season2-3 WNR -WORLD NAVY RIMPAC-
1月16日 8:00 アメリカ合衆国・ハワイ近海 海上自衛隊第14護衛艦隊「によど」
「目標補足、まもなく撃墜射程圏内に入ります」
「了解。各艦、対空戦闘用意」
「対空戦闘!デコイ発射始め!一発も撃ち落とすなよ!?」
「はっ!」
護衛艦「によど」から発射されたMk 36は撃墜目標に対して攻撃を試みた。攻撃の結果、対象は全弾撃墜ということになった。
『全弾撃墜確認!演習終了、演習終了!今後の武器使用は許可しない!』
この日、ハワイでは国際同盟全加盟国強制参加による国際海軍合同演習(world navy rimpac)が開催された。開催期間は16日〜20日の4日間となっている。この訓練を行う目的は旧ボルドー国同様の武力を保持した国家の出現・対抗に備えるため国際同盟一丸となるように連携を強化していくことを目的としている。
日本からは第14護衛艦隊・第18護衛艦隊・第3潜水艦隊、米軍からは第5艦隊が参加するなど全艦合わせて120隻が参加する大規模な演習となった。しかし、日本側から国内で小規模から中規模の地震が多発しているため警戒を怠らないようにするため第14護衛艦隊からは「によど」・「きよもと」、第18護衛艦隊から「すんぷ」、「じょうえつ」、第3潜水艦隊から「かみかぜ」の5隻が参加した。
演習日程は16日が対空戦闘訓練、17日に遠距離から目標を破壊する演習、18日に潜水艦主体の演習、19日に実戦を行い、最終日となる20日に交流会を行い親睦を深めて終了となっている。
「これより国際同盟全加盟国による海軍合同演習を開始する。我々は一丸となって連携を強めていかなければならない!それを諸君らの心に留めておいて欲しい!有事の際に役に立って来るだろう!演習期間は本日より20日の4日間とする。そして、国内事情により一部参加となった日本に理解を示して欲しい。以上だ!この4日間を有意義なものにしようではないか!」
「イエッサー!」
アメリカ海軍第5艦隊「エンタープライズ」艦長・グリンバースは演習参加員に訓示を表明した。グリンバースは2027年まで第3艦隊「エイブラハム・リンカーン」艦長を歴任している経歴を持つ。
日本の対空戦闘演習の順番が終わり、各員休憩中に早川一等海佐は報告を受けた。
「早川艦隊司令、函館地方総監より打電。北海道で地震があったそうです」
「震度は?」
「5中です」
「結構大きいな。引き続き情報収集に当たるように」
「了解しました」
震度5中というのは日本転移後に気象庁が追加した震度階級である。震度6の際、「中」が追加されたことで地震の規模が細かくわかりやすくなった。
「それにしても最近地震が多いのは何故でしょうかね」
「今は集中する時間だ。地震が多いということは気になるのは分かるが自然には我々は抗えないんだ。分かったら速やかに持ち場に戻るように」
「はっ!」
海上自衛隊の対空戦闘演習が終了後、アメリカ、グレーシス共和国、アズール民主国の順番で1日目の演習はスムーズに進んで行った。加盟国最後の順番となったペモルク王国海軍の演習が20:30に終了し、1日目を終えた。各国海軍が演習中の間は各々に自由時間が与えられたためトレーニングをする者や趣味に時間を費やす者で溢れかえった。
演習2日目、この日は天候は快晴と良かったものの波が高く破壊目標に対する照準を定めるのが難しかった。
「総員、波を恐れるな。評価点100点を目指すために君たちは波と一つにならなければこの困難を乗り越えることは不可能だ。砲雷長、慎重かつ正確かつ迅速な判断で目標を攻撃せよ!」
「了解!照準射撃管制!攻撃目標へSSM-2を使用!射てー!」
護衛艦「によど」、「すんぷ」から遠距離に設置された破壊目標とする廃艦へ向けて17艦対艦誘導弾を発射した。放たれたSSM-2は評価100点とされる目標の破壊に成功した。結果を待っている間、早川は総括していた。
「我々は100点を目標としている。結果が98点や99点だとしても満足するな。良いな?」
「はい!」
