24-29 勝者と敗者
3/16 15:00 スプール共和国西部管区地下拠点 アメリカ軍第5軍団第12歩兵師団作戦本部
「団長、偵察隊40名が敵拠点入り口を発見しました。突入させますか?」
「彼らにはその場で待機と警戒を命じる。これより第7機甲師団と共に突入を行い、電撃的に占拠する!まもなく作戦を開始する!」
「イエッサー!!」
すると同時に司令に偵察隊から通信が入った。
『第1偵察中隊より報告。入り口付近で待機中、外部に出てきた敵兵の身柄を確保した。一旦帰投し、身柄を司令部へ明け渡す』
「了解。怪我人はいるか?」
「確認されていません」
「分かった。各員、偵察隊の帰投完了までその場で待機!いつでも出撃できるようにしておくように!」
その後、30分程度で帰投した偵察隊は捕虜1名を司令部に明け渡した。彼の表情は悲壮感を漂わせており、地下拠点の環境の悪さ・戦況の劣勢が見受けられる。師団長のマーティンは彼に質問を投げかけた。
「作戦開始の前に少しだけ時間をくれるかい?」
「・・・構いません・・・」
「君の名は?」
「・・・私は西部管区区隊長のコーパスと申します・・・」
「ではコーパスくん。これより我々は西部管区を電撃的に制圧する。君は同胞の降伏を見届けるように。以上だ」
質問を投げかけるも返答がゆっくりであったため捕虜拘置室にコーパスを入れた。服が汚れていたため衣服を提供し、痩せ細っていたため食事を、劣悪な環境で作戦指揮をしていたためベットなどを用意した。彼を見届けた後、マーティン司令は作戦開始を告げた。
「command12より全隊員へ達する。これより作戦を開始する!参加する者は所定の配置につき、武器の使用準備を開始せよ!電撃的に制圧するため諸君らの迅速な行動と判断が求められる。以上だ!」
作戦開始が告げられ、第12歩兵師団と第7機甲師団総勢1万6000人が西部管区地下拠点のある入り口より侵入した。入り口の広さは戦車が入れるほどの大きさであるためものの機甲部隊は後方支援部隊として先行の歩兵部隊を援護する。
「敵兵はいるか?」
「いません!それとまもなく敵司令部に到着します」
「分かった。総員、なるべく音を立てず到着したら速やかに射撃を実施せよ!」
「了解」
数分後、開けたエリアへ到達した。第12歩兵師団・第7機甲師団各隊員は警戒を厳としながら前進していった。しばらくすると「司令部」と記された扉の前に着いたため一斉に扉を開けて内部へ突入した。
「敵兵確認!自由射撃による攻撃開始!撃ちまくれ!」
米軍側が攻撃を開始すると共に西部管区側の兵士も応戦する形で銃撃戦に発展した。米軍側の小銃の方が優れているためスプール共和国側は1時間もしないうちに継戦能力が皆無となり、身柄を投降した。
「西部管区の制圧を完了した。それにしてもすぐに終わったな。我々だけでこの地下拠点を制圧できそうだ」
「そうだな。各員、被害報告を行うと共に捕虜の身柄を厳重に確保せよ!外にいる同胞に彼らの身柄を預けるのだ!」
「はっ!」
西部管区における戦闘によりスプール共和国側は戦闘員を含めて400名が死亡、100名が武器を捨てて投降した。一方の米軍側は死者9名、負傷者36名という結果となった。最低限の被害に抑えられたのは良いものの死者を出してしまった。
その後、第7艦隊より通信が入った。
「隊長、第7艦隊より連絡です!」
「内容は?」
「申し上げます!『西部管区攻略中の第12歩兵師団と第7機甲師団へ通達。これより我々は第3艦隊と共に再度地上攻撃を開始し、敵を降伏を追い込む。着弾後、衝撃が発生する可能性があるため警戒を怠らないように』だそうです!」
「なるほど。総員、海軍より攻撃があるため姿勢を低くした状態で待機せよ!」
