season2-35 内通者 2/澎湖艦隊
9月7日14:30 日本国・首相官邸 国家安全保障戦略会議室
「総理、台湾方面より報告です。米軍によりますとまもなく内通者の身柄を保護する予定らしいです。そして現在、自衛隊は台湾地区台中市へ前進中。明日夕方には現着しているものと思われます」
「台湾解放任務は順調に進んでいるというわけだ?良い事だ。内通者がいる事に少し引っ掛かることはあるが・・・。それに我々日米両国民が安全に生活するためには脅威の排除が必須だ。デングリーヅ連邦側から何か要請は来ていないか?」
「今のところ来ていないです。ですが9月1日に破壊した発電所が復旧しつつあるかと思われます。そのような場合、ミサイル発射を行われる可能性があります」
「なるほど・・・。そのミサイルなどを制御・発射の動力源である発電所はどこにある?」
「こちらが現状の台湾で展開中の部隊、各軍事施設との位置関係です」
防衛大臣の鈴木は加藤総理に開戦から1週間ほど経過した7日時点での台湾島での勢力図を色分けして総理に提示した。青色がアメリカ、赤色が日本、黄色がデングリーヅ連邦で表されている。青色のアメリカは高雄市がある屏東県全域と台東県南部、台南市の一部に侵入しようとしている。赤色の日本は台北市・新北市・桃園市全域、宜蘭県、新竹県北部、花蓮県を自衛隊は後方支援の米軍部隊と共に攻略が完了しており、台中市方面へ前進中である。徐々に陸自部隊も到着しつつあるため台湾解放も早期に終わらせそうである。
一方の黄色で塗られたデングリーヅ連邦は改めて色分けすると窮地に追い込まれている。7日時点で主要地点で台中市、総軍司令部がいる嘉義市、防衛ラインを張っている台東市・台南市、そしてまだ攻撃を受けていない澎湖県である。澎湖県には第57連邦艦隊馬公海軍基地(旧馬公第三漁港)、第132航空軍が配備されている澎湖空軍基地(旧澎湖機場)、そして澎湖諸島には8個の陸軍部隊が存在している。また、ミサイル基地があるものの整備中のこともあり発射は不可能である。
「ふむ・・・この地図を見るにデングリーヅ連邦軍は劣勢な状況であると改めて分かる。彼らは指揮統制が出来ていないのか?それとも兵士の練度が低いのだろうか?」
「自衛隊が保護した捕虜からの調査によるとデングリーヅ連邦軍は【最高主席に対する強制的軍役かつ絶対的信仰】と恐怖感を覚える発言をしています。やはり相手は危険な国で間違いありません」
「一概に危険というのもどうかと思うが・・・何か連邦側に魅力は無いのか?一つぐらいはあっても良いと思うが・・・」
「ですよね」
「それで気になるのは内通者がいるということだが・・・連邦側に裏切り者がいるということか?そうなると我々は接触を図る必要がある。岩田くん、アメリカ側に内通者との接触許可を要請するように。時間はかかるかもしれないが頼むよ」
「了解しました総理。大島さんにもお伝えします」
加藤総理は岩田外相にデングリーヅ連邦側の内通者との接触を試みるよう伝えた。
「分かった。そして現場の自衛官には休める時に休むよう伝えなさい」
「了解です」
その後、1時間ほどでNSCは終了した。今回のNSCでは台湾島内で起きている勢力図の確認、内通者との接触、長期未来防衛力大綱の途中経過の確認を行い会議を終了した。長期未来防衛力大綱は2060年までの自衛隊の編成、装備、人員などを記した資料である。新規の戦車、戦闘機、艦船の旧式から新式への切り替えなどに関する費用についても話し合われた。次回のNSCは9月27日に開催される予定である。
同日16:00 デングリーヅ連邦台湾地区・澎湖県 馬公海軍基地
旧馬公第三漁港を海軍基地として拡張とした馬公海軍基地では50隻の艦艇が出航準備を進めていた。馬公海軍基地に配備されている第57連邦艦隊から空母2隻、ミサイル駆逐艦28隻、輸送補給艦10隻、10隻の潜水艦が出港した。艦隊司令のバグラーは各艦に指示を出した。
「「スーベル」艦長兼当艦隊司令のバグラーである。これより我々は我が国の土地を荒らす蛮族どもを排除する任務に就く。これは非常に危険な任務である。一度のミスで多くの仲間が死ぬこともある。その覚悟が出来るものは残り、恐れているものは今すぐに降りるように!」
『「レイバン」より了解』
連邦海軍空母「スーベル」からの確認に残る49隻の艦艇から「了解」を確認した。そして第57連邦艦隊の目標と目的台湾周辺に展開している海上自衛隊とアメリカ海軍の撃破である。台湾東部海域の制海権を失い、台湾西部の制海権も失いつつある状況に憤りをバグラーは感じていたのである。
「艦司令、高雄近海に「US」を確認。アメリカのものかと思われます」
「了解。全艦、高雄周辺の制海権を奪取するため目標へ進発せよ!」
空母「スーベル」艦艇識別モードには高雄市の旗津區にアメリカ海軍が停泊していることを確認した。ミサイル駆逐艦「ラージャ」以下27隻から1発ずつ対艦ミサイルを発射した。第57連邦艦隊に配備されているすべての艦艇は旧イギリス海軍と旧キューバ海軍の艦艇を整備・改良・改名したものである。
「この28発のミサイルで相手はどうなるか興味深い。レーダーから目を離さないように」
「当艦隊より発射のミサイル、残り20分程度で目標へ到達します」
「了解。我々も現場海域へ向かう」
50隻の第57連邦艦隊はアメリカ海軍の撃破に向けて動き出した。また、28発のミサイルは米海軍第5艦隊に牙を向いた。
同日18:00 デングリーヅ連邦台湾地区嘉義市 総軍司令部地下
「総軍司令、高雄市にて動きがありました。台南方面へ侵攻中の部隊と高雄市より北上する部隊が確認されました。おそらくこちらに向かっているものかと思われます」
「すぐに兵士を向かわせろ。どんな武器を使ってでも敵を排除せよ!」
「了解!」
内通者がいるという事にまだ気づかないユリーグ総軍司令は米軍部隊と交戦するよう命じた。彼らがいつ裏切る者がいる事に気がつくのか注目だ。
次回もよろしくお願いします!




