season2-52 開会式前
10月14日15:30 日本国北台湾 陸上自衛隊台北駐屯地・濱江街地区
14日15時半、第61普通科連隊第296戦闘団第5普通科戦闘中隊がデングリーヅ連邦側が設置したと見られる転移装置らしきものを発見した。仮の隊舎の裏口付近にカバーが被せられており発見した依知桜は中隊長の黒井遥希に速やかに報告した。
「良く見つけた依知。全隊員に達する!これより我々は内部調査を実施する!デングリーヅ連邦が設置した装置を確認したとしても決して触らずに報告せよ!」
「了解!」
黒井中隊長の命令のもと、転移装置があると思われる通路に16名を中に入れた。296戦闘団は発見した通路を【リーパー】と命名した。通路内に侵入した16名の自衛隊員らは武器を携行して内部の警戒を怠らなかった。
「柴崎より中隊長へ。【リーパー】奥にて報告のあった転移装置を確認!」
『こちら黒井。目標の特徴を可能な限り説明せよ』
「目標には・・・「赤」と「青」のランプが付け備われており、その近くに「㊙︎」と記されたボタンが付いています。押してみますか?」
『絶対に押してはならないと侵入前に告げたはずだ。それで、目標の大きさは?』
「上郷です。ボタンに触れないよう定規などは使用せず大きさをお伝えします。横幅120cm、縦200cmの大きさです!」
『縦に長いな・・・上郷、お前の身長はいくつだ?』
「自分の身長は175cmですが・・・それが何か?」
『目標との大きさと比較しただけだ。気にしないでくれ』
「了解しました。引き続き警戒します」
デングリーヅ連邦が開発した転移装置の名称は書かれていなかったため詳しいことは掴めなかったが16名の隊員の一員である十亀があるものを発見した。
「こちら十亀!【リーパー】のさらに奥にて【デングリーヅ連邦台湾地区に関する情報。外部流出禁止】と記されたものを発見しました!」
『良く見つけた!地上に戻って来た後、速やかに戦闘団本部に提出せよ!これはデングリーヅ連邦の本国のことも知れるものかもしれない。厳重に取り扱うように!」
「了解!」
「爆弾発見!」
「は?」
『は?』
爆弾発見という言葉に耳を疑った。ここが爆発すれば【リーパー】内部にいる16名の隊員が巻き添えになるとともに転移装置が起動する可能性も考慮すると台湾地区ごと別世界に転移するかもしれないため慎重にならなければならない。
「大きさは50cm、小型ですがデングリーヅ連邦軍の兵器は大きさ関係なく強い威力を発揮するため気をつけなければなりません!中隊長!どうしますか!」
『不発弾か・・・参ったな・・・。【リーパー】内部にて行動中の16名は速やかに脱出し不発弾処理部隊の到着を待て」
「はい!」
デングリーヅ連邦側が設置したと思われる爆弾を発見したことで隊員の身に危険が及ぶ可能性があることから地上への脱出を命令した。また、黒井中隊長は八丈島駐屯地に所属している第4後方支援集団第9後方支援連隊第1不発弾処理隊に緊急派遣を要請した。
「第296戦闘団第5普通科戦闘中隊より第9後方支援連隊及び第4後方支援集団本部へ。台北駐屯地にてデングリーヅ連邦が設置したと思われる転移装置を発見した。それと共に不発弾を発見した。これを処理するため第1不発弾処理隊に派遣を要請する!」
『こちら第4後方支援集団本部。第296戦闘団第5普通科戦闘中隊の要請を受理する。第1不発弾処理隊を派遣するが到着は16日の午後になるがよろしいか?」
「爆発する危険性はゼロに近いため問題ありません。第1不発弾処理隊の派遣要請の受理に感謝します!」
第1不発弾処理隊の派遣が決定したが爆弾が爆発しないということは決して無いためこの48時間は隊舎はピリピリした雰囲気が漂うに違いない。そのため第5普通科戦闘中隊の隊員全員で交代しながら【リーパー】の監視を行なっていくことになった。
