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9.帰還

10話目です。

 かすかな振動を感じた。

 朝食を終え二人はまたのんびりと、何をするでもなく過ごしていた。

 あたりを見回す。

 かすかに、東の梢の先に上昇していくロケットが見える。

 かなり遠い。


「お姉ちゃん?どうしたの」

 メイアが、怪訝げな表情できく。

「あの…ロケット…」

 何だか見覚えがある。

 ごく最近見たような気がする。

 でも何処でだったかな?


「あん、ツリーのこと」

「ツリー?」

 無邪気に答えるメイアに聞き返す。

 ツリーと呼ばれたその物体は斜めに虚空に向け上昇していく。

 記憶の片隅にある絵と比べると心持ち小さい様な気がする。


「うん。あれねえ、おっきな木の種まきするんだって」

 メイアはこくこく頷きながら話続ける。

「この辺には生えてないから近くで見たこと無いんだけど、すっご大きいんだってさぁ」

 その言葉を聞きながら視線はツリーの打ち上げられた方向に釘付けになっていた。

 何かが空を舞っている。

 最初、鳥かと思ったけれど、この星に鳥はおろか動物は居ないんだって事を思い出すと何故かとても気になった。

 どうしてこんなに気になるのか全く分からないのだけれど。


「ねぇ!きいてんの?」

 メイアが怒ったように言う。

「え、ああごめんなさい」

 あわてて振りかえる。

 なぜかメイアの機嫌をそこねられちゃいけない気がして。

 その時、微かに爆発音がした。

 ツリーの飛んで行った方向から。

「ね、今のが種をばら蒔いた音」

 メイアが爆発音のした方をむいて言う。その声を妙に遠くに聞いていた。



 瞬間、大地が、大気が、世界が揺れた。



 ねじ曲がり、回転する世界に激しい目眩を覚え、翻弄され、見当識けんとうしきを失う。

 自分が何処に居るのか、何をして居るのか、一切が混沌の中に放り出される。


 恐怖が、狼狽が、混乱が世界を襲う。

 彼女自身ではなく、他の誰かの恐怖が、別の誰かを狼狽させ、混乱させる。

 その混乱と狼狽が頂点に達し、世界は崩壊すし、すみやかに再編される。


 なにか見えない壁が取り払われたような減圧感。

 解放されて初めて其までの圧迫感に気付く。

 五感が一新され、これまで見えてなかった事が、聞こえていなかった事が、感じられていなかった事が一気に露になる。

 そんな感じに精神がクリアになる。

 意識をずっと覆っていた霧が霧散する。

 何故自分が此処に居るのか、何があったのか、全てが明瞭になる。





 ロケットを自動追尾していた着陸船のカメラ映像に小型ヘリの姿が入るとほぼ同時にロケットは内部から膨らむように破裂した。

 わずかに遅れて誰かのマイクが拾ったノイズだらけの爆発音がイリアに届く。

 スクリーン上の光点が一斉に消失する。

 距離感が稀薄な超望遠映像の中では爆発前のロケットとヘリの距離は見て取れず、大量の噴煙と爆発の煙で状況の判別は困難になっていた。


 同時にイリアの視界の隅で赤い斑点が明滅する。

 朝方暫くタチアナがうろうろとしていた辺り。

「アルバート、状況報告!」

 指示を出しながらコンソールを叩き、調査艇の外部カメラの映像を呼び出す。

『ロケットが…た。…のヘリが…墜落…』

 突然通信状況が悪化する。

 レナーの乗る調査艇からの映像もノイズが酷く、何が写ってるのか見当もつかない。


「タチアナ!救援に向かって」

 爆発地点からもっとも離れているーそれ故もっとも生存確率の高いタチアナへ聞こえているかどうか分からない指示をとばし、計器類のチェックを行う。

 地磁気の乱れと放射線量の増大に一瞬、核爆発を疑う。

 だが依然として爆発地点を映している着陸船の船外カメラからの映像には特徴的なキノコ雲の姿は無かった。


