season2-103「いずも」艦長・宮本昭伸の目覚め
第5章です!よろしくお願いします!
2030年2月21日15:30 陸上自衛隊・三宿駐屯地 自衛隊中央病院
陸上自衛隊三宿駐屯地内に設置されている自衛隊中央病院に多数の管で繋がれた男がベットで寝ていた。彼の名は宮本昭伸。護衛艦「いずも」の艦長であった。護衛艦「いずも」は空母能力を有していたが対空能力に欠けていたため、デングリーヅ連邦台湾地区軍からの攻撃を回避することができず、「いずも」に被弾したことで多数の犠牲者を出した。
昨年9月9日、攻撃を受けた「いずも」は乗員506名のうち副艦長の長谷川藤也を含めた10名が死亡、86名が重傷、宮本昭伸も意識不明の状態で発見され、「こんごう」「もがみ」「はるな・改」に救出後、自衛隊中央病院に搬送されて以降目を覚ましていない。86名が重傷となったが時間が経過していくうちに徐々に殉職者を出してきた。翌日の10日までに62名が亡くなってしまった。昏睡状態の宮本は高度治療室(HCU)に移され治療を受けていた。
同刻、宮本は高度治療室の病床で目を覚ました。実に5ヶ月ぶりに目を覚ましたのである。点滴交換に来ていた看護師の松原は宮本が目を覚ましたことに気づき、主治医の長武を呼んだ。
「長武先生、宮本さんが目を覚ましました」
「本当か。すぐに行こう」
宮本の担当主治医である長武は彼の健康状態を確認した。長武は自分が何者であるかわかるか問いかけた。
「おはようございます宮本さん。目を覚ましたばかりで申し訳ないのですがご自身のお名前は分かりますか?」
「宮本・・・昭・・・伸です・・・、ここは・・・一体?」
「ゆっくりで構いません。ここは三宿駐屯地の中央病院の高度治療室です」
「そうですか・・・ゴホっ!ゴホっ!」
咳き込んだため宮本は深呼吸をして水を飲み、深呼吸をして現状を受け入れる準備を整えた。1時間ほどで受け答え出来るようになったため休憩を交えながら話をした。
「先生、もう大丈夫です。「いずも」が沈んでから私は5ヶ月寝ていたようですがその間に何が起きたか・・・教えていただけますか?」
「分かりました。宮本さんが寝ていたこの5ヶ月を全て話しましょう」
宮本昭伸は「いずも」が攻撃を受け、衝撃と同時に倒れ込んでしまい意識を失った。「こんごう」「もがみ」「はるな・改」の隊員に救助されなければ命を落としていたに違いない。また、当時負傷者を乗せた3隻は横浜港と横須賀基地で待機していた100両以上の救急車に移送し、各病院へ搬送した。そして宮本は重篤であったため自衛隊中央病院に運ばれた。頭部からの出血が酷かったため止血措置を施した。
「それから宮本さんは手術をしてなんとか一命を取り留めました。ですが艦の衝撃で倒れた際に脚と腕を骨折されたようでして思うように動くことは出来ないでしょう。リハビリをお勧めします」
「そうですか・・・「いずも」は引き揚げられるんですか?私は再び護衛艦に乗ることは可能ですか?」
「「いずも」の引き揚げに関しては年内には行われるようです。ですが・・・」
「ですが?」
「宮本さんの身体はかなりのダメージを受けています。宮本さんの年齢的に海上自衛官として活動を続けることは厳しいでしょう。苦渋の選択になるかもしれませんがどうかご理解ください」
宮本は事実上の引退勧告を受けた。宮本が昏睡中の時に見舞いに来た横須賀地方総監の島袋は宮本の怪我状態、昏睡期間、目を覚ました後の健康状態を考慮した上でリハビリ終了後に部隊に復帰するか年齢を考慮して退館するか否かである。宮本は今年で50歳になる。年齢的にもかなり復帰は厳しいものになるだろう。
「退官ですか・・・。非常に残念ですが退職させていただきます。助かったこの命、藤也の分まで大切にさせていただきます」
「分かりました。島袋総監に宮本さんが目を覚ましたことを報告したら明日来ると仰っていました。退官することをお伝えください」
「はい。これからのリハビリよろしくお願いします」
「こちらこそ宮本さんのために全力を尽くします」
翌日、宮本の部屋に島袋壮一・横須賀地方総監が来室してきた。島袋とは「いずも」艦長就任式以来の再会となった。口を開けたのは宮本の方であった。
「お久しぶりです島袋総監。2度目の対面がこんな形で申し訳ございません」
「とんでもない宮本一佐。あなたはデングリーヅ連邦台湾地区からの脅威に排除するために「いずも」の艦長として立ち向かってくれた。非常に感謝している。昨日、1佐の主治医から退官の意思を聞かされたらしいが本当かな?」
「はい。心苦しいですが私の年齢的にも肉体的にもこれ以上職務を遂行することは難しいと思います。この決定に私は後悔していません」
「分かりました。1佐の意思を尊重させていただきます。宮本さんが退官後、我々は生活費・リハビリ費などあらゆる面で支援させていただきます。「いずも」艦長・宮本昭伸に最大級の敬意を称します!」
島袋は宮本に敬礼をした。宮本も島袋に敬礼を返した。海上自衛隊側は宮本の退官後を最大級支援する意向を示した。宮本には経済・医療・生活・家族に対する支援を実施すると伝達した。また、「いずも」最後の艦長として敬意を表するため退官式の実施を検討していると伝えられた。
「今日はありがとうございました。私は「いずも」の艦長としての任務を遂行することは出来たでしょうか?」
「もちろんです。宮本さんの貢献を我々は忘れることはないでしょう。それでは今日は失礼します。ゆっくり今は休んでください」
「はい。ありがとうございました」
島袋が退室後、宮本は涙を流した。22歳から海上自衛官として28年、定年退職を目標としていたがこのような形で退職してしまうことは残念でならなかったが生きていることに改めて実感した。涙を拭き取り、家族とも面会し、リハビリを頑張ることを宮本は決意した。28年間、海上自衛官として奮闘し、退官した後の彼の今後の生活にも注目しよう。
第5章開幕です!第5章では第6章に向けた準備期間となります!次回もよろしくお願いします!