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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第七章 初めてのキス
17/50

第67話 久々に結心さん来宅

毎日1話 午前3時投稿

 日曜日の午後2時。久々に結心さんがお菓子を抱えてやってきた。


「ヤッホー! Hな詩織さん、ご機嫌いかが?」

「もう! 変な言い方しないでよ!」

「うふふ。……いっぱい懺悔(ざんげ)するんだよ」

 結心さんは、にやにやしながら私のほっぺたを突く。

「どうしようかなぁ……」

 私は、コーヒーを淹れながら結心さんから目を逸らす。


「喋りたいでしょ? いっぱい初体験したんだから、言わないと口が歪むわよ」

「そっちこそ、何も言わないんだから、舌が抜けるわよ」

「ありゃ? 私より激しい罰を返してくるんじゃなぁ」

「当然よ!」

「ねぇねぇ! あれからどうなったん? ……随分聞いてないから、どこまで聞いたか忘れてしまったわ」

「忘れていいよ」

「嫌じゃ! 忘れとうないわ! 誓約書を貰ったのよな?」


「うん。しっかり私の希望が書いてあったから、付き合うっていったのが先週の木曜日」

「それから、毎日デート?」

「うん、今日が初めてデートしなかった日」

「くぅ~! え~と、9日間の連続デートか。……いや、交際開始後10日間会ってたのか!」

「そうなるわよね」

「そりゃ、関係が進むの速いはずだわ」

「私も、そう思うわよ」


「で、最初のデートはレストラン?」

「そう、倉敷へ行く途中にある山の上のステーキハウス」

「あぁ、知ってるわ。行ったことないけど。今度彼とデートに行こう」

「美味しかったよ」

「それで、土曜日は?」

「デートの約束はしなかったけど、午後に電話が掛かってきてドライヴして日生で握り寿司」

「おぅ! ええなぁ!」

「それで、帰りに家へ入れてしまったの」

「あ! ここまでは聞いたわ!」

「そうでしょ? 結心さんに報告したような気がしたわ。私たち、もうボケたのかしらん?」

「色ボケじゃな」

 結心さんが笑う。

「もう! そんなんじゃないわよ!」


 結心さんが続きを促す。

「日曜日は鷲羽山へドライヴ。山頂からの瀬戸内海の景色は綺麗だったよ」

「うんうん、二人なら、何を見ても綺麗に見える」

 結心さんが茶化す。

「それで、帰りの車の中で」

「キスしたん?」

 結心さんが責付(せっつ)く。

「違うわよ。するなら安全な家でするわ」

「うわっ! 仰るとおりでございます」


「車の中で、色々と微妙な話をしたの。結婚は面倒だとか、男に(すが)って生きるのは嫌だとか」

「デート中の会話には聞こえないなぁ」

「そうそう、私たちそういう雰囲気にならないのよ」

 私は苦笑いをした。

「それでね、不倫がバレたときは私に被害が及ばないように責任持って処理してねって」

「怖い女じゃな」

「だって、彼から交際を求めてきたんだからね」

「確かに」

「だから、もし子供ができたら困るよね、という話になったの」

「まだ抱き締められてもいないのに?」

「話の流れでね」

「シリアスだねぇ」


「彼は、私と結婚したいと言ってるのよ」

「結婚せんと言ったんじゃろ?」

「それは分かった上で、離婚して結婚したいというのが本音なんだって」

「本音ねぇ」

「離婚するのは勝手だけど、私は結婚しないし、奥様を不幸にはしたくないって言ったの」

「うん。それは私も同じ思い」

「でね、結婚したいからって私を騙して妊娠させたりしない? って聞いたの」

「あはは、きつぅ」

「そしたら『避妊手術を受けて証明書を私に見せる』って」


「なるほど、そういう経緯があったのか」

「『私の責任にしないでね』と言ったら、『自分としてもそれがいいと思う』って」

「天野さんも、確実な方法は、男が避妊手術を受けることだと言ってたわよ」

「結心さんたちも、そういう話になったの?」