 軌道上の母船との通信も断絶していたこの時、イリアには知る由もなかったが、フローラの大気圏、電離層、ヴァンアレン帯は崩壊しかけていた。

 主恒星セパ・アルテアからの電子線が大地を直撃し、破滅的な電磁嵐を引き起こしていた。

 メディカルルームの起動をAIに命じると、イリアは先刻の視界の外れでの動きに注意を向ける。

 此の状況ではイリアに出来ることはほとんど無い。

 現場に任せるしかない。

 スクリーンの中心から少し左上の辺り、そこで確かに小さな赤い斑点が現れていた。

「…何で」

 赤い斑点の中心で涼子の救難信号を受信したことを示すアイコンが点滅していた。




 ほとんど同時にアルバートも救難信号の受信に気付いた。

「おい、イリア…」

 思わず口を開くが、着陸船との通信はノイズの嵐で意思の疎通が図れる状態ではなかった。

 二十分前に受信されていた最新の救難信号を確認する。

 今の今までそんなもの受信されていなかった筈なのに。


 本来なら調査艇を向かわせるべきだが、タチアナは勿論レナーにしても墜落したヘリの救援に向かうので手一杯で救難信号の受信状況を確認する余裕はないだろう。

 どちらかに引き返して涼子の捜索を続けるように指示を伝えるのも困難な電波状況である事もアルバートの判断を後押しした。


 救援活動はレナーに任せられるだろう。

 この電子ノイズの嵐が収まるのを待っている間にまた救難信号を見失う可能性もあった。

 そう判断するとアルバートはヘリを救難信号の発信地点に向けて加速した。

 一瞬前まで途切れなく続く鬱蒼とした森林だけが広がっていたはず。


 それが、目の前に突然ぽっかりと空き地が出現した。

 この辺りは何度も捜索したはずで、見落としていた訳ではない、確かに先程までは存在していなかった空間には青々とした草原くさはらが広がり、その中に人影が見えた。


「見つけた!」

 アルバートが吠える。

 放っておけばものの数秒で飛び抜けてしまいそうな草原くさはらに降下する為、4つのローターをマニュアルでコントロールして機体を旋回(まわ)す。

 手荒な操縦に一旦暴れかけた機体が勝手に安定を取り戻す間に発信器を射出する。

 涼子の救難信号と違い、最低でも四十八時間は連続的に信号を発信しナビゲーションシステムとも連動するタイプだ。

 それから繋がらないことを覚悟しながらイリアへの報告を口にする。

「涼子を見つけた。エリアB2。念のためマーカーを落としておく」

 小さな落下傘が開き、発信器が地上へゆっくりと降下していく。

 それを地上から見上げる人影は一つではなかった。




「え、何?」

 急に聞こえた激しい爆音にメイアが驚きの声をあげる。

 そしてほぼ同時に草むらの中ー昨日脱ぎ捨てたまま忘れていた作業服つなぎからスピーカーが割れそうな怒声が飛び出した。


『見つ…ぞ!』

 アルバートの声。

 じゃあ…

 振り仰ぐと頭上を旋回する小型ヘリを視界に捉える。


『涼子を…た。エリ……念のため…』

 再び無線機がノイズだらけの叫び声を吐き出す。

 ヘリから何か小さな物体が吐き出される。

 それは小さな落下傘を引いてゆっくりと降下してくる。


「休暇は終わりか…」

 ちょっと名残惜しそうに呟くと、メイアを見てうっすらと嗤う。もうにへら~って笑えない事が少し寂しい。

「ー帰っちゃうの?」

 メイアが不安そうな表情で訊いてくる。

「まあね、みんな心配してるし、お迎えも来たしねーもしよかったら一緒に来る?」


「うん!」

 寂しげな表情に思わず言ってしまった。

 いいよね、連れて行っても。

 というか置いていくなんて選択肢有りはしない。

 証拠だし。


 やがて、小型ヘリは高度を下げ、鮮やかに着陸する。

 髪が風になぶられ、うなじのあたりで渦巻く。

