season2-109 再会 2
「ただいま・・・久しぶり」
8年ぶりに加賀美未來は母親の雪音と顔を合わせた。母親の雪音は8年ぶりに見た娘に泣きながら飛びついた。旧イギリス地区渡航日の8年前、成田空港でお別れして以来となる対面であった。泣きながら飛びついた母親に戸惑いながらも松川愛紗陸曹長は口を開いた。
「雪音さん、直接会うのは初めてですね!松川です!未來さんの護衛を来年までさせていただきます!よろしくお願いします!」
「娘を・・・娘を見つけてくださりありがとうございます・・・!未來、大きくなったね!背も体も!」
「うん!久しぶりに母さんに会えて嬉しい!父さんは?」
「父さんは今日は外せない会議があるって言って会社に行ったよ。夜には帰ってくるんじゃないかな?」
「そうなんだね」
「(母娘の再会てぇてぇ!くぅぅ!)」
軽く自己紹介をした松川は母親の雪音と未来のやり取りに尊さを感じた。8年ぶりということもあるのだが敵国に身を投じていた娘が無事に帰ってきたのは仮に自分が同じ立場であったら抱きつきに行くのは当然かもしれない。玄関で話すのもアレなので荷解きを雪音らに促した。
「雪音さん、未來さん、久しぶりの再会は喜ばしいですが玄関で立ち話するのもアレですしリビングでゆっくり話すのはいかがでしょう?」
「そうですね!お気遣いありがとうございます」
「私の家は隣なので私も荷解きを済ませたらまたここに戻ってきます」
「了解です」
松川も荷解きをするため加賀美の隣の家へ向かった。自分自身の家の鍵で扉を開けて段ボールの山を前に「頑張ろう・・・」と意気込んだ。1時間程度部屋の整理をした後、母親の雪音らに提示する護衛任務概要を説明するための資料を選出し、加賀美家へ向かった。
「お疲れ様です〜、いかがですか?久しぶりにお母さんと話すのは」
「話したいことがたくさんあって何から話せれば良いか分からないです笑」
この8年間で起きた出来事は山積みである。イギリス到着日からどうだったか、2024年に第三次世界大戦が起きたが何をしていたのか(「日米転生earth」を参照)、日本消失後にデングリーヅ連邦でどのような扱いを受けていたか母親に事細かく説明し始めた。改めて聞いてこの8年間は加賀美未來にとって人生において激動の瞬間であった。
「そうだったんだ・・・それは大変だったね・・・ゆっくり休みなさいよ?」
「うん。そうするつもり。でも実質私無職だから何かしら職に就きたい気持ちはあるし、もうすぐ私も30歳になるわけだし彼氏欲しい」
「確かにそうね・・・松川さん何か良い案はありますか?」
「そうですね・・・未來さんの護衛任務を遂行している以上、我々は本人の意思を尊重すると共に最大限の支援をさせていただく所存であります。個人的な意見としますと予備自衛官になるというのはいかがでしょうか?」
「予備自衛官ですか・・・私も昔やってました」
「本当ですか!」
未來の母親の雪音は大学生時代、予備自衛官補の3年間50日の訓練に参加後、予備自衛官として夫の拓海と結婚するまで任官していた経験がある。未來は【闘炎の刃】の幹部教育課程にて基本動作から射撃などの教育を受けてきたため予備自衛官補の訓練は楽勝なのかもしれない。しかし、強制ではなく本人の意思を尊重しなければならないのである。
「どうされますか未來さん。しばらく休んだ後、予備自衛官補の訓練に参加して予備自衛官になるという選択肢もありますけどどうしますか?もちろんやらないという選択肢もありますが・・・」
「やります。やらせてください。私は敵国側として日本やアメリカ、周辺国に迷惑をかけてきました。ですので予備自衛官として国に少しでも貢献したいと考えています」
「分かりました。協力本部と防衛省側にもこの事を伝えさせていただきます。他に何かやりたいことはありますか?」
「やりたいこと・・・今は美味しいもの食べて寝たいかもしれないです」
と同時に未來の腹が「ぐぅぅぅ」と鳴った。【闘炎の刃】の代表になって以降、ご飯は食べれていたがプレッシャーから食べた気がしなかった。松川は宮城といえば牛タンだと考え、スーパーで肉を買ってきて焼肉パーティを開催した。
夕飯の時刻になった頃、父親の拓海が帰宅した。未來が無事に8年ぶりに帰ってきたことに安堵したとともに護衛任務に従事してくれる松川に感謝を示した。松川らは牛タンを焼きながら先ほど話した今後のことを拓海に話した。
「未來さんの今後の予定としましては予備自衛官を志したいそうです。雪音さんは本人がやりたいことをやらせるとおっしゃってましたが拓海さんはいかがですか?」
「私も賛成です。ただ今は身体を休める必要があるだろう。未來はその選択に後悔はないかな?」
「後悔は無いよ。今まで迷惑かけてきた人に恩返ししたいからね」
「分かった。では今は肉を味わおうとしよう。松川さんもここを実家だと思って身構えずにゆっくり過ごしてほしい」
「ありがとうございます!」
家族全員で食べる肉は格別であった。ある程度肉や野菜を食べた後、松川は日本政府側が作成した【【闘炎の刃】元構成員の日本国内における保護生活に関する文書】を未來の両親に提示した。
「こちらが今後我々が実施していく護衛任務です。それとこちらが私の電話番号ですので何かおきましたらすぐに呼んでください。隣同士なのですぐに飛んで行きます!」
「何から何までありがとうございます!私たちも出来る限りのサポートをしていきますので娘を来年までよろしくお願いします!」
「はい!お任せください!」
松川は雪音・拓海・未來らに敬礼後、自分の家へ戻っていって毎日の出来事を記して所属駐屯地、師団司令部経由で防衛省に提出する【護衛任務対象者活動報告書】に今日のことを記入した。加賀美未來にとって20代最後のこの年、そして30代以降の生活に注目である。
加賀美未來らのストーリーはこれにて一旦終了です!次回もよろしくお願いします!