「いや、前に詩織さんが彼に私をそんな目に合わすなって責めたことあったでしょ?」

「ああ、あのときはごめんなさい」

「いや、いいのよ。彼が、その帰りに『着実な方法は手術すればいい』と言ってた」


「男の人は、そういう風に考えるものなのかしらね?」

「良くは分からないけど、女性が手術するよりもいいと思ってくれるんじゃないかな?」

「男の優しさ?」

「そう」

「今度の水曜日に手術するんだって」

「わぁ! 彼って、どんどん攻めてくるタイプなのねぇ」

「そうなのよ。まあ、もう嫌じゃないけどね」

 と言って、私は笑った。


「月曜日、夕方家に来てお茶を飲んだ。下手に喫茶店とかへ行くより、家のほうが安心だしね」

「それはそうだけど、誰もいない二人だけの密室空間だから、どんどん進むだろうなぁ」

「そうなのよ。彼が帰る時に、突然、私を抱き締めたの。驚いたけど、嬉しかった」

「よかったわね。私も抱き締められた時、凄く嬉しかった」

「嬉しかったけど、案外冷静だった。そのときは、まだ、好きになりつつあるときだったから」

「ああ、そうか……私は急激に好きになってしまったからなぁ……」

 結心さんは、抱き締められたときのことを思い出したのか、少し頬を染めていた。


「火曜日は、買い物をして結心さんのお店に寄ったでしょ? 彼がくるからご飯を作るって」

「ああ、そうだったね。大きな買い物袋下げてたわね、昨日もそうだったけど」

「水曜日は、交際1週間目記念ということで、中華料理のお店に行った。帰りは私の家でお茶を飲んで帰った」

「まだ、キスしてないの?」

「木曜日もおうちデートでご飯食べたけど、抱き締めるだけよ。話は色々進展したけどね」

「え? 話が進展って、なぁに?」

「う~ん、『私は何もかも貴方が初めてなのよ』って話から、処女だって言った」

「そりゃ、初めてなら処女に決まってる」


「そしたら、彼が『処女って、男にとっては嬉しい。征服欲を満たしてくれるんだ』って」

「まぁ、征服欲かどうかは分からないけど、女にとっては好きな人と一生に一度しかできないことだものねぇ」

 結心さんが遠くを見詰めるような目をした。

「結心さんは、もう彼にあげたの?」

「さぁ? ……まだかもよ」

 結心さんが笑う。

「え~? 貴方たち、もうすぐにでもそうなりそうだったのに!」

「私たちには、詩織さんみたいな秘密の部屋がないもんね」

「こりゃ、ここは秘密の部屋じゃないでしょ?」

「ま、私たちは、プラトニックでも幸せなの。愛で結ばれてるからね」

「え? 私は何なの?」

「詩織さんは身体じゃろ?」

「違うわ! ……そうかも……」

「あはは!」

 二人でお腹を抱えて笑った。


「金曜日、いつものように彼の車で帰ってきて、私が先に上がるのよね」

「彼は車を置かないといけないものね」

「それで、彼が遅れて部屋に入ってきたら、突然私を抱き締めてきたの」

「おお! 情熱的! アモーレ!」

「暫くして、彼がキスしたいって言ったの」

「待ちに待ったキスのお時間がきたのね?」

「これ! 待ちに待ったって」

「違った?」

「……もう私もその気になってたかも」


「それで?」

「少し間を開けてから、頷いたらキスされた」

「どうだった?」

「流石にどきどきしたわよ。それで、頭の中が真っ白になったのかも。身体の力が抜けてしまって、彼にしがみついてた」

「うんうん、分かる分かる」

「何だか、とっても幸せな気持ちになって、ずっとこうしていたいと思ったよ」

「そうじゃろ、そうじゃろ。()いやつじゃ」

「ソファに座ったけど、もう彼の傍に座ってくっついていたかった。結心さんの気持ちが分かった」

「うんうん、そうなるじゃろ?」

「なんかねぇ、幸せって、このことなんだと思った」

「そうそう、もう何にも要らんじゃろ?」

「彼の手とか触りまくってた」

「あはは、欲張り女め」



読んで頂きましてありがとうございます。


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