24-23 第7艦隊「ロナルド・レーガン」
「第4軍団第22歩兵師団第6中隊より作戦司令部へ。敵地東部・チャーラーの制圧が完了。それと同時に敵兵を確認するも交戦せず自ら投降したことを報告する」
『作戦司令部より第6中隊へ。報告を受け取った。敵兵の投降に関しては丁重に扱うように。また、完全な武装解除を命じよ』
「了解。通信終了、over」
3月10日、沿岸部の上陸を皮切りに米軍第4軍団・第5軍団の旧統合戦闘団の各中隊による東西南北同時上陸を開始した。統合戦闘団は先月の『赤の衝動』拠点攻略中の崩落により大きな犠牲を出したことで新たに編成された米国特別任務連合軍の各軍団に配備された他、武器の支給も行われた。そして、統合戦闘団のヤング元団長は第4軍団に所属し、第6中隊の隊長を任されている。
「ヤング隊長、チャーラー周辺に潜伏していた全てのゲリラ兵の武装解除が完了しました。この後はどうなさいますか?捕虜の扱いもありますし・・・」
「難しく考える必要はない。潜伏していたゲリラ部隊の人数は?」
「約300名程です。1個大隊くらいいるかと・・・」
「了解だ。監視員を30名ほど置いておこう」
第6中隊は中隊規模では多いくらいの500名が所属している。ヤング隊長はその内から30名を監視役としてゲリラ部隊を管理することになった。
「監視員長、くれぐれも彼らに危害を加えないように。しかし、抵抗する者がいれば武器を使用せず己の格闘制圧技術で食い止めるように」
「イエッサー!」
武装解除を実施したチャーラーのゲリラ部隊には武器を保持していないため抵抗する意思はない。ヤング隊長は監視員長に話を続けた。
「武器を持たずとも人には2つの武器を生まれながらにして持っているのには気づいているだろう?」
「己の拳と技術でしょうか?」
「その通りだ。言い方が悪くて申し訳ないね」
「問題ありません。分かりやすい例えでした」
「では失礼するよ」
監視員長のウィーラーに伝達したヤング隊長はその後、チャーラー市内に入り民間人に対して米軍占領下に置かれることを伝えた。これに対して市民の意見は賛否に分かれていた。
「これよりチャーラーは我々の監視下に置かれる。ステイグル連合の降伏は秒読みである。諸君らも覚悟を持つ必要がある。以上だ」
「あの・・・」
ヤングに話しかけたのは白髪の老人であった。
「何かな?」
「市長のハールバと申します。あなたの名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「アメリカ軍第4軍団第22歩兵師団第6中隊のヤングだ。これから先お世話になるかもしれないがよろしく頼む」
市長としばらく談笑した後、チャーラーの隣の市のファーロウを制圧した旧統合戦闘団の第7中隊、第5軍団第189歩兵師団第2支援隊が到着し、第6中隊と合流した。
「お久しぶりですヤングさん!あれからお元気でしたか!?」
「あぁ。息災であったか。ファーロウの状況はどうだっただろうか?」
「治安の悪化が気になるところでした。こちらはどういう状況でしょうか?」
「チャーラーの人間は物聞きが良い方がたくさんいるため被害をゼロに抑えることが出来た。それと・・」
「それと?」
「ベストレスがいた」
「本当ですか!第3艦隊にいるのは息子でここで捕虜になっているのが父ということですね?」
「そういうことになる。さぁ、任務を始めるぞ」
「了解です」
第7中隊の旧統合戦闘団の同僚と会話したヤング隊長は各隊員に警戒を怠らないよう命令した。上空ではAH-64・CH-47が警戒し、市内ではM1 エイブラムス、M1120 ストライカーが配備された。
同日午後 アメリカ合衆国・グアム海軍基地 第7艦隊「ロナルド・レーガン」
「司令、第3艦隊より定期連絡報告です。ステイグル連合各地の上陸が完了し、30ある都市の内17の市を制圧が終了したという報告が入っています」
「そうか・・・我々は遅れているな・・・」
「はい・・・」
アメリカ軍特別任務連合海軍第7艦隊「ロナルド・レーガン」司令官・アフィリエは艦隊整備の進捗に遅れが出ていることに不満を覚えていた。
「スプール共和国を速やかに潰さなければこの戦争はいつまで経っても終わらないだろう。整備が終了次第、圧倒的な武力で敵を叩くぞ」
「了解いたしました!」
艦艇の機能に異常は確認されなかったものの万全の状況で臨む必要があるため整備・修理が何度も行われていた。また、異世界転移により本土とグアムの距離が変わってしまったためミサイルや爆弾などの運搬状況が遅くなっている。
「この遅れは余裕で取り返せる。なぜなら我々は最強の第7艦隊だ。この艦隊だけで一国を陥せる能力だってあるのだからな。我々に遅れというものは存在しない」
「ですね!」
「司令、大変お待たせいたしました。艦隊整備が終了いたしました。いつでも出航可能です!」
「了解だ。すぐに出航だ」
整備隊による整備終了報告を受けてアフィリエ司令は「ロナルド・レーガン」に乗り込み艦長のマルティネスに作戦概要を伝え、準備が完了したことを受けてスプール共和国へ出発した。
「「ロナルド・レーガン」司令より各艦に達する。これより我々は素晴らしい航海に出る。目標はスプール共和国である。彼らに我々の力を見せつけるのだ!」
『イエッサー!』
グアム海軍基地を出港後、第7艦隊はステイグル連合・『赤の衝動』と友好的な関係を築いていたスプール共和国へ向かった。
「さぁスプール共和国の諸君、我々の力を味わうと良い」
アフィリエ司令はマルティネス艦長の隣でニヤリとつぶやいた。
10日15:00 グレーシス共和国・総統府
「総統、やはりアメリカ軍の後方支援を行うための軍の派遣をしてはいかがでしょうか?」
「後方支援を行う事は可能であるが我々では足を引っ張ってしまうだけだろう。ここは戦況を注視していく必要がある。外相、先を予測することを考えるのも大事な仕事だ。疲れているのであればゆっくり休みたまえ」
「お気遣い感謝します総統。失礼しました」
現時点でグレーシス共和国軍はアメリカ側から待機を命じられている。そのため、何か出来ないのかという感情が出てくる官僚が増えてきたのである。しかし、総統は状況の見極めが必要であると感じている。
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