season2-91 反乱の足音 Third phase -影武者-
前日23:30 デングリーヅ連邦イギリス地区・ロンドン【闘炎の刃】本部(ポーツマス基地出港6時間前)
航空自衛隊側と【闘炎の刃】代表、ミライ・カガミが接触する10時間前、全幹部を招集した。突然の招集に陸上作戦部のユータ・タガミ、海上作戦部のリック・クリス、航空作戦部のアスカ・シノイらはミライの話に耳を傾けた。
「夜間にも関わらず来ていただきありがとう。それで・・・私の【影武者】は見つかったかな?」
「最善を尽くしました。今部屋の外で待っていますので連れてきます。入って来なさい!」
「失礼します。【闘炎の刃】ロンドン管区・グリニッジ地区第6警備隊隊長のワカバ・オオタと申します。お話を聞いて驚きました代表のお役に立ててとても光栄です」
「おぉ、変装していなくても似ているね。全メンバーの写真から彼女を3日で見つけ出したのはお疲れ様。状況が終わったらゆっくり休みなさい」
【闘炎の刃】本部には代表や全幹部、組織全メンバーの個人情報が本部の情報管理部に保管されている。ミライ・カガミの身代わり候補を探すため死に物狂いで探した結果、ワカバ・オオタを探し出すことに成功した。ワカバは代表と顔が似ており、髪型などを似せれば本物と間違えられるかもしれないと判断し、彼女を本部に招集した。彼女が所属しているグリニッジ地区第6警備隊にも事情を説明し、承認された。そして代表に似ている人物を探している時の様子を回想形式でお送りする。
〈クリスマス終了〜現在〉
〈探せ!ミライ代表の影武者を探せ!【闘炎の刃】の野望のために全力を尽くせ!」
〈はい!(そっくりさんは一体どこに・・・?〉
〈情報部長!この人はどうでしょう?グリニッジ地区第6警備隊のワカバ・オオタという女性です!〉
〈ふむ・・・確かに似ているな・・・よし、彼女を本部に招集しよう。第6警備隊長に連絡するように!〉
〈分かりました!〉
制限ギリギリ下での捜索ではあったが第6警備隊のワカバ・オオタの招集が決定した。すぐに第6警備隊隊長のロビン・セーリンに連絡し、返答としては「是非とも協力したい。ワカバ・オオタをよろしく頼む」と返ってきた。情報部長は安堵した様子であった。
〈回想終了〉
「さて、我々には時間がない。来てすぐで申し訳ないが・・・速やかに着替えなさい」
「承知しました。お部屋はどちらに?」
「案内するからついて来て」
ワカバはミライの服に着替えるため部屋へ行った。ワカバとミライは体型数値も同じであるため採寸をすることなく着替えが完了した。
「どうですかね?代表の服ということもあり責任感を感じています。似合ってますかね?」
「うん。本当に私にそっくりだ。いや、私になってるな。これならフアンセル司令にはバレないだろう。【闘炎の刃】のためによろしく頼むよ」
「はい!誠心誠意努めさせていただきます!」
「さぁ、会議に戻ろう。君にも会議には参加してもらいたい」
「わかりました」
着替えも終わり、ミライとワカバは会議室へ戻った。会議室へ戻ると「めっちゃ似てます!」という声が相次いだ。ワカバを見つけ出したことにミライは感謝を示した。
「会議を再開するがワカバ、何か質問はあるかな?些細なことでも構わない。何でも言ってくれ。私の代わりになる者として【闘炎の刃】の全てを話そう」
「そうですね・・・ミライ代表が不在の際にフアンセル司令がいらっしゃった場合、どのような対応をするべきなのでしょうか?普段代表はどのように司令と接しているのか教えていただけますか?」
「フアンセル司令とは対等な立場で接してる。いついかなる時も対等な立場を取らなければならず、気を抜かず強気な姿勢で行っているよ。」
「なるほど・・・それともう一つ。声の違いでバレませんか?」
「大丈夫。こんなことを言うのもアレなのだが『声変わりの時期になりました』だったり嘘をつけば良い。あらゆる手段を用いて私たちはデングリーヅ連邦を欺かなければならない。他に何か質問はある?」
「ありません。色々と教えていただきありがとうございます」
その後、ミライ代表はユータ・タガミの誘導に従い、旧イギリス陸軍装甲車・ジャッカルに改めて乗車した。一方でワカバはリック・クリスとアスカ・シノイからフアンセル司令に関することや影武者期間中の代表職務内容などを説明した。
「幹部の方々がこんなに大変だとは思いませんでした。いつも我々のことを考えてくださりありがとうございます。代表の影武者として少しでも皆さんに恩返し出来ればと思います」
「そのように言ってくれてありがたい。一昨年入隊から辛かったことしかなかったですが部下の言葉はやはり心にくるな・・・さぁ今はフアンセル司令にバレないように努めよう」
「そうですね。ではそろそろ仮眠を取ろうかと思うので休もうと思います」
「分かりました。何かあったら連絡します」
するとベットに入った瞬間,来客用のチャイムが鳴った。誰が来たのかとリックとアスカと共に見るとフアンセル司令と護衛たちの姿があった。まさかもうバレたのか?と考えながら本部の中に通した。
「夜分遅くにどうされたのですかフアンセル司令」
「夜遅くに来てしまって申し訳ないね。それにしても今日は人が少ないようだがみんなどこに行ったのかな?」
「【闘炎の刃】は現在、夜間演習中です。昼にしか緊急事態が発生しないという確証はありません。夜に発生した緊急事態に備えて我々は対日米合同夜間演習を実施しています」
「ふむ・・・その心がけは良いことだ。それとお菓子を持ってきたのだがいかがかな?」
フアンセル司令はミライ・カガミの影武者になったワカバにデングリーヅ連邦で有名なクッキーを手渡した。連邦のクッキーはちょうど良い甘さでとても美味しいと好評なのである。
「ありがとうございますフアンセル司令。ありがたく頂きます。そういえば日本とアメリカとの戦闘状況は順調ですか?」
「今その話はしないでくれ。今は苦しい状況かもしれないが電力施設の修復が終われば我々は日米に痛い目を与える。てかなぜその質問をする?なんか怪しいな?」
「(まずい・・この短時間でバレるのか?)」
緊張で心臓がドクドク言っていたが何とか深呼吸して落ち着いた。
「まぁ良い。変な動きでもしたら連邦軍は【闘炎の刃】を許さないだろう。覚悟して職務を遂行するように。では私はこれで失礼する。お菓子ゆっくり味わうように」
「承知しました。またお会いできるのを楽しみにしています」
フアンセル司令が退室後、ワカバの緊張は解けた。かなりヒヤヒヤしたが何とか耐えた。影武者だとバレていないことを祈るしかない。そして地区司令部へ戻る途中、フアンセル司令は何かに勘づいていた。
「なんか怪しいのだが・・・うーむ。【闘炎の刃】が何するかは分からないが日米の状況を注視しつつ彼女らにも警戒しておこう」
と考えていた。今後、フアンセル司令にとって最悪な状況に陥ることをまだ彼は知らない。
次回もよろしくお願いします!