 顔をそむけたメイアの長い髪がもつれながら波打つ。


「心配したんだぞ、分かってんのか」

 ヘルメットのスピーカーから聞こえる声は少しつっけんどん、本当に心配をかけたみたい。

「分かってます、ごめんなさい。ーでも、ほらちゃんと確実な証拠見つけたし」

 そもそもの騒ぎの発端を忘れてはいない。


「この子がそうか?」

 メイアを指さして聞いてくる。すると何故かメイアは慌てた様に後ろに隠れた。

「うーん、そうなんだけどさ。アルバート悪いけどヘルメット取ってくれない?」

「?」

「ーこの子、怖がってるみたいだから」

「…OK、けどヘルメットだけだぞ」

 少し逡巡しゅんじゅんするとヘルメットに手をかける。

 ヘルメットだけってどういうーアルバートの科白に疑問を感じ、ふと自分の格好を思い出すと真っ赤になった。


「あ、これはその」

 アンダーシャツとストレッチパンツだけの姿を隠すように慌ててメイアを前に押し出す。

「い、いい、アルバートおじちゃんよ。見た目はちょと怖いかもしれないけど、あたしのお友達なの。なかよくしてね」

 灰青色の瞳がアルバートの黒い瞳をみつめる。怖がってはいないみたい。

「ほれ、ごあいさつ」

「…えと…こんにちは、えーアルバートおじちゃん…?」



 エンジンの回転音が高まり、ローターのたてる騒音が一段と激しさを増す。

 メイアを膝の間に抱える様にして狭いシートに座ると、細い胴に廻した腕に力をこめる。

 作業服つなぎはシートの後ろに丸めて突っ込んである。

 慌てて着ようとしたんだけど、夜露に濡れてビショビショだったから。


 小型ヘリが地面を離れる。

 一瞬よろめきかけた機体を、アルバートが素早く補正コントロールして水平を保つ。

 メイアが口を半開きにして空の一点を凝視している。

 瞳の奥に恐怖の色が浮かびかけている。

 片腕を伸ばして堅く握った手に触れる。振り向いた灰青色の瞳に、にっこりと笑って見せる。この騒音じゃ何を言っても聞こえないから。

 なんとか、ぎこちない笑みを浮かべて見せてくれる。


 すでに崖は眼下に小さくなっている。

 小型ヘリは緑の森の上空を、かなりの速度で飛んでいく。

 風が頬をなぶり、髪を掻き混ぜる。

 上空の風は素足に少し肌寒い。


 皆とはぐれてから、色んな事を綺麗に忘れてしまっていた。

 無線やロケット、それにこの星に来た理由や方法さえ。

 それがツリーの爆発と共に破れた。

 もしツリーの爆発が無ければ、それに伴う狼狽と混乱が無ければあのまま全てを忘れてメイアと暮らして居たのかもしれない。

 二度と皆の元に帰ることは無かったろう。

 そう考えると少しばかり、残念な気もしていた。



 ヘリは着陸船の上部後方ににふわりと舞い降りた。

 急いでいてもアルバートの操縦はスムーズで無駄がない。

 脚が着陸船にぶつかったショックもほとんど感じないほど。

 エンジンを止め、回転翼ローターが回転を落としその軌跡が目で追える程になってから、アルバートは小型ヘリから降りると前方左に張り出した膨らみへ向かっていく。

 少し離れた隣には同じくらいの大きさの窪みが口を開けている。

 メイアを連れてそのあとに続く。


 膨らみの正体は着陸船に張り付いた状態の調査艇。

 その上半分が着陸船の表面から飛び出した状態で格納されている。

 もう一台はまだ戻っていないらしい。

 ヘリよりも遅いなんて、そんなに遠くまで行っているのだろうか。


 その張り出しの一番後ろの端にこじんまりとした扉が付いている。

 アルバートがその小さな非常用のエアロックを開いて二人を中に入れて閉じる。

 気密服を着ていれば外気を抜いてから船内の空気を入れれば済むんだけど、二人とも肌の露出が多すぎて一瞬でも真空状態にするわけにもいかないので、エアロックは強制換気モードになり、狭いエアロック内に強風が吹き抜ける。

