season2-33 デングリーヅ連邦台湾地区総軍司令部 -嘉義-
9月7日10:00 嘉義市・デングリーヅ連邦台湾地区総軍司令部
デングリーヅ連邦の陸海空軍を統括する地区総軍司令部は台湾南西部の嘉義市の嘉義空軍基地(旧嘉義空港)に隣接している。先週まで高雄市に総司令部を設置していたものの、米軍の上陸により基地機能を嘉義市に移転させたのである。
高雄市において米軍上陸によりデングリーヅ連邦軍は敗戦続きであった。戦車・戦闘機・駆逐艦を駆使しても米軍の攻勢には耐えられなかった。この7日間、ユリーグ総軍司令官は敗戦報告を聞き続け、怒りを露わにした。
「ユリーグ総軍司令、ここまでの報告をさせていただきます」
「うむ。話は聞いている。日本やアメリカに負けているのであろう?」
「・・・・」
「ふざけているのか!この報告をライジング最高主席が耳にしたらと思うと・・・恥を知れ!」
「大変すみません!我々でも何とかしようと必死になのですが・・・敵の士気、武器、練度が非常に高く・・・」
「言い訳するな。我が軍の全兵士はライジング最高主席に忠誠を誓った精鋭である。決して負けることはないだろう」
デングリーヅ連邦では軍入隊後にライジング最高主席に顔見せする必要がある。この顔見せは任意ではなく強制なのである。そのためやる気のある者、無い者で二分しているのである。ユリーグ総軍司令はこの地区の兵士の士気に関して疑問を抱いた。
「くそ・・・!ここの地区を管轄する兵士はやる気が無いのか!」
ベルスイ地区防衛局長官は黙ってしまった。すると新たな報告が入ってきた。
「報告します。花蓮に展開していた連邦艦隊が壊滅。2隻が敵の手に・・・」
「どうなっているんだ・・・?そもそも日本やアメリカの士気を高めさせたのはどいつだ?国際同盟での会合からに違いない。会合に出席した者をここに呼べ」
「承知しました!」
1時間後、8月14日のヴェルディ連邦共和国の国際同盟緊急総会に出席したシューラー・べネックが総軍司令室に入室して来た。べネックは嘉義市北部の斗六市でゆっくり過ごしていたところを呼び出されたため普段着であった。
「君かね?国際同盟の緊急総会で出席したのは」
「私ですが何か用ですか?家でまだ寝たいのですが・・・」
「調子に乗るな!家に帰って寝たいだと?甘えるな!君は国際同盟の緊急総会で日本やアメリカを煽るような発言をしたのであろう?あれほど言ったのをもう忘れたのか?」
「何て言いましたっけ?」
べネックはユリーグ総軍司令に煽るような態度で接した。ユリーグ総軍司令は国際同盟緊急総会前日の13日、べネックに対して以下のように話していた、
《日本とアメリカの接し方には気をつけるように。しかし、弱気ではなく強気で行け。くれぐれも相手を逆上させるような発言はしないように》
《了解しました総軍司令》
と注意したのにも関わらず日本とアメリカを逆上させる発言をしたという報告をべネックの口から初めて知った。
「あれほど言ったのに・・・強気なのは良いが過剰な発言が目立っている。君を無期限の謹慎とし、本連邦到着後、最高主席様の意向に従い、君は処分とする」
「分かりました」
べネックはすんなりと受け入れていた。どうしてこのような者に任せていたのだろうとユリーグ総軍司令は後悔していた。頭を抱えていると聞きたくなかった報告が入って来た。
「報告です・・・高雄、花蓮の連邦軍の投降が確認されました。おそらく現場の兵士は死ぬより敵に捕まった方がマシだと考えたのかもしれません」
「マジかよ・・・この国の兵士は腰抜けしかいないのか!いい加減にしろ!ちゃんと兵士の訓練やリフレッシュはしているんだろうな!?」
「してますよ!」
「何だその言い様は。逆ギレもほどほどにしろ。良いか!ライジング最高主席は敗北という言葉が大嫌いだ!例え兵士が足りなくなろうとも我々も武器を持って戦うぞ!良いな?分かったか!」
「はい・・・!」
ユリーグ総軍司令は荒げた声で総軍司令室にいる者に伝えた。また、高雄・花蓮の陥落に関する詳しい情報を聞いた。
「で、状況はどうなってるんだ?」
「先ほど、高雄市がアメリカ合衆国軍の機甲・歩兵部隊によって陥落、花蓮市に関しては日本国海軍による連邦海軍の無力化と台北を占領した海兵部隊と合流し同市を占拠したものと思われます。やはり発電所を潰される前に敵全基地をミサイルで叩くべきでした・・・」
「高雄や花蓮までが陥落した以上、台東市・台南市・台中市を我々の最終防衛ラインとする。小さい島というハンデはあるがライジング最高主席のためにも努力しなければならない。各員、今まで以上の努力をせよ!やる気のないやつは出てけ!」
ユリーグ総軍司令は今後の作戦の展開などを強めの口調で伝えた。それが後に亡命者が現れる者がいることをまだ彼は知らないのである。
すると、空襲を告げるアラートが総軍司令部全体に鳴り響いた。なぜここがバレたのかユリーグは感じ取った。
「(なぜだ・・・?ここに移転してからまだ時間は経っていないはず?捕虜がいたとしてもここの位置は知らされていない。もしやこの中に内通者が・・・?いや今はそんなこと考えている暇はない!)総員、戦闘体制!司令部防衛を徹底せよ!敵機を1匹たりとも逃すな!」
「了解!」
「敵軍機は無人機!有人ではありません!」
「無人だろうが有人であろうが撃ち落とせ!基地に近づけさせるな!」
ユリーグ総軍司令は血相を変えて部下に指示を出した。内通者の炙り出し、現在の戦闘状況、今後の日米との関係について考えながらであったため総軍司令部では期待に応えられるよう怒号が響き渡っていた。
体調崩してたため投稿できませんでした!体調には皆さん気をつけてください!次回もよろしくお願いします!




