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恋なんて知らなかった 【後編】 R15  作者: 湯川 柴葉
第七章 初めてのキス
16/50

第66話 夕方、彼が来た

毎日1話 午前3時投稿

 土曜日の昼下がり。スーパーから帰る途中で結心さんのお店へパンを買いに寄った。


「最近、忙しそうじゃなぁ」

 結心さんが笑いながら声を掛けてきた。

「そうなんよ。この前ここに来てからずっと毎日デート」

「1週間以上連続しとるが」

「そうなの。この買い物の量を見たらわかるでしょ? 冷蔵庫が空っぽになった」

「まあ、今が一番楽しいときじゃからなぁ」

 結心さんが年寄りみたいな事を言う。私は笑いながら声を潜めて「昨日キスした」と言った。


「えぇっ~! ほんまなん?」

 結心さんが吃驚(びっくり)して聞き返す。

「明日はゆっくりする予定だから、昼間、遊びに来る?」

「そうじゃな。昼間がええかも。2時過ぎに行こうか?」

「うん。今日はこれから、色々と料理の作り置きを作ろうと思ってる」

主婦(・・)は大変じゃなぁ」

「もう! いつもしていることなの。……じゃ、明日ね」


 マンションに戻って、色々な料理の作り置きをした。最近は二人分つくるから量が多い。でも、彼に食べて貰うのだと思うと、ちょっと嬉しい。料理の合間に洗濯物を取り込んで畳んだり、溜まった家事をテキパキとこなした。明日は、結心さんが来るので、のんびりと女子トークをするのだ。


 夕方。彼から電話があった。

「こんばんは、かな? 今、電話大丈夫?」

「大丈夫よ。ちょうど今、家事が終わって、コーヒーでも飲もうかと思ってたところ」

「僕も、コーヒー飲みたい」

「これから来る?」

「うん。もうマンションに着いたから上がっていい?」

「え? じゃ、鍵を開けとくから入ってきてね。コーヒー淹れておくわ」

「うん。ありがとう!」


 ちょうどコーヒーを淹れたところに、彼が入ってきた。鍵の閉まる音も聞こえた。

 昨日のように、彼は入るなり私を抱き締めて、そして優しくキスをした。もうお互いに舌を絡ませてキスをする。ディープキスというのだそうだ。

「……う~ん、コーヒーが覚めてしまうから、先に座って頂戴な」

「そうだね、ありがとうね」

「私も、一段落ついたから、貴方がどうしてるかなぁと思ってたところ」

「学校に出て仕事をしてた。それで終わったあと、勝手にこっちに向かってしまった」

「1週間以上毎日逢ってたら、もう会わないと変なのよね」

「良かった、無理矢理押し掛けたことにならないで」

「来てくれて嬉しかった。ありがとう」

 手を握ったまま、空いた手でコーヒーを飲んで二人で笑った。そしてまたキスをした。もうキスが当たり前になってしまってる。


 キスをすると、次に進むのが速くなる。

 それも、唇を合わせるだけじゃなくて、感じるようなキスをすると当然のように彼の手が次々と動くようになった。

 初めてキスをしたとき、どさくさに紛れて胸に手を置かれたのだけれど、その時は手が動かなかったから、黙っていた。


 でも、激しいキスを覚えてしまったら、私も積極的に舌を絡ませて官能的なキスになってしまう。そうすると、彼はもう我慢ができないのか、手を胸に置くだけではなく胸の膨らみを味わうように動かしてくる。私も、キスに夢中なので手の動きが少々あったくらいで、もう驚くことはない。まだ服の上からだから慌てることはない、という程度の余裕ができてきた。そもそも、軽く乳房を揉まれていると、なんとなく気持ちいい。胸に触られるというのは恥ずかしいけれども、気持ちいいし、少し感じてくるみたい。