『海上自衛隊護衛艦「によど」、「すんぷ」へ遠距離攻撃演習の結果を報告する。以上の2隻に対しては99点を与える。100点まで残り1点と惜しいところであるが今後の精進に期待している」
「了解」
通信終了後、「によど」の早川は再度振り返りをしていた。
「各員へ告ぐ。今回100点を取ることは出来なかったが今後に生きるものであった。今日は以上で終了、明日は潜水艦主体の演習であるためオフだが気を抜かないように!」
早川は「によど」と「すんぴ」の乗組員に対して激励の言葉を出した。残り1点と惜しかったが次回の開催でのリベンジを誓った。
この日の遠距離攻撃演習では厳しい評価をされたため100点を取った国はいなかった。しかし、どこの国もレベルは高かったため最低点でも79点だった。
3日目、潜水艦のみで行われる演習が開始した。海上自衛隊からは潜水艦「かみかぜ」が参加した。この演習では魚雷戦を中心とした演習を行なっていく。海中を主戦場とする彼らにとって潜水艦は家でもある。日本の順番は15:00からとなっている。
「高橋艦長、魚雷戦開始しますか?」
「うむ。1番管魚雷戦用意!」
「魚雷戦用意完了!いつでも行けます!」
「発射!」
各国の潜水艦が攻撃する目標は国際同盟海軍が発射した対潜ミサイルである。防衛側が発射できるミサイルは2発までとなっているため正確な距離を予測することが必要となってくる。
「目標に着弾まで10秒!9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・撃破!第2弾来ます!」
「四番管魚雷戦用意!射て!」
2発目が発射され、破壊目標とするミサイルへ命中した。命中後、結果を待った。
『潜水艦「かみかぜ」へ結果報告。今回の演習は100点を与える。しかし、100点であったとしても気を抜かないよう気をつけるように!』
「了解!」
海上自衛隊の潜水艦は世界屈指の能力を持っているため100点をマークするのには納得が行く。この日の潜水艦演習ではアメリカとエルヴィス民主主義共和国が100点を叩き出した。実践さながらの演習であったため緊張感ある演習となった。
22:00に全演習が終了し、演習司令部にてワジェード司令の訓示があった。
「諸君、この3日間は有意義なものになったに違いない。しかし、まだ親睦を深めれていない国もある。そのため最終日となる明日は午前に全艦参加の実弾演習、午後に親睦を深める遊びをしようと思う。そのため、万全のコンディションで臨む必要があるため速やかに睡眠を取るように!以上だ!これにて解散する!」
解散後、宿舎へと戻り演習参加員は早めに眠った。
翌日、10:00に潜水艦を含めた全艦艇による実弾射撃演習を行なった。目標は国際同盟軍が定めたミサイルを各艦一発は撃墜するという内容である。
「(壮観だな・・・これだけの数が揃えば旧ボルドー国以上の力を持った国が現れたとしても我々の力が集えば負けることはないだろうな・・・)」
などと「によど」艦長の早川はそのように考えながら演習の行方を見守った。100発以上の目標ミサイルを撃墜後、基地司令部へ戻り親睦を深める会となった。
4日間で親睦を深められた者や深められなかった者もいたことからこの親睦会は有効であった。午前の演習が少々時間がかかってしまったことにより18:00となってしまったため予定変更で飲み会的なものになった。
飲み会中、護衛艦「によど」や「すんぷ」、「じょうえつ」、潜水艦「かみかぜ」の海上自衛隊員は格好の乗組員とお酒を飲み交わした。海自隊員は緊急事態が発生した時に任務に支障をきたさない程度に飲んだ。そのため酔っ払う者はいなかった。
飲み会開始から4時間後、ワジェード司令は締めの挨拶をした。
「これにて全ての演習日程を終了とする。全員にとって何度も言えるが有意義なものになったに違いない。この経験を今後に活かしてもらいたい。以上!食べ過ぎ飲み過ぎに気をつけて帰るように!また会えるのを楽しみにしている!」
このようにして国際海軍合同演習(WNR)が終了し、第14・18護衛艦隊、第3潜水艦隊の各艦は翌日の日本帰国に備えて睡眠を取ることにした。しかし、日本の地下では地震の足音が迫っていた。
次回もよろしくお願いします!




