season2-64 熱気は再び舞い上がる
11月5日10:00 ロサンゼルス・メモリアル・スタジアム
この日、10月27日以来の競技が再開された。見渡す限りの陸上保安庁、ロサンゼルス州警察職員による厳重な警備のもと、各会場で盛り上がりを見せていた。30競技300種目の全日程を残り8日で消費しなければならない。過密日程になってしまうかもしれないが競技が再開されることに選手団の士気は最高潮に達している。
「さぁ1週間ぶりの競技が再開するぞぉぉぉぉ!盛り上がってるかぁ?!!」
「うぉぉぉぉ!」
全競技が開始する前にロサンゼルス・メモリアル・スタジアムにて司会のロイが会場に集まった5万人の観衆の気持ちを昂らせた。先月28日の発砲事件で競技再開に不安を持つ人もいたが会場の熱気によってその不安は押し除けられた。各会場に配置されたロサンゼルス州警察職員、陸上保安官、追加で配置された米陸軍のよって2万人規模で警備体制を敷いた。一方で警戒中の陸上保安官は気を緩めることなく無線で情報を伝えた。
「こちら第1警戒隊、任務エリアの北部地区に異常は確認されていません」
『本部より第1警戒隊及び全警戒隊に所属する隊員へ。細かい犯罪にも目を光らせるように。引き続き警戒にあたれ』
「了解!」
1週間前の事件を二度と起こしてはならないため会場では熱気に包まれていたが警備エリア周辺はピリピリした雰囲気が漂っていた。全16個の警戒隊を編成した陸上保安庁は競技が行われる野球場・サッカー場・騎士格闘会場・アメフト会場などに配置された。万全の警備体制が展開できるように30分に一回の定期報告が行われている。
同日14:00 騎士格闘 準決勝
ロサンゼルス・メモリアル・スタジアムでの司会の盛り上げから4時間後、騎士格闘競技が行われるロサンゼルス州会館では10月28日に行われる予定であった準決勝が始まった。この準決勝は20名から8名まで絞られる。この試合で10名が敗退となるのである。
「これより準決勝第1試合を開始する。選手は所定の位置につけ」
準決勝で出場予定の日本代表の7位・神馬雄一は5位の瀞栁鐘と対戦し、予選11位タイの榎原は6位のレリック・パイスと、同順位の郡道は9位タイのタニス・フリス、予選16位の若林は14位のシェルスイ・レンスーとの対戦が第1節の試合である。これは単なる遊びではなく勝負であるためここにいる20名の選手は8名を振り落とす賭けに出る。第1節7試合目に出場する神馬は試合開始が近づくにつれて緊張してきた。
「(予選2位の人が負けてしまうとは・・・騎士格闘、恐るべし・・・!油断しないように気をつけなければ・・・)」
『準決勝第1節第6試合は予選20位のハーマン・アジックが何と予選2位のハーベイ・エリットを負かした!ジャイアントキリングだぁ!我々には予想外の展開だぁ!』
『第6試合、まさかの試合でした。ハーマン・アジックは悔し泣きをしている!そして第7試合、まもなく開始です!」
予選2位の選手が敗れ、予選20位の選手が勝利した。予想外の試合展開に驚きの声が聞こえてきたが神馬は気持ちを切り替えて装備を装着して試合会場へ移動した。頑丈な警備体制が敷かれているのを横目に戦う顔をしながらフィールドへ移動した。
「さぁ第7試合はシェルスイ・レンスーに勝利した神馬雄一が武蔵連邦国代表・瀞栁鐘と対戦します。神馬選手にとって1週間ぶりの試合になりますがコンディション含めていかが見ていますか?」
「そうですねぇ、彼はどのような状況であれ足掻プレーを見せてくれます。彼のプレーは我々実況・解説・ファン・彼のコーチ含めて全員が熱くなるでしょう。今日もそのような試合に期待しています」
「なるほど。楽しみです。さぁ試合の始まりの合図がまもなく鳴る!」
実況と解説が神馬の戦略にも注目した。フィールド上にて神馬と瀞が一礼した後、試合開始の合図が鳴り響いた。両者は互いに敬礼した後、睨み合いながら武器をポイントの入る箇所に突きつけた。3ラウンド計27分の長期戦になるため体力勝負となるが神馬は攻めに転じた。しかし、24分を経過してくるとやはり体力の限界がやってきた。それでも神馬は守りに転じることなく攻め続けた。
「(残り3分!向こうも体力の限界が来ているな・・・今のスコアは30-14、勝てる!)」
そのように意気込んでいたが油断してしまい頭部にポイントを入れられてしまい30-24と6点差に迫られてしまった。これ以上得点を入れられる訳にはいかないため、試合終了1分30秒前に脚部と腹部に命中させ14点を入れて44点目を獲得した。実況も神馬の勝ちを確信した瞬間、瀞は頭部に二連続で命中させる珍プレーを披露した。
「何ということだ!試合終了間際に同点に追いついた!これが騎士格闘の面白さ!試合終了まで気が抜けない緊張感!堪らない!」
44-44となり、27分が経過した。引き分けという状況になっているため2分間の延長が始まった。この2分間、両者は死に物狂いで相手から得点を奪おうと体力の限界を超えて戦うことになる。
「何という激しい攻防!これはスポーツではなく戦闘だぁ!怪我には気をつけてほしい!」
延長が始まって以降、必死の攻防が続いた。延長終了40秒前にようやく神馬が脚部に命中させ6点を奪い取った。50-44となったが最後の最後で瀞が神馬の腹部に命中させ8点を奪い取り50-52で逆転勝ちを決めた。
「試合終了!!!武蔵連邦国・瀞選手が準決勝第1節第7試合に勝利!!神馬選手、惜しくも敗れました!痺れる試合展開でしたが瀞選手の勝利で第7試合終了です!」
試合終了後、両者は互いに握手とハグを交わして称え合った。神馬は会場裏で悔し涙を見せた。しかし、会場から聞こえてきた大きな拍手に次回も頑張ろうと決心した。競技再開初日から激しい試合を見せたオリンピックはさらに熱気を増していく。
次回もよろしくお願いします!




