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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第八章 恋愛ってこれでいいの?
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第71話 彼の手術

毎日1話 午前3時投稿

 水曜日の午後。

 彼からLINEで手術が無事終わって大学に戻ってくると連絡があった。麻酔も覚めたけれども痛くもなんともないのだそう。良かった。お疲れ様。流石に、今日は真っ直ぐ家に帰るのかと思ったら、ちょっとだけでも顔を見たいと言う。結局、いつものように待ち合わせて私の家まで送ってくれて、上がってきた。大丈夫なのかなぁ? 今日は、刺激的なことはしないほうがいいと思うのだけど……。


 車から降りた私は、先に家へ帰ると急いで服を着替えた。今日も、私のところでご飯を食べるとのことで、作り置きの料理を温めたりして用意を始めた。遅れて上がってきた彼は、歩く様子も普段と変わらない。そんなに簡単な手術なのかしら? 兎に角、元気そうで良かった。安心した。


「流石に、今日はお風呂とか入らないのよねぇ?」

「そうだね。傷口が塞がるまでは大人しくしていないと」

「当然よね。今日は、大人しく帰ってね」

「抱きしめたりするのは、関係ないから大丈夫」

「あはは、それじゃ、いつもと変わらないじゃない」

「まあ、ちょっとだけにするよ」


「痛くないのが不思議ね」

「そんなにたくさんは切ってないのと違うかなぁ?」

「手術中は音が聞こえているの?」

「局部麻酔だから、完全に音やら声やらが聞こえてくる」

「『あ、失敗した』って声は聞こえなかった?」

「流石に、それはなかったけど、『あっ』とかの声が聞こえたときは、不安になった」

「なんだったの?」

「誰も説明してくれなかったから、未だに不明」

「あはは、知らないほうがいいんだろうね、きっと」

「そうだろうなぁ」


「今日は、旅行のことを相談しようね」

 私は話題を変えた。こういうときにしないと、抱き締められたら話ができないもの。

「金曜日の午後と言っても、二人が揃って早退するわけにいかないよねぇ」

 彼も、具体的に色々と考えてくれてたようだ。

「月曜日が休みで土日月と3連休になる3週間後の土曜日に朝から車で出発というのはどうだろう?」

「あっ! それがいいわね! 金曜日からだと夕方出発では神戸くらいしか行けないものね」

「そう。……電車よりも車のほうが誰にも会い難いし、移動も便利」

「でも、あまり遠くだと、貴方が運転で疲れない?」

「3時間程度なら何ともないと思う」

「一人で運転するのだから、大丈夫かなぁ」

「高速道路を使うから、大したことないよ」


「そうすると、どちらにしても、高知・松山・松江辺りかなぁ?」

 ぱっと浮かぶ候補地は、そんなところよね。車で簡単に行ける観光地って、岡山からだと大して多くない。

「全部、城下町。松山は温泉地だし、松江も近くに温泉あるよね。松江は、高速降りてから結構走るかな?」

 彼は、全部行ったことあるみたいだから、ちょっと詳しいみたい。

「温泉地でなくてもいい。高知なら全部高速道路で行けるから楽じゃない? 車で3時間以内?」

 私は、運転する彼が楽なほうを選んで、高知を勧めた。

「どこでも同じよ。高速使うから」

 彼は、このくらいの差ならどこでもいいみたい。


「高知城とはりまや橋を見て、翌日は桂浜に行ったりオルゴールの館とかを観光して、そのまま夜はこのマンションに帰る?」

「それじゃぁ1泊になるよ」

「ここで一日のんびりしてもいいじゃない? 新婚旅行から帰って新居での初めての夜もいいことない?」

「それもいいね。旅行の疲れもとれるしね」

「うん。私は、二人で一緒に居られたら、それでいい」

「じゃ、そうしよう」

「ホテルの予約は私がしようか? ここなら住所はちゃんと書いても大丈夫だし」

「ホテルの費用とか食事代も全て僕が払うからね」

「ありがとう。旅館よりもホテルにして、外食を楽しむほうがいいわよね? 鰹のたたきが食べられるかな?」

「そうだね。有名な高知の料理だもの、それにしよう」

「じゃ、その辺は私が調べておこうか?」

「そうして貰えると助かるよ」

「旅行、楽しみだわ」


「……手術後の検査とかは、もうその頃には済むのよね?」

「うん、2週間ほどして検査がある。それで、大抵は完了するらしい」

「じゃ、十分よね。……麻酔とれた今も痛くないの?」

「ああ、全く気にならない。手術したのを忘れるくらい」

「そうか。女性より楽なのだろうね。知らないけど」

「僕もよく知らないけど、きっとそうなんだろうな」


「コーヒーは飲んでもいいの? 今日は刺激性の飲食物は避けたほうがいいと思うけど」

「そうするよ。暖かい日本茶にしよう」

「は~い。あっちのソファに座る?」

「うん」

「じゃ、あっちに座っといてね。すぐにお茶もっていくから。少しだけ洗い物していい?」

「ここで待ってるよ」


 お茶を淹れてから、ソファに移動した。私は彼の隣に座って軽くチュッとしただけで、また話を始めた。ここは、私が理性をもって対応しないと彼はきっと興奮してしまうに違いない。私だって、強く抱きしめられてキスをされたら抗うことはできなくなると思う。かといって、彼の向かい側に座るのはつまらない。傍に座って、いちゃいちゃしたい。――だから、話を続けるのよ。


「ねぇ、土曜日はスーツを着てくるのよね?」

「あはは、そうなる予定だけど、今回はブレザーにするかな」

「だから、ここに、着替えとかを置いておかない?」

「それ、いい考えだな。そうしようか」

「スーツは、ここに置いていけばいいよね。帰る時に、またスーツに着替えたらいい」

「靴も革靴ではなくて、遊び用の靴がいいけど、それは、車のトランクに置いてもいいか」

「靴もここで履き替えたらいいよ」

「革靴をトランクに入れたままで旅行は様にならないものなぁ」

「ここで、ごろりとしたりできる服も置いてたら?」

「ここに来たら着替える服だよね」

「歯ブラシなんかは、私が用意しておくけど、下着は用意しないわよ」

「あはは、それは要らない」

「まあ、3週間もあるから、ゆっくり準備できるわよね」


「とりあえず、ここで着る普段着を持ってきておこうかな」

「それは、まだ早いんじゃない?」

「え、なんで?」

「だって、今から服を着替えてたら、旅行まで我慢できなくなったりしない?」

「あ、そうか。確かにそうかもなぁ」

「やっぱり、自信ないのね? 約束したんだからね。守ってくれないと」

「なんだか、試されてるみたいだなぁ」

「試してないけど、自信無いのは貴方でしょ?」

「面目ない」

「今までだって、許可なくちょっとずつあちこち触ってきたじゃない」

「だって、それは、……言い訳できないか」

「結果としては、怒ってないわよ」

「ありがとう」


「ちょっとだけなら、キスしたり触ってもいい?」

「うん、ちょっとだけにしようね」


 今日は、ソファの上で横にならないで、軽いキスをしながら胸を少しだけ触って、そしてぎゅぅっと抱き締めてくれた。感じなくても、私はこれで幸せなのよ。

 彼は、心残りな顔をしていたけれども、流石に手術したばかりでは不味いと分かっていたから、大人しく帰っていった。

 少なくとも、今週いっぱいは、我慢して貰おう。私だって我慢するんだもの。



読んで頂きましてありがとうございます。


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