season2-54 騎士格闘の美徳
10月23日10:00(日本時間24日2:00)アメリカ合衆国・ロサンゼルス
異世界オリンピックの開幕式から3日が経過し、各国の選手団は熱い戦いを予選から繰り広げている。開会式後の14:00に行われた野球・キックベースでは日本対グレーシス共和国、アメリカ合衆国対武蔵連邦国の試合が行われた。日米スポーツの知識や技術、選手育成に力を入れた各国は互角の戦いを展開した。最終的に日本とアメリカが試合で勝利したものの8-7、10-8など一方的な試合ではなく拮抗し戦いとなった。
野球・キックベース競技と同時刻に開始したバスケ・3対3ではアズール民主国が日本を撃破し、アメリカもヴェルディ連邦共和国に98-96で敗れた。試合後の日本代表監督の城石監督は【大番狂せ(ジャイアントキリング)】と発言した。
夕方に行われた射撃・障害物競技では米兵8名、自衛官10名が参加した。この障害物競技は自身の肉体を限界にまで追い込む競技であり、障害物を乗り越えながら目標に対して射撃を行うルールとなっている。試合展開はアメリカ側が優勢であったが試合後半になるにつれて日本、武蔵連邦国、アコースティ王国が得点を縮めた。
さらに、海軍力を競うことを目的としてハワイ沖にて18カ国が参加するマリーンファイトが行われた。期間は初日の20日から29日が予選、31日と8月1日が準決勝、8月2日が決勝戦となっている。日本からは護衛艦「あたご」「みょうこう」が参加した。ルールとしては各国艦艇が艦砲・対艦・対空・対潜の4部門に分けて得点を競う競技である。得点方法は国際同盟会軍司令官が審査員として各国艦艇の戦闘指揮所にて審査を行い、隊員の連携とオリンピック運営側と国際同盟海軍司令部側が課題の指示に従い行動して順位を決める。
同日19:00からは体操と競泳が開始された。日本やアメリカからは多くの選手が参加したが長時間の練習が必要な両競技に各国は選手の派遣を渋った。しかし、カリャム連邦はそれぞれ4名の選手を派遣し、競泳の自由形では予選3位に入るなど良いスタートを切った。
21日、22日も10競技以上が開始され日本やアメリカが今まで積み上げてきた実力をあらゆる競技で示すがそれに食らいつくかのように各国の選手たちは白熱した試合展開を繰り広げた。
そしてこの日、グレーシス共和国の国技である騎士格闘が開始となった。国技であるため競技紹介は共和国選手権にも出場し好成績も収めたことがあるジェシー総統が解説した。
「グレーシス共和国総統のジェシーです。本日より我が国の国技である騎士格闘が行われます。皆様には安全に、そして楽しく競い合って頂きたいためご存知かもしれませんが勘違いを防ぐため改めて【騎士格闘競技規則】を説明いたします。」
ジェシー総統はグレーシス共和国で長く続いている騎士格闘の規則を説明した。説明は以下の通りである。
【騎士格闘競技綱領】
●前文 当綱領は我が国の国技である騎士格闘競技を安全に運用するためのものである。騎士格闘は我が国の国技かつ伝統的なものであるため厳格に行われる。
●使用可能用具
・防具 甲冑もしくはヘルメット、胸当て、腕当て、脚部防具、手袋
※怪我防止のため厚さ10cm以下の防具は使用不可
・使用武器 長剣 短剣(安全性を考慮)
●競技時間 3ラウンド9分 延長2分(引き分けなし、延長の場合は再試合)
●勝利条件(いずれかの一つでも当てはまれば勝利だが少数得点)
①相手側による「降参」宣言 ※「降参」宣言後の攻撃は禁止)3点
②防具に命中でポイント獲得(頭部:10点 腹部:8点 脚部:6点)
●失格・退場基準
・審判が危険と判断した場合、「失格」もしくは「退場」を宣告することができる
・相手の防具を故意に外す行為
・試合中の卑怯行為(相手武器の取り上げ、相手を蹴る・殴る、フィールド外へ脱出など)
・ルールに違反した武器・防具の使用
・試合中の対戦相手に対する侮辱
・勝利後の過度な感情表現(雄叫びなど)
●審判
・試合フィールド上に総得点を計測する審判を2名、危険の有無を判断する審判の2名を配置する
以上の事柄をジェシー総統は再度選手らに伝達した他、騎士格闘について知らない観客に対して分かりやすく解説した。
「この競技は奥の深い競技であります。武器を使うため危険と隣り合わせですが安全に考慮して競技を進行して頂きたいと考えております。騎士格闘は奥の深い競技です。本日初めて騎士格闘を知る人、ご存知の方も選手たちの熱い戦いに注目していただければ幸いです。以上で私からの説明は以上です」
ジェシー総統の解説と注意事項が話された後、試合が開始した。怪我防止のため分厚い装備で競技を行うためグレーシス共和国の選手以外は動きづらそうであった。7名の日本選手は23日の3試合目と8試合目に2名、24日の14試合目に1名、25日の22試合目に1名、26日の29試合目に2名、27日目の32試合目に1名が出場する。準決勝は28日、決勝が29日の午前、同日夕方に団体予選と準決勝、決勝が騎士格闘競技最終日の30日に行われ終了となる。
開幕3日目にして激戦を繰り広げる異世界オリンピック。選手たちの熱い戦いを繰り広げている裏では各会場の警備員たちも選手・観客の生命・財産を守るために警戒している。
次回もよろしくお願いします!




