24-25 終わりに向けて 2
「ひ・・・被害の・・・状況は・・・?」
「現在・・・第1班〜第8班との・・・通信が途絶しています・・・」
アメリカ海軍ミサイル駆逐艦「カーニー」と「エイブラムス・リンカーン」より発艦したF/A-18戦闘機による攻撃でジェラン市街地、ジェラン山に拠点を築いている『赤の衝動』のゲリラ部隊は激しい攻撃に見舞われた。相手からは拠点を目視することは出来なかったがゲリラ側からは甚大なダメージを受けた。
「動ける・・・戦闘員はいるか?」
「・・・分かりません・・・少し横になりますね・・・」
ジェラン山のゲリラ部隊の隊長であるポイゾンも攻撃によって負傷した。命に関わるダメージではないものの部隊全体の被害状況は深刻なものである。
「各員、動ける者は直ちに下山し、この場・・・から速やかに離れるのだ!」
「ボスの件はどうするのですか?」
「今そんなことを・・言える状況・・・か?よく考えるんだ。俺もしばらくしたらすぐ行くから早く下山しろ」
「了解しました!」
しかし、ポイゾン隊長は下山中の隊員を見送ったが40人いるかいないかぐらいの数であった。拠点にクリーンヒットしたため多くの隊員を失ったのである。
「これは・・・参ったな・・・」
ポイゾン隊長にとって、ゲリラ部隊にとっても最悪な1日になろうとしていた。その後、何とか医療グッズを取り出し、痛みに耐えながらも何とか応急処置を施すことが出来た。しかし、21:00と暗い時間になってしまったため被害が少ないエリアを拠点に選び、一夜を過ごすことにした。
「我々に明日はあるのだろうか・・・」
そのように考えながらポイゾン隊長は眠りについた。そして、翌日5:00、ポイズン隊長は夢なのか現実なのか分からないまま目を覚ました。目が覚めていない状況で誰かの話し声が聞こえてきた。
「敵拠点周辺に到達。拠点付近に1名のゲリラ部隊の隊員を確認。現在位置を「カーニー」および「エイブラムス・リンカーン」へ転送する」
『了解』
「くっ・・・誰だ君たち・・・」
「我々はアメリカ陸軍第5軍団第189歩兵師団第4連隊。君は『赤の衝動』ジェラン方面ゲリラ部隊の構成員で間違いないな?」
「私も・・・ここまでか・・・」
「(『赤の衝動』の戦闘員で間違いないようだ)『第4連隊より「カーニー」及び第3艦隊司令部へ。敵戦闘員の身柄を確保。非武装化が完了した。これより残る戦闘員の捜索を開始する』」
第4連隊隊長の通信終了後、ポイゾン隊長の武装解除が終了し、「カーニー」から離陸したSH-60 シーホークに載せられ、「カーニー」で治療を受けることになった。「カーニー」艦長・ベルトは報告を行なった。
「「カーニー」より「エイブラムス・リンカーン」へ通達。ジェラン山山頂付近にて敵戦闘員の身柄、そして負傷していたため本艦にて治療を施したことを報告する」
『「エイブラムス・リンカーン」より「カーニー」へ。敵戦闘員を捕虜と認定する。今後の捕虜の扱いに関しては丁重に扱うように』
「「カーニー」より了解」
その後、第4連隊はジェラン市街地にて警戒に当たっていた第9連隊と合流、ジェラン山の制圧が完了した。対地ミサイルの着弾付近の拠点にて複数の『赤の衝動』戦闘員の遺体が確認された。また、ジェラン山北西で30人規模の武装兵の小隊を発見し、武装解除を命令した。
「止まれ!武器を捨て我々に投降せよ!繰り返す!武器を捨て我々に投降せよ!」
第4連隊長の警告をしたその時、目標は小銃を第4・第9連隊の米兵に向けて一斉射撃を行った。突然の攻撃により両連隊は反撃を行なった。
「第4連隊副連隊長よりemergency!こちら副連隊長のアワー!敵部隊より攻撃を受けた!負傷者多数!」
『「カーニー」より第4・第9連隊へ。第5・第6連隊を救援に向かわせた。到着まで持ち堪えよ!』
「了解!」
しかし距離を取られている他、早朝のため霧がかかっているため視界が悪く身動きが取れない状況であった。それでも攻撃の手を緩めることなく攻撃を続け1時間半に及ぶ戦闘は『赤の衝動』戦闘員の全滅で幕を閉じた。しかし、
「第9連隊副連隊長より「カーニー」へ。報告を受け取った。把握できる限りの被害状況を確認せよ」
その後、初弾が頭部と腹部に命中した第4連隊長の死亡が確認された。また、霧が完全に晴れた7:40、副連隊長による被害状況の確認を行なった結果、37名が死亡、87人が負傷する戦闘となった。
「以上で被害状況の報告を終了させていただきます・・・」
『「カーニー」より各隊へ。第4連隊長の冥福を祈る』
報告終了後、脚部に被弾した第9連隊長の治療を行うとともに第4連隊長・グラマラの黙祷を行い、ジェラン市街地に設置された連隊仮設基地へ帰投した。基地帰投後、報告書を作成しジェラン市とジェラン山の制圧が完了した。すると戦闘終了後に警備行動を実施していた第10連隊長より新たな報告が入った。
「「カーニー」そして「エイブラハム・リンカーン」より新たな報告!『赤の衝動』幹部と思われる男の身柄を拘束。対応求む」
『第10連隊へ。目標から目を離すな。その場で待機せよ!』
「了解!」
第10連隊の報告を受けて「カーニー」からSH-60が再度発艦し、現場へと急行した。報告現場へと向かい、SH-60が着陸後、幹部と思われる人間に聞き込みを行なった。
「米海軍ミサイル駆逐艦「カーニー」より参りました。つかぬことをお聞きしますがあなたは『赤の衝動』の最高司令官であるリーガル・ベストレスで間違いありませんか?」
「・・・」
SH-60から降りてきた「カーニー」副艦長・ザーリは再度口を開いたがその前に幹部と思われる人物が口を開いた。彼から発せられた言葉は衝撃的なものであった。
「あぁ。私は『赤の衝動』最高司令官、リーガル・ベストレスだ。ジェラン方面の部隊の視察に来たのだが・・・これはどういうことかね?」
第10連隊長・副艦長のザーリは彼の言葉に耳を疑った。
次回もよろしくお願いします。




