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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第八章 恋愛ってこれでいいの?
22/50

第72話 感じ方は個人差

毎日1話 午前3時投稿

 木曜日。

 彼とLINEで連絡を取り合っているが、手術の後の痛み等はないらしい。ネットには、少なくとも1週間は刺激のある生活は控えるべきだと書いてあった。我が家に来ると、どうしても刺激のあることをしてしまうだろうから、来週の水曜日までは電話だけで大人しくしてね、と約束した。学校で会えばいいかも知れないけれども、二人だけで会うのは不味い。


「だから、昼間の院生たちがいる時間帯に、堂々と来ればいいのよ。研究会で院生たちと仲良くなったのだから、ケーキでも買ってきたらいいのに」

「いや、用事がないのにそれはおかしい」

 やっぱり、私を口説くためのケーキだったのね。もう口説いたから餌は不要なんだろうか?


 夕方、LINE電話で彼と話をしているときに、ふと思いついて旅行の話になった。


「旅行の話なのだけど、神戸も良いよねぇ」と私が言うと、

「岡山から東は検討対象にしてなかったねぇ」と彼も忘れてたみたいな返事。

「神戸だったら、岡山から2時間も掛からないよね? 金曜日の夕方に岡山を車で出発すると、道路混んでるかなぁ?」

「夕方は混んでるだろうなぁ。18時にマンションを出発するとして、高速道路に乗るまでが時間掛かるかも知れない」

「ブルーハイウェイから?」

「バイパスまでが混んでると思う。バイパスに乗れば案外流れるだろうし、備前インターまでバイパスの信号はほとんどないかな」

「高速に乗ってから1時間ちょっとで神戸に行ける?」

「そうね、高速は備前インターからだとそんな感じかな。高速までが最低1時間は掛かるかな」

「それなら、金曜日にでも行ける?」

「スムーズに行けたとしても、早くて20時~20時半着。神戸市内の移動に30分」

「そうか、下手すると21時になるわね。やっぱり金曜日の夕方出発は無理だねぇ」


「じゃ、土曜日の出発はそのままで、行き先だけ神戸に変更しようよ。運転も少しは楽だし、夜景が綺麗でしょ?」

「それでいいよ。六甲山の上のホテルを予約できるといいけれど、だめでもポートにホテルがあるし」

「食事は、ホテルのレストランにすれば、景色もいいし楽よね」

「そうしよう」

「土曜日に出発して、昼過ぎに神戸の異人館付近で食事してから異人館を見物よね」

「そうだね。それから六甲山に上がろう。牧場は省略かな」

「翌日は、有馬温泉へ行く? それとも岡山に帰る?」

「どっちでもいいよ。有馬は、次回にしてもいいし」

「じゃ、2日目は元町とかを散策してから岡山へ帰ろうか?」

「そうしよう。……高知と大して変わらないね」

「あはは、ほんとだ。でも、神戸のほうがムードありそうだし」

「確かに」


 というわけで、高知への旅行は止めて神戸に変更した。だって、神戸は恋の街みたいなイメージあるもの。高知は、来年の記念日に行こう。


 彼が家まで車で送ってくれると言うけれど、そうしたら、上に上がってくることになるだろうから、1週間は来たらダメと言って納得して貰った。


 家に帰る途中で、結心さんからLINEが入った。バスの中だったけど、受信できた。便利なのね、スマホって。天野さんからの伝言があるので、今夜結心さんが食事してから来てくれるらしい。「いつもの時間くらいね」と返信しておいた。


