season2-8 富士の衝動
3月8日 17:10 日本国・首相官邸
「会議の途中ですが気象庁より報告があります!」
首相官邸の一室にて加藤総理は定例の国家安全保障会議を開催していた途中で官房長官である篠原より気象庁からの報告を総理に伝達した。
「噴火レベルが上昇している富士山より新たな報告です。気象庁によりますと富士山が小規模噴火を確認しました。幸い周辺住民は避難しているため人的被害の心配はございません」
「そうか・・・この令和の時代に富士山が噴火するとは・・・大変な時代になったな」
富士山の小規模から大規模の噴火が起きれば1707年の宝永大噴火以来実に322年ぶりとなる。
「自衛隊の動きはどうなっている?」
「非常事態に備えてマニュアルを作成しておいて正解でした。まず、住民の避難誘導完了後に第1師団は現場待機と緊急退避の2部隊に分かれている状況です。山梨・静岡・長野などに駐屯中の陸海空自衛隊に対しては県外退避を命じました」
「了解した。それと不要普及の外出要請はしっかり守られているか?」
「こちらが本日16:00、今より1時間ほど前ですね。新宿・表参道・新千葉では複数人が歩いているのは確認されていますが警戒しなければなりません」
「もしもの時は地下鉄もしくは頑丈な建物に避難せよと伝えよ」
「わかりました総理」
加藤総理は篠原官房長官らに指示を伝えた後に会議を再開した。再開から30分後、突如としてスマホに緊急速報を知らせるアラームが鳴り響いたと同時に強い揺れを感じた。アラームの内容を見てみるとその内容は地震・噴火情報であった。
【緊急地震速報 山梨県で地震 強い揺れに警戒 気象庁】
【地震情報 山梨県で震度6弱 マグニチュード7.4 津波の心配なし 気象庁】
【噴火情報 富士山噴火を確認 直ちに避難 気象庁】
と表示された。各地の震度は以下の通りとなっている。
震度6弱 静岡県富士宮市 山梨県甲府市 山中湖村
震度5強 静岡県 長野県
震度5弱 神奈川県 東京多摩地方 埼玉県秩父地方 群馬県南部
震度4 東京23区 埼玉県 千葉県
震度3 茨城県 群馬県 栃木県
震度2 岐阜県 愛知県 新潟県
震度1 福島県
という震度分布図となった。地震による津波の影響は無かったものの富士山の中規模な噴火が確認された。中規模噴火により火山灰の降灰の可能性があるため加藤総理は会議を中止し、官邸対策室を地下に設置し情報収集に当たった。
「まさかこの目で富士山の噴火を目撃するとはな・・・」
モニターに映し出されたのは富士宮市方面から捉えた富士山であった。捉えられていた富士山からは黒煙が上がっており、雨のように火山灰が降り注いだ。
「一時間後に緊急会見を行う。準備を進めてくれ」
「了解しました。それと気象庁の会見が間も無く始まります」
「早いな・・・」
そして富士山の噴火が確認されてから20分後の18:00、気象庁はライブ配信形式で記者会見を実施した。会見内容は富士山噴火による地震の発生のメカニズム、火山灰の降灰量などである。また、会見場には記者陣が入れないためzoom機能によるオンライン会見という形式となった。
「今回の地震による被害はまだ確認されていませんが富士山の噴火による火山灰の降灰による健康被害を避けるため、外出禁止を強く要請します。そして、火山灰の降灰量は山梨県と静岡県で40cm、東京23区だけでも10cmの降灰は予想しています。予想より遥かに上回る降灰の可能性もあるため注意が必要です。そして今後2日〜1週間程度はマグニチュード7、最大震度6弱程度の地震に注意してください。以上です。何か質問がある方はミュートとカメラをオンにして質問してください」
「日本東部新聞の山尾です。今回の地震と噴火による被害はどれほどのものになるのでしょうか」
「被害を予想することは不可能です。それだけです。他に何かありますか?」
しばらく待っているも記者陣からの質問は2人のみであった。そのため、気象庁は会見を終了した。終了後から1時間後の19:00、今度は首相官邸にて加藤総理による会見を実施した。
「zoomでご覧の皆様、この度は緊急事態の中ご覧いただき誠にありがとうございます。今回の地震と噴火により、首都機能の喪失が考えられるため一部の機能を大阪・名古屋に分散させる予定です。また、自衛隊に対しては必要かつあらゆる手段を用いて国民保護の任務を間も無く開始します。何か質問がある方はいらっしゃいますか?」
加藤総理は質問を投げかけた。
「関東onlineの岡本です。加藤総理に質問です。この地震と噴火は今後の日本にどのような影響を与えるのでしょうか」
「私は富士山でも地震でもないので今話せることはありません。ですが最優先すべきことは身の安全を確保してください。命がある限り、何度でも立ち上がることができます。どうか協力のほどよろしくお願いします」
1人目の記者の質問が終わり、その後も10人から質問を受けた。10人目の質疑応答が終了後、加藤総理の会見は終了した。
「総理、オンライン記者会見お疲れ様です。そして現在都内には8cmの降灰を観測しています。今の所人的被害は出ていないようです。外出禁止令を出しておいて正解でしたね」
「あぁ、大変なのはこれからだ。自衛隊・保安隊と緊密な行動をしていかなければならない。精一杯やっていくぞ」
「了解です総理」
その後、用意された部屋に戻り窓の外を見ると灰色の世界が広がっていた。
「(電柱の地中下を完了しておいて良かった・・・)」
電柱の地中下を進めたことにより、電柱被害にを回避することに成功した加藤総理は安堵した。明日より激務が始まるためこの日は布団に入り、眠りについた。
次回もよろしくお願いします!