 ときどき、ブラの上からでも指が膨らみの先端に触ることがあって、ビクッとするけれどもそれも気持ちいい刺激だ。それくらいの余裕が持てるようになってきているのに驚く。そして、激しいキスをしながら、胸を優しく撫でられていると段々に身体の奥から熱を帯びた何かが突き上げるように湧き上がってくる。よく分からないけれども、身体が疼いて無意識に脚を擦り合わせるような仕草をしてしまった。


 そして、動悸が激しくなって吐息が漏れる。身体は彼にしがみつく。舌と舌が絡み合って、胸を揉まれて、息も絶え絶えになる。何だか、大きな声で叫びたいような衝動に駆られる。もう無我夢中になって、何がどうなっているのか分からなくなった。私はキスをしながら彼を抱き締めていた。それ以外は何もできない。女は受け身で快楽を覚えるのだ。


 彼が私の耳やうなじにキスをしてくる。こそばゆいけれども、身体が火照ってくる。彼の手が胸を何度か揉みながら往復する度に、私の口からは吐息が漏れてしまう。身体の奥から快感が溢れてくる。息が(せわ)しなくなってきて心臓がどくどくと音を立てている。何も考えられない。今、何処にいるのかさえ分からなくなってしまった。


 服の上からの筈なのに、彼の手が私の肌に直接触っているような錯覚を覚えていた。あぁ、もう私は彼の腕の中で裸になっているのかも知れない。「もうどうにでもしていいわ。貴方の思うようにして。私は貴方のものよ」と心の中で呟いていた。すると、彼の手が私の胸の膨らみに絡みついたように覆ったあと、ゆっくりと膨らみの先端を軽く押しながら揺すった。突然、身体に、電流のようなものが駆け抜けて、思わず声が出てしまった。


 ……快感の余韻に包まれたまま、私は、ぼ~っとしていた。激しい動悸と息遣いのまま、彼に夢中でしがみついていた。頭の中が混乱している。無我夢中で彼の愛撫に身を委ねていたのだということは、ぼんやりした頭の中で分かったような気がした。

 彼は優しくキスをしながら、胸を撫でている。私には、もうそれに抵抗する力は残っていなかった。――胸も触っていいわ。


「------ねぇ、------ちょっと待って。------私、どうなってしまったの?」

「……凄く感じてた」

「よく分からないけど、何か声が出てしまった」

「軽くイッたのかも……。詩織さん感じやすいのよね。凄く嬉しい」

「え? ……恥ずかしい」


 私は、彼の胸に顔を(うず)めて、まだ治まらない動悸を鎮めようとしていた。こんなことになってしまうなんて恥ずかしい。セックスしなくても、こんなに感じてしまうなんて、まるで私が淫乱女みたいじゃない? 変に思われなかったかしら?

 キスしながら服の上から胸を触られただけでこんなに感じるのなら、この先はどんな快感が待っているのだろう? もう、このまま一気に突き進んでも構わないような気持になってしまった。こんな快楽を知らないまま過ごしてきて、ちょっと悔しい。


 また、抱き締められてキスをした。彼は、もう堂々と私の胸を触っている。私も抵抗しないで、彼の愛撫を受け入れている。だって、気持ちいいのだもの。感じるし。


 もう、私は感じる悦びを知ってしまった。ほんの数日で、どんどん快感を知っていく。彼にキスされたり愛撫されたりすることで、新しい快感が増えてくる。そんな性的興奮を抑えることができなくなってきた。まだまだ深い快感があるのだと、身体が求めているような気持になってきた。


「ねぇ、私、服を着たままで、こんなに感じるなんて思いもしなかったわ。これ以上はどうなるの?」

「詩織さんは感じやすい身体なんだと思うよ。男にとっては、凄く楽しみの多いタイプ」

「それって、私がイヤらしいってこと?」

「そういう意味ではないけど、……ある意味、世に言う名器のようなものかもね」

「え~? それって誉め言葉なの?」

「もちろん! それに巡り合えるのは、男として幸運としか言いようがない」

「じゃ、良かったね」

 私は思わず笑った。



読んで頂きましてありがとうございます。


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