season2-43 澎湖県攻略戦 Ⅷ -内通者 終-
9月10日16:40 デングリーヅ連邦台湾地区・月潭村、月眉村上空 V-22 オスプレイ機内
「こちら第603歩兵連隊のブランドン。16:30に亡命希望者の身柄をオスプレイ3番機に回収完了。これより台南空軍基地へ移送する」
『台南空軍基地司令部より第603歩兵連隊へ。目標は当空軍基地へ移送後、グアムにて身体検査を行った後、合衆国本土にて亡命手続きを行う予定である。そして引き続き輸送中も対空・対地警戒を厳と成せ』
「ブランドンより了解」
1機28人を搭乗させることが出来るようになったオスプレイは殉職した55名も乗せて10機体制で離陸した。亡命希望者・ベルスイは3番機に搭乗後、防衛局より持参したM1911拳銃、SIG SAUER P230などといった武器は米兵によって回収されたことにより武装解除された。
「目標の武装解除が完了しました。この拳銃は・・・台湾とイギリスの武器か・・・。さて、ベルスイ。君は地球世界で何を見て来た?我々の友好国は君たちの国がどのようにして弄んだのかね?」
「よく覚えていな・・・」
「しっかりと話さないと君はここから降りてもらう。良いね?君には黙秘権があるが今の立場を弁えた上で話してもらいたい。さぁ、話してくれ」
「分かりました。話せる範囲で話します。我々は4年前、アメリカ合衆国や日本国がいたという地球世界に転移し各国に対して服従を呼びかけたが彼らは従わず抵抗という選択を選んだ。この時私は防衛局副長であったが武力による屈服を指示するライジングを嫌いになって来た。【この人は命を何だと思っているんだ】と」
「(なるほど・・・連邦政府内にもまだ理性や常識を理解している者はいたのか・・・。てっきり全員が洗脳されているのかと思った)」
「質問だがデングリーヅ連邦に住むすべての人々はライジングとかいう野郎の思想に洗脳されていると聞いたがベルスイ、君は違うのか?」
「我々政府関係者には洗脳紛いのようなことはされません。ライジングは自信の思想などを押し付けなくても服従させれると考えているようです。私は最初はそのように考えていましたが・・・徐々に彼の政策や方針転換が気に食わず連邦からの脱出という選択をしました」
「ふむ・・・。君以外で連邦に反抗もしくは嫌悪感を示している者はこれまでいたか?」
「防衛局員では無いのですがいました。ですが知らない間に姿を消えていました。おそらく政府によって“流された”のかと思われます」
「“流された”?粛清のようなものか?」
「そのように考えていただければ」
「分かった。質問は今日はここまでにしておこう。到着まで時間がかかるため少し休みたまえ」
「はい」
ブランドンはベルスイにデングリーヅ連邦の内情に関して気になったことを聞いた。大方の内情は把握出来たが詳細は本国で明らかになるだろう。CIA(中央情報局)の捜査によって今後のデングリーヅ連邦への対応が変わってくる。
同日同刻 台湾地区・嘉義市 連邦軍総軍司令部 総軍司令室
「総軍司令!敵が航空機を用いて脱出を試みています!撃墜命令を!」
「ベルスイが乗っている機体含めて全機撃ち落とせ!1機たりとも逃すな!敵機の数は?」
「10機です!」
「10機ならすぐ撃ち落とせるだろう!今すぐ取り掛かれ!敵の現在地は!」
「敵機は現在、嘉義市北西の月潭村、月眉村上空を飛行中。17:00丁度に嘉義付近を通過します!」
「了解。携行型のミサイルを装備し、敵機を撃ち落とせ!」
「了解いたしました!」
ユリーグ総軍司令は「裏切り者」の始末と司令部防衛の忙しさにイライラしながら部下に命令した。オスプレイ撃墜のために使用される武器はデングリーヅ連邦製のRS-1206 携行型地対空ミサイル、旧イギリス陸軍製のスターストリーク LMLの使用を命じた。
「ここで奴を始末出来なければ・・・!」
焦りを見せたユリーグ総軍司令はオスプレイの撃墜報告が来ることを祈った。すると外から航空機が迫ってくる音が聞こえて来た。しかし、その音はオスプレイがやってくる北側からでなく、台南などの南側からであったため嫌な予感をすぐさま感じ取った。
同日17:00 台湾地区太保市過溝里 連邦陸軍第88対空連隊
「敵航空機10機の接近を確認。総員、敵機を撃墜せよ!」
「了解!」
第88対空連隊はオスプレイ撃墜のため太保市過溝里に部隊を展開し、RS-1206 携行型地対空ミサイルとスターストリーク LMLの発射準備を完了し、照準をオスプレイがやってくる方角に定めた。
「見えた・・・!発射用意・・・・撃て!1機も撃ち落とすな!」
発射した地対空ミサイルはオスプレイの方角へ飛んで行った。しかし、AN/ALE-47のチャフを撒いたことでオスプレイの撃墜に失敗した。
「敵機撃墜に失敗!総員、再装填を行い、二回目の攻撃を開始せよ!」
「連隊長!南方より新たな航空機を確認!その数、およそ60!」
「今度は何だ!60だと!?」
第88対空連隊によるオスプレイへの二度目の攻撃を行う直前、台南方面から米軍機かと思われる航空機の飛来を確認した。飛来して来たのは米陸軍AH-6攻撃ヘリコプターが20機、AH-7S無人攻撃ヘリコプターが25機、AH-64攻撃ヘリコプターが15機、CH-47輸送機が10機、そして後方より空挺兵が乗っていると思われるC-130、C-17輸送機が近づいてくるのを確認した。
「手の空いている者は南方から接近の敵機への攻撃を行え!急げ!死ぬぞ!」
「こっちも厳しいです!」
モタモタしている間に米軍機が近づきAH-6、AH-7Sより20mm6連装ガトリング砲が、AH-64よりM230 30mmチェーンガンによる掃討射撃が行われた。また、10機のCH-47 チヌークより降りて来た米兵400名が地上より攻撃を行い、太保市は米軍によって包囲された。
「そこのお前!武器を降ろし、手を挙げてその場で座れ!君らは我々に降伏した。9月10日17:15、デングリーヅ連邦兵の身柄を拘束確認。諸君らの所属と名前を答えよ」
「デングリーヅ連邦陸軍第88対空連隊長のチェア・マフルだ。負けを認めよう」
「良い心がけだ。まもなくこの地区は我が国と日本によって解放される。諸君らは捕虜として我が国に移送される。武装解除を行い、彼らに食事を提供せよ」
「イエッサー!」
チェア・マフルらは捕虜として身柄を拘束された。一方、ベルスイが搭乗しているオスプレイの撃墜に失敗により、上空を通り過ぎられてしまった。護衛機と思われる航空機と合流し、連邦側からしてみれば逃げられてしまった。
そして、捕虜拘束と同時に過溝里と太保市の制圧を完了した米軍は総軍司令部への攻撃と占領に関しては第330空挺旅団第601・第602歩兵連隊降下完了後に話し合われる予定である。上空では攻撃ヘリコプターが偵察を行い、地上では米兵による嘉義市攻略が間近となっている。ユリーグ総軍司令にとって苦渋の決断が迫られる状況となった。
台湾解放編も終盤に差し掛かります!次回もよろしくお願いします!




