season2-51 亡命希望者調査報告会
10月9日10:00 日本国北台湾 陸上自衛隊台北駐屯地 会合室
「総理、お待ちしておりました。こちらにどうぞ」
「忙しい中すまないね」
「問題ありません。では早速参りましょう」
加藤総理は陸上自衛隊第1師団第61普通科連隊第296戦闘団が駐屯している北台湾台北市の台北駐屯地を訪問した。デングリーヅ連邦台湾地区の降伏以降、急速に台北の重要施設の整備が行われ、台湾北部には2個普通科連隊6個戦闘団が編成され今に至るのである。防衛大臣直轄部隊となった彼らは北台湾の領土防衛に努めている。また、近くには陸上保安庁台北保安署、海上保安庁台北海上保安署、航空保安庁台北航空基地があり、有事に即応できる体制が整っている。
「お待ちしてました加藤総理、第61普通科連隊第296戦闘団長の眞藤美弥妃と申します。本日は1週間ほど前に行われたアメリカによる亡命希望者・ベルスイ氏の身辺に関する調査を実施したため報告いたします。どうぞ席にお座りください」
「ありがとう」
第296戦闘団長の眞藤美弥妃三等陸佐は加藤総理を席に座らせて米軍側から送られてきた資料に目を通させた。
「まずは基本情報から。ベルスイ氏の本名はチェスカ・ベルスイ。年齢31歳。誕生日は国歴19987月22日。出身はデングリーヅ連邦ハルゲルです。ハルゲルはおそらくデングリーヅ連邦の首都と推定されます」
「ふむ・・・25歳でデングリーヅ連邦陸軍第12機甲軍副団長、3年後には自衛隊でいう一等陸佐に値する階級にまで昇進か。彼は頭が良かったのにも関わらず亡命したというのか。デングリーヅ連邦は惜しい人材を捨てたな」
「その通りです総理。ベルスイ氏は自らの権力を捨ててもデングリーヅ連邦から逃げたかったのでしょう。連邦のトップのライジングという者は一体何者なのでしょうか・・・」
「分からない。いつかライジングと顔を合わせることあるかもしれない。しかし、話が通じるかどうかは別の話だ。強気の姿勢かつ慎重に会話を進めていかなければならないな」
「お願いします。そして次にベルスイ氏は30歳の春に台湾地区の第3代局長に就任しましたが総軍司令のユリーグの圧力、デングリーヅ連邦の政治に不満を抱いていたようです。詳しいことを聞いたようですが彼にとっては「トラウマ」らしく多くのことを聞くことは出来なかったようです」
「「トラウマ」か。内容を聞きたいが当人が拒否するのであれば我々は口出しはしないようにしよう。アメリカ側にも伝えておく。他に伝達事項はあるかな?」
「そういえばデングリーヅ連邦が保持する転移技術に関することに言及してしました」
「ほう。それは興味深い」
加藤総理は日本やアメリカが元の世界に戻れる手段はデングリーヅ連邦がカギを握っていると考えている。
「ベルスイ氏によりますとデングリーヅ連邦は各地の地下にある転移装置を用いて地盤を破壊し、地震を発生して土地・人全てを転移させるようです。場所は連邦軍幹部・政府関係者しか知られていない極秘の場所ですがベルスイ氏は該当しているため教えていただいたようです」
「それでその転移装置というのはどこにあるんだ?」
「この駐屯地の地下にあるようです。どこかに地下に繋がる通路があるのを我々は見落としていたかもしれません」
「仮に見つけたとしても装置を起動した場合、台湾島は別世界に転移するのだろう?起動を解除する方法はあるのか?」
「解除方法はライジングと側近しか知らない超極秘情報であるとベルスイ氏は話していたため連邦本国が転移次第、接触を試みることをお勧めします。何かあったら我々が総理をお守りします」
「ありがとう。まずは装置の捜索を開始せよ。しかし、装置には触れてはならないことを隊員全員に伝えるように」
「了解しました」
「さらに伝達事項はあるか?」
「今の所把握できているものはこれだけです」
「分かった。今日は帰るとする。もうすぐオリンピックの開会式の挨拶の練習もしなければならないからね。何か進展があれば速やかに伝えるように」
「はい!」
その後、加藤総理は第296戦闘団の隊員に見送られながら東京に戻ることになった。また、総理らが帰ったと同時に点呼を行い、装置の捜索・地点把握、装置の接触禁止を命じた。まもなく異世界オリンピックが開催されるとともにベルスイの動向と発言に注目である。
次回もよろしくお願いします!




