season2-61 彼
10月28日17:00 日本国 首相官邸
「総理、ロサンゼルス派遣隊の陸上保安庁より報告です。テロ行為を犯した64名の身柄を拘束した模様です。これを受けて警備体制を強化するためオリンピックを1週間程度延期すると草部会長より発表されました」
「そうか・・・まさかデングリーヅ連邦と関係のある組織とか言うまいな?」
「その通りです。降伏直前、彼らは「俺たちはデングリーヅ連邦イギリス地区の【闘炎の刃】だ!と叫んでいたようです。そろそろ次のエリアが来そうです」
「台湾の次はイギリスが来るか・・・。いつでも自衛隊各部隊が出動できるよう防衛出動準備命令と自衛隊戦闘準備命令を出さなければならないな。今は平時とはいえすぐにでも有事になる可能性もある。我々は万全の体制で望まなければならないな」
加藤総理はいつデングリーヅ連邦が来ても良いように自衛隊の練度強化に万全を尽くすよう命じた。また、11月27日に昨年出来なかった自衛隊観閲式に出席することになった。
「報告を見たが・・・陸上保安官の職務質問時に武器を取り上げることは出来なかったのが残念だ。オリンピック期間中は日米の法律を混ぜ合わせて欲しかったものだ」
「そうですね・・・あの時の会談が悔やまれます・・・」
加藤総理は宮部奏多法務大臣とベッセマー大統領とアリエル・ジャクソン国務長官とオリンピック開会式前に治安維持と観光客の安全面に関しての会合が行われた。当時の会話を振り返ってみる。
『加藤総理、今日は我が国にお越しいただき感謝します』
『こちらこそお招きいただき光栄です。今日はオリンピックに関する大事な話をしに来ましたのでね。良い会合になることを期待しています』
『もちろんです。ではこちらに』
オリンピック開会式2週間前の10月6日12:00にホワイトハウスで日米首脳会談が始まった。席に座ると加藤総理から口を開いた。
『さて、単刀直入に申し上げますが今回のオリンピック開催に伴い、会場周辺はおそらく混雑が予想されます。陸上保安庁の職員を派遣する予定ですがどのくらい必要でしょうか?』
『ふむ・・・混雑状況を察するに500〜1000人は必要になりますが如何ですかね?』
『構いません。帰国次第、陸上保安庁長官に伝達いたします。それと陸上保安庁の警備エリアで犯罪やテロが発生した場合は我が国の法律を適用することは可能でしょうか?』
『うーむ・・・事案発生の場合は我が国の警察と共同で対処するというのは出来ませんかね?』
『それも良いかもしれませんが何かあってからでは遅くなるという事だけは理解していただきたいです。郷に入りては郷に従えという言葉もありますしね』
ここの会話でもう少し強く出ていれば銃刀法を適用できたかもしれないが仮に武器を取り上げる前に発砲されては水の泡となってしまう。今回の事件は避けることができない事件だったのかもしれない。
「今は負傷者の命が助かることを祈ろう。それと久しぶりにNSCを開いてデングリーヅ連邦イギリス地区に関する協議を進めようじゃないか」
「了解しました。すぐに部屋を準備いたします」
「後、久しぶりに“彼”に会ってみようかな」
「あぁ!“彼”ですね!分かりました。NSC終了後に車で参りましょう」
加藤総理は日米首脳会談のことを思い出した後、もう一つの問題であるデングリーヅ連邦イギリス地区についてを国家安全保障会議(NSC)を開いて有事の際のシミュレーションを行う予定となっている。
同日18:00、NSCがスタートした。デングリーヅ連邦イギリス地区転移時を想定した自衛隊の行動について今話し合っている。会議には加藤総理、鈴木防衛相、岩田外相、大島副外相が出席した。
「これより国家安全保障会議(NSC)を開催する。先ほど陸上保安庁より報告があり、デングリーヅ連邦イギリス地区を名乗る武装組織の出現と60名を超える者をテロ犯罪者として身柄を拘束したという報告があった。【闘炎の刃】と呼ばれている武装組織はデングリーヅ連邦イギリス地区と発言した。みんなこれの意味が分かるか?」
「台湾の次はイギリスということでしょうか?」
「惜しいな。私が言いたいことはまだ我が国には脅威は残っているということだ。国民が笑顔で安全に過ごせるよう準備をしておかなければならない。ということ今日はシミュレーションを行なってもらう。どこに転移してくるか分からない敵に対して速やかに対処できる力が我々にも必要だ。大島さん、何か意見はございますか?」
加藤総理は元総理の大島副外相に意見の有無を問いた。
「デングリーヅ連邦イギリス地区が仮に北海道周辺に転移してきた場合、新札幌駐屯地に司令部を置く第7師団を動かす必要がある。第7師団は4個普通科連隊28個の戦闘団、2個後方支援隊、樺太管理隊、2個戦車師団、1個偵察機動師団、1個空挺団、1個水陸機動団、1個無人航空師団、2個施設団、1個ミサイル師団、1個高射特科団が北海道各地に駐屯しています。戦力的には問題ないでしょう。ですが台湾地区攻略の時と同じようなやり方はオススメしません。ライジングは何かしら対策をしてくる可能性が高いです」
「なるほど・・・だが北海道方面に転移してくるとは限らない。彼らはどこにでも現れる。常日頃から戦える用意が出来るよう訓練に励んでもらいたい。その件を来月の観閲式の訓示で話すとしよう」
「了解です」
その後、旧札幌市の復旧・復興や自衛隊の定員や駐屯地の設備改築、令和12年度の防衛費に関することが話し合われた。旧ボルドー国による攻撃で札幌市は壊滅的被害を受けた。今は瓦礫や損壊した建物などは片付けられており何も無い状態となっている。日本政府は2040年までに札幌市の完全復活を目標にしている。
自衛隊の定員に関しては、現時点で自衛官の定員は55万7000人となっているが旧ボルドー国やデングリーヅ連邦との戦闘で人手不足が見受けられているため無人機の積極的な活用が求められている。また、予備自衛官や即応予備自衛官の定員も増やさなくてはならず、2035年までに即応予備自と予備自の定員を8万人を目標としている。
防衛費に関しては現時点で17兆7000億円となっているが2030年(令和12年度)には18兆円超えを目標としているが財務省から国民生活や経済に影響が出る可能性があるため現状維持か減額を要求されたため現状維持に決めた。
「ふぅ、以上でNSCを終了する。ありがとうございました」
「「「「ありがとうございました」」」」
国家安全保障会議終了後、加藤総理は大島総理と共に東京拘置所の政府要員室へ向かい久しぶりに“彼”に会うことにした。
「やぁ、久しぶりだね。旧ボルドー国最高指導者・アスキーくん」
次回もよろしくお願いします!