 数分間台風の中に放り込まれた様な大風に二人の髪も大変な状態になる。

 本来、船外に出るときは髪はまとめて、キャップを被るからこんな事にはならないんだけどね。


 ようやく内扉が開き、調査艇の中に入った。

 丸一日ぶりに戻ると艇内の空気の無味乾燥さに改めて気付かされる。

 動物のざわめきは無くても草木や大地の匂いを感じられた外気に触れると人工的にリサイクルを繰り返した空気には耐え難いものがある。

 アルバートを待つ間に自分の乱れた髪を手櫛で直し、メイアのもつれた髪も多少はましになるように整えてあげる。


 ようやく現れたアルバートを加えて奥ーというか前方へ進む。

 調査艇の二階は前方が多目的ラウンジになっていて、後方に二段ベッドの付いた居室が二つ、それと入ってきた非常用のエアロック。

 二部屋の居室は仕切りを抜いて四人部屋にもできるけど、その状態でようやく着陸船の個室位の広さになる。


 ラウンジはその時々によって食堂や会議室、休憩室等に使われる。

 今はそこに複数の医療機器とスクリーンが置かれ、臨時の検査室になっていた。

 一階の検査室は微生物やせいぜい小動物がいいところで人間向けにはなってないからね。


 フローラの大気を直接呼吸してしまったので、しばらくをこの狭い調査艇で過ごさなくちゃならない。

 ほんの数十分マスクを外していただけのアルバートも一緒に隔離される。

 規定では二十四時間は隔離して経過観察をする事になっている。

 でも、メイアなんてもう何年もフローラで生活してるんだろうから、経過観察なんて要らないような気がするんだけどね。

 でもまあ船長命令なんで、文句を言わずに従うしかないわけ。

 まあ船長じゃなくてもイリアに反抗するのは簡単じゃないけどね。




 調査艇二階の小さなラウンジに用意された医療機器を使っての採血と検査用マイクロマシンの投与を行った。

 採血した血液の分析は用意された検査機器で行ない、データーだけを着陸船に送って確認をする。

 調査艇が格納された状態では各種インタフェースが接続されているので必要なデータはこちらから見ることも出来るので仕事上は支障がない。

 採血とマイクロマシンの投与を終えると暇になる。

 その隙にアルバートは下へ降りていく。

 因みに一階にはコントロールルームとトイレ、小さな検査室とエンジンルームがある。たぶん確認したい事もあるのだろう。メイアの前では出来ない話もあるだろうし。

 メイアを一人にするわけにもいかないのでラウンジで留守番。

 キュルキュル。

 小さな音が室内の静寂を破る。

 真っ赤な顔でメイアがお腹を抱える。

「あ、そうだねお腹空いたよね」

 迂濶さに呆れながら戸棚を漁る。温めるだけの食事パックがいくつか見つかったので、二つほど作り付けのレンジに放り込む。

 すぐに可愛い音が鳴り、適度に温まった食事の準備が整う。

「昨夜はご馳走になったからね、まあ食べてみてよ」

 蓋を開けて湯気のたつトレイとスプーンを渡す。

「わー」

 メイアは目を輝かせてトレイに飛び付いた。

「美味しいねぇ」

 何度もそう言いながら一人前をペロリと平らげると、まだ半分も食べ進んでいないこちらをじっと見る。

「えと、これも食べる?」

 何となく気圧けおされてつい言ってしまう。

「うん!」

 遠慮もなくメイアは差し出されたトレイを受け取り、瞬く間に完食する。



 食事を終えてもアルバートが戻ってくる様子は無かった。

 興奮して疲れたのだろう眠そうなメイアを連れて居室に入り、彼女が眠りに落ちるまで付き添ってからそっと抜け出した。

