season2-56 死闘
10月27日11:00(日本時間28日3:00)騎士格闘個人・第32試合
「さぁ騎士格闘個人戦も残りわずかとなった!ここまでグレーシス共和国代表が優勢だが果たしてここから各国は巻き返すことはできるのか!?第32試合、日本対バンジ共和国の一戦!まもなく始まります!」
騎士格闘競技が23日にスタートして4日が経過した。ここまで準決勝に進出することが可能となっている上位20名のうち8名がグレーシス共和国代表が名を連ねており実力を誇示している状態となっている。全40試合が行われる今回のオリンピックの騎士格闘は新鮮な競技を目にしたこともあり盛り上がりを見せていた。
また、第32試合目に出場する日本選手は神馬雄一であった。神馬は緊張した面持ちを見せていたがコーチに声をかけられた。
「ゆっくり深呼吸するんだ雄一。初めての競技に挑む時は誰だって緊張する。短い練習期間ではあったが自分が得た実力を十分に発揮するんだ。良いね?」
「はい!ありがとうございます!」
「おう!行ってこい!」
雄一のコーチも騎士格闘を学んだがまだ分からないことは多々ある。しかし、自分が教えられる範囲で最大限伝授することはコーチとしての使命である。今は試合の行方を見守るしかないのである。
「それでは騎士格闘第32試合、日本代表・神馬雄一対バンジ共和国代表・シェルスイの試合を開始する。両者、フィールド内に入り所定の位置に立ちなさい」
雄一らは対戦相手であるバンジ共和国のシェルスイ・レンスーと握手を交わした。
「それでは試合を開始する。両者は武器を構えよ!試合・・・始め!」
「(始まったか・・・やはり騎士格闘は選手は体力を使う。休憩はあるとはいえ3ラウンド9分の計27分はかなりきついものになるだろう。雄一の体力が持つかどうかの話だが・・・それにしても何度見ても騎士格闘は激しい競技だな・・・)」
ここまで32試合が行われて来たが重い装備品を身につけている他、フィールド全体を使って試合をするためかなりの体力を消費する。グレーシス共和国の選手たちは何年もプレーして来ているため体力お化けの集団となっている。各国の選手たちも負けじと食らいついて来ているが試合途中でリタイヤ選手が4名いたため、奥が深いスポーツとはいえ体力の他に重さに耐えながら試合を続ける忍耐力も重要となってくる。
神馬雄一の試合中、2ラウンド7分(残り2分)の時点で8-8と拮抗した試合が続いている。延長だけは避けたいところでもある。
「(もうすぐ休憩だ。残り120秒、耐えるぞ!)」
「(向こうもなかなかやるな・・・てか、この装備外した時に汗やばいことにならないか?)」
「(相手との距離は遠くはないが至近距離だと狙われるリスクが高まる。相手が脚を出して来たと同時に狙う!今だ!)」
「おっと!神馬選手、シェルスイ選手の脚部を攻撃したことで6点獲得!14-8で神馬選手がリードしているところで第2ラウンド終了!3分間の休憩が始まります」
第2ラウンド終了10秒前に雄一はシェルスイの脚に命中したことで規定に基づき6点を獲得し、8-8から14-8としてクールタイムに入り、コーチは雄一に声をかけた。
「良い調子だぞ雄一。だが油断してはならない。第3ラウンド目は相手も勝ちたいという思いが強いはずだ。何か仕掛けてくる可能性があるため注意するように。試合後、焼肉行こう」
「了解です」
水分補給をとったが両選手共に汗の量が半端じゃなかった。休憩ももうすぐ終わるためタオルで汗を拭き取って防具を装着して再びフィールドに入った。
「第32試合第3ラウンド、試合・・・始め!」
第3ラウンドがスタートした。雄一は14-8と6点差とリードしているが油断して頭部に命中した場合、10点が入るため14-18と一気に逆転されるため注意しなければならない。
「さぁ両者共に体力の限界がきていると思われます。騎士格闘は己の限界を超えるスポーツであります。この限界を超えることは出来るのか!」
そして第3ラウンドの途中の6分(残り3分)の時に試合は動いた。神馬とシェルスイは攻勢に躍り出た。そのため点の取り合いになったこと、ポイント獲得部位各所に命中したこともあり14-8から20-18となり、シェルスイは2点差に迫った。
「シェルスイ選手、とうとう2点差に迫った!第3ラウンドも残り2分!神馬選手は逃げ切ることは出来るのか!それともシェルスイ選手が追いついて逆転するのか!さぁどっちだ!」
接戦の展開に会場の盛り上がりは最大に達した。観客席からは多数の〈神馬!神馬!〉〈シェルスイ!シェルスイ!〉のコールが鳴り響いた。すると試合終了1分前にシェルスイは神馬の腕に命中させ規定に則り、4点を獲得して20-22と逆転を果たした。
「何という熱い試合だ!シェルスイ選手、試合終了1分前に逆転だ!さぁ神馬選手はここからどう攻略する?!」
20-22になってから30秒後、試合終了30秒前に再び神馬が仕掛けた。シェルスイは一瞬だけふらついたためその隙を狙って逆転可能な腹部を狙って見事命中させた。その結果、28-22と再び雄一がリードする展開となり試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「試合終了!!!勝者、神馬雄一選手!最後の最後で相手の隙を突いた見事な逆転劇を披露しました!試合終了後に神馬選手にインタビューしたいと思います!」
試合終了後、両者は固い握手とハグをして称え合った。雄一はコーチのところに行くと「今日は好きなものを奢ってやる!」と言われた。また、試合後のインタビューにも答えて選手寮に戻って行った。
その後、第40試合まで行われ準決勝に進出することが出来る上位20名の選手名と順位・試合日程・獲得点が同日21:00(日本時間28日13:00)に発表された。以下が発表された内容である。
●騎士格闘 予選順位(準決勝進出可能上位20名)
1位 ミジェール・オリバ 42得点 グレーシス共和国
2位 ハーベイ・エリット 38得点 アメリカ合衆国
3位 ワジェ・ケンリュー 36得点 グレーシス共和国
4位 デマックス・ファー. 34得点 ヴェルディ連邦共和国
5位 瀞栁鐘32得点 武蔵連邦国
6位 レリック・パイス 30得点 グレーシス共和国
7位 神馬雄一 28得点 日本国
7位 オレイス・ハース 28得点 グレーシス共和国
9位 デーバイ・アセルス 26得点 グレーシス共和国
9位 タニス・フリス 26得点 アメリカ合衆国
11位 榎原碧 24得点 日本国
11位 郡道綾乃 24得点 日本国
11位 トーミ・デクス 24得点 グレーシス共和国
14位 シェルスイ・レンスー 22得点 バンジ共和国
15位 ロード・マルティネス 22得点 アメリカ合衆国
16位 リューズ・パーマー 20得点 グレーシス共和国
16位 若林紅羽 20得点 日本国
18位 レガシ・パリック 18得点 アコースティ王国
19位 ノレン・ボーク 16得点 グレーシス共和国
20位 ハーマン・アジック 14得点 アズール民主国
という順位となった。日本は神馬雄一、榎原碧、郡道綾乃、若林紅羽が名を連ねた。また、準決勝の試合開始時刻も発表された。グレーシス共和国の選手が多くランクインしている中、4名の日本選手はどこまで行けるか注目である。
次回もよろしくお願いします!