「まさか爆弾が見つかるとはな・・・向こうが回収し忘れたとか?」
「流石に向こうもそこまで馬鹿では無いだろう」
「そうだよなぁ。やべ、飯の時間だ!急いで食わないと!」
【リーパー】内部の調査が19:30前後に終了したため夕食や入浴などの時間が短くなった。各隊員は急いでご飯を食べ、急いで身体を洗って風呂に入り、点呼や翌日の準備に備えた。
「上郷の交代時間は?」
「うわぁ俺4時半じゃん・・・。十亀は?」
「俺2時半。だから点呼終わったらすぐ寝る」
「了解。今日点呼無いらしいからもう寝ようぜ」
「そうだな」
時間がかなり圧してしまったため21:30に行う点呼は無くなったことで同部屋の十亀・上郷・柴崎らは深夜の【リーパー】の監視交代に備えて21:00には眠りについた。一方で中隊長の黒井も【リーパー】内部から発見した資料に目を通していたため残業となっていた。
「さて、【リーパー】内部で入手した資料でも見てみるか・・・これは!」
黒井中隊長は【デングリーヅ連邦台湾地区に関する情報。外部流出禁止】を禁止と記された資料の1ページから黒塗りで消されていた。
「やはり証拠は隠滅されていたか・・・。流石に向こうも何かしらの手は打っているだろうよ」
「どうでしたか中隊長。何か書かれていましたか?」
「全ページ消されていた。我々に見つかったことを想定していたのだろうな」
「そうでしたか・・・残念ですね」
「あぁ。今日はもう寝るとしよう」
情報を得ることが出来なかったため中隊長らは自室で寝ることにした。翌日も【リーパー】の警戒監視が引き続き行われたが爆弾が爆発するなどの変化は無かった。
10月16日14:00 同地区同駐屯地
16日14時、第296戦闘団本部に第4後方支援集団第9後方支援連隊第1不発弾処理隊が到着し作業を開始した。第1不発弾処理隊は第5普通科戦闘中隊から聞いた転移装置や爆弾の位置・特徴・大きさなどを伝え、活動を開始した。
第1不発弾処理隊が爆弾処理活動中、黒井中隊長らは不測の事態に備えて駐屯地外に出るよう命令した。また、誤作動による転移装置の作動により別世界に転移もしくはデングリーヅ連邦がいる世界に転移した場合に備えて第297戦闘団が駐屯する新北駐屯地で武器や車両の点検・整備を行なった。
「1不処の人たちはプレッシャー半端ないだろうな・・・」
「そうだろうなぁ。俺だったら手が震えてまともに出来ないだろうよ」
新北駐屯地に移動した上郷、柴崎、十亀ら隊員は第1不発弾処理隊の任務が無事に完了するよう祈った。しかし、20時になっても処理完了報告は届かなかったがその30分後に新たな報告が入った。
『1不処より296-5戦中へ。目標の撤去及び不発処理完了。これより【リーパー】内部の不発弾の残弾が無いかどうかの確認作業を実施する』
「296-5戦中より1不処へ。不発弾処理の協力に感謝する」
その後、第1不発弾処理隊は【リーパー】内部にまだ爆弾が残っているかどうかの確認作業があるため第296戦闘団は新北駐屯地で一夜を過ごすことになった。17日の9:00に確認作業を完了したことで第1不発弾処理隊は撤収の準備を進めた。
「改めて第5普通科戦闘中隊は第1不発弾処理隊の行動に感謝します。今度ご飯奢ります」
「ありがとうございます黒井中隊長。では我々は失礼します。また何かありましたらすぐに行きますのでよろしくお願いしますね」
中隊長の黒井と処理隊長の西浦は握手を交わして第1不発弾処理隊は八丈島駐屯地に帰投することになった。異世界オリンピック2029の開会式3日前に問題を解決して良かったと黒井は感じている。
次回もよろしくお願いします!