 19時過ぎに結心さんがやってきて、いつものようにソファでコーヒーとお菓子。


「私のために、いつも来て貰って悪いわね」

「いいのよ。半分は遊びに来とるんじゃから。昨日デートしたので今日は暇なのよ」

「ありがとう」

「用件はね、この前の話を天野さんに相談してみたから」

「この前の話って?」

「ほら、凄く感じるのって不安みたいなこと」

「え? 言っちゃったの? 恥ずかしい! まぁ、貴方たちに隠すつもりはないのだけどね」

「うん。そう思ったから、私も恥ずかしいけど、聞いてみたんよ。私の参考になるかも知れないしなぁ。うふふ」


「結心さんは、まだそういう関係になってないの?」

「まだまだだよ。前と変わらない。私、女としての魅力がないんかなぁ?」

「凄く可愛いし、スタイルもいいし、良い子だし。ボインだもの、魅力はあり過ぎるほどだと思うよ」

「女性に言われてもなぁ……」

「天野さん、律儀な人だよねぇ。こんな魅力的な子に手を出さないなんて」

「ほんとに……、って、私の相談に来たんじゃないわよ」

「あ、そうか! では、よろしくご指導くださいませ」

「私が、ご指導させていただくわけじゃないけどな。聞いてきた話だから。あちこちで仕入れた耳学問だって言ってたよ」

「天野さん、やっぱり経験豊富な人なのね?」

「あはは、プライバシーに係わることは聞いておりません」

「ガード堅いね」


「まず、敏感かどうかは個人差が結構大きいらしいのね。声が出るのも個人差だって」

「声も個人差なのか」

「そもそも、初めての経験というのは、基本的にかなり敏感になるんだって」

「やっぱりそうよね。初めてのキスとそれ以降のキスでも、確かに感じ方は少し違うような気がしてた」

「なるほど、先輩、勉強になります」

「初めて胸に触られたときはビクッとしたけど、2回目以降はビクッとしなかったわね」

「そういうものなのねぇ」

「感じるのは同じかも知れないけれども、刺激が違うってことかなぁ」

 え? 私のほうが先輩になってしまったの?


「それと、最初は凄く濡れるんだって」

「どういうこと? 普通は緊張するでしょ?」

「経験者同士でも、初手合わせのときは似たようなものだって」

「初手合わせって……」

「だって、そう言ってたもん」

「それって、興奮の度合いが関係しているってこと?」

「え~? 私に聞かれな~。私は、その『興奮の度合』を知らんのじゃからな」

「私、少し知ってるかも……」

「そうなん?」

「同じ触られるのでも、こちらの気持ちがその気でないと、あまり感じないみたいな気がする……」

「ムード?」

「というか、こちらがその気いっぱいだと、身体が直ぐに反応してしまうような……」

「身体は正直なんじゃな」

「あはは、そういう纏め方は止めてくれる?」


「それでな、感じやすい人は少しの刺激でも凄く感じてしまうらしいし、声も出やすいタイプが多いんだって」

「それ、凄い具体的よねぇ。天野さんの経験かしら?」

「だから、そんなこと聞いとらんって。私だって、まだ経験ないんじゃから」

「あ、そうか。ごめん。……ごめんって何にごめん?」

「自分で突っ込むな。それと、何回でも絶頂感を得られる人もいれば、1回で暫くお休みのタイプもあるんだって」

「え~っ、そうなんだ。個人差が大きいのねぇ」


「そういうわけだから、最初のころは凄く感じるし、身体が求めているみたいに思ってしまうかも知れないけど、心配ないんだって」

「じゃ、私は淫乱なわけじゃなくて、普通なのね?」

「詩織さんの場合は、淫乱なのかも知れんよ」

「何よ! じゃ、相談になってないじゃないの」

「あはは。……それと、男も同じようなものなんだって」

「男も感じやすくなるの?」

「それは知らんけど、興奮し易いってことなんじゃない?」

「ああそうか、興奮の度合いで感じ方が違うのかな」

「女は感じ易くなって、男は興奮するってことじゃない?」

「あれ? 男は興奮だけなのか?」

「知らんわ。――というわけで、天野教室の報告でした」


 なんだか妖しい会話だったなぁ。でもまあ、女の子だって、これくらいは平気でお話するものね。あ、()()()じゃなかったわ、私たち。



読んで頂きましてありがとうございます。


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