうてん)してしまうから無理。

 世のカップルたちはどうしているのだろう? 私って、こういうところは本当に無知なのだ。レストランや喫茶店以外に思い付かない。私の経験では、ドライヴに行ったことくらいで、それ以外は全く想像すらできない。

 私は、仕事以外は殆ど目もくれずに暮してきた。だから、世間では常識であることに気が付かないことがあるかも知れないと謙虚な気持ちを持つように努力している。だからこそ、天野さんや結心さんのアドバイスは大切なのだ。



読んで頂きましてありがとうございます。


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