 ドアを内側から開けようとすると警告通知が来るようにセットして階下のコントロールルームへ降りる。

 案の定、パイロットコンソールに座り込んだアルバートの姿があった。

「どうしたの?何か有った?」

 声をかけると、一拍置いてこちらへ振り返る。

「いや、別に」

 そう言って立ち上がりながらさりげなく手元のコンソールの表示を消す。

「あの娘は?」

「疲れたみたい。もう寝た」お腹も満たされてグッスリ眠っているはず。

「こんな時間に?」

 まだ精々夕方、昼寝には遅いが寝るには早すぎる時間だ。


「夜明けに起きて、日没には寝てるんだからそれほど早くもないんじゃない?」

 月の無いフローラの夜は暗い。

 夜行性の肉食獣に襲われる危険は無いし、結構夜目が利くようだけれど、それでも活動に適した環境とは言えない。

 勢い陽光が射す時間帯が活動時間になるんだろう。

 メイアも健康的な早寝早起きを実践していたものね。

 けれど宵っ張りの文明人としてはそうも行かない。

 昨晩もメイアが寝入ってからかなりの時間を明かりもないまままんじりともせずに過ごした。

 フローラの夜は虫の声も野生の遠吠えもない。

 静かで、静かすぎて不安になる。


 それは、今も同じ。

「何が有ったの?」

 少しだけ違う言い回しで尋ねる。

 アルバートの視線はあくまでも静かに見返す。

「折角生きた証拠を連れ帰ったのに、誰もなんにも言ってこない。文句も苦情も無いなんておかしいじゃない」


 押さえていた不安が頭ももたげる。

 アルバートが無言でいることが疑問を確信にかえる。

 何故誰も連絡をして来ないのかーそれは、誰かがそう出来ないことを隠すため。

 当然連絡してきて然るべき誰か。


「誰か…死んだ…?」

 アルバートの少し細めた視線に尋ねる。

「ジュエルなの?ねえ、そうなの!」

 アルバートに詰め寄り叫ぶ。

 最悪の事態を予測して、身構えて。


「ジュエルは」

 アルバートが諦めたように口を開く。

「大丈夫だ、すこし負傷したが大したこと無い」

 胸の中の大きな氷が少しだけ小さくなる。

「ーデイビッドがロケットの爆発に巻き込まれた。墜落して…」


 膝の力が抜ける。

 覚悟していた最悪ではなかったけど、だけど。

「ーあの、爆発…」

 あの恐怖はデイビッドのものだったの?じゃあ、あの狼狽は、混乱は、誰の?

「あたしの所為せいだね。西に行こうなんて言わなきゃ…」

 アルバートを押し離し、一歩下がると涼子はコンソールに後ろ手を付く。

 両足の力が抜けて、そのままずるずると床に崩れ落ちそうになるのを必死にこらえる。

 アルバートは慰めの言葉なんて掛けやしない。

 だって、事実だから。


「ジュエルも同じことを言ってる」

 やっぱり、そういう事なんだ。

「ヘリを出すなんて言わなきゃ良かったんだってな…」

 思っていたのと違う言葉に濡れた瞳を上げる。


「イリアはイリアで、許可しなきゃ良かっただの、もっと早くまやかしに気付いてお前を見つけてれば何て思ってる…言わないけどな」

「俺だって、お前の頼みなんか聞かなきゃ良かったって思わないって言えば嘘になる。けどな、結果はもう出ちまってるんだよ。誰の責任かって?俺たち皆の責任だよ、だから何だ?そうやって泣いてりゃ解決するのか?」

 アルバートは挑むように言葉を続ける。

「断じて違うからな、俺たちがこんな処まで来たのは何の為だ?ちゃんと思い出して自分の仕事をするんだ。いいな」


続きは明日です。

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