「了解!」
スプール共和国近海 第7艦隊「ロナルド・レーガン」
「艦長、「エイブラハム・リンカーン」・グリンバース艦長より攻撃準備が完了したという報告を受けました。いつでも攻撃できます!」
「分かった。我々もそろそろこの戦争を終わらせたい。全ミサイルを撃ち、一気に叩き潰すぞ!」
「イエッサー!各艦、対地戦闘用意!」
「対地戦闘!CIC指示の目標、トマホーク、VLS全弾発射用意!」
「っ撃てー!」
地下拠点を地上から破壊するため第3・第7艦隊より現時点で残っているミサイルを全て発射した。両艦隊より発射されたミサイルの数は100発近くなった。ミサイルの行方を見守る中、第3艦隊「エイブラハム・リンカーン」艦長のグリンバースは「ロナルド・レーガン」艦長に通信で質問を投げかけた。
「「エイブラハム・リンカーン」グリンバースより「ロナルド・レーガン」司令・アフィリエへ。全ミサイルを発射して大丈夫なのでしょうか?」
『艦長のグリンバースへ達する。この世界の海軍には我々の能力を上回る者はいない。それだけだ。他に質問はあるか?』
「ありません。通信終了いたします」
その後、発射したミサイルが着弾したという報告を受けた。第3・第7艦隊のミサイル攻撃により地下拠点では今まで以上に大きな衝撃が響いた。
「報告!敵拠点の破損が確認されました!」
「了解。各艦は地上部隊の報告を待つように」
ミサイル着弾から30分後の17:00 スプール共和国北部管区地下拠点仮総司令部
「被害状況は・・・?」
「報告・・・します・・・。西部管区が敵の手により降伏、・・・東部・南部との・・・通信が途絶・・・。被害は甚大です・・・」
「分かった・・・動ける戦闘員はいるか?」
「・・・」
ミサイル攻撃により仮の総司令部がある北部・東部・南部管区は壊滅的な被害が出た。キャタプ司令はこれ以上の作戦遂行が出来るかどうか判断した。東部・南部管区との通信を入れるが応答が無く、仮の総司令部を見渡しても倒れている者しかいなかった。
「降伏しか無いか・・・」
キャタプ司令は降伏という道を選んだ。仮に徹底抗戦をしたとしても全滅以外考えられなくなってしまった。ー
「やはり我々は無力だったか・・・」
その後、手足の痛みに耐えながら地下拠点の入り口へ向かった。入り口へ向かうと米陸軍兵士の姿を見つけた。
「我々スプール共和国は貴国に対して降伏する」
「分かった。持っている武器・装備を全て我々に手渡すように」
「北部管区攻略部隊より連絡。入り口より敵司令官が投降を宣言した」
『本部より全部隊へ達する。スプール共和国が降伏した。今後、自衛戦闘以外の戦闘を許可しない。繰り返すー」
キャタプ司令の降伏により、約2ヶ月続いた対テロ戦争はスプール共和国の降伏で幕を閉じることになった。これによりステイグル連合・『赤の衝動』・スプール共和国はアメリカの手によって討たれることになった。
スプール共和国の降伏から翌日10:00、米国・ジョーンズ大統領とグレーシス共和国・ジェシー総統は3カ国の降伏を受けて会合を行い、国際同盟仲介の元に行われる講和会議の準備などが話し合われた。
「会合は以上とする。ジェシー総統、講和会議も気を抜かずに頑張っていきましょう」
「もちろんです大統領。『赤の衝動』らの組織解体協力に感謝します。この恩は一生忘れないでしょう」
「あぁ。これからもよろしく頼む。総統」
両者は共に握手をし、8日後の3月25日に決まった講和会議に向けて準備を進めていくことになった。賠償金の精査・領土関係・捕虜の扱いなど課題は山々ではあるものの精一杯努力していく必要がある。
次回もよろしくお願いします。




