24-7 地上から
「ヤリオス局長、2日前の爆撃後の敵拠点周辺の変化に関する資料が完成しましたので報告させていただきます」
ウリー副局長は30ページに及ぶ【米空軍攻撃に対する『赤の衝動』のその後の変化】と記された資料を局長の机に置いた。
「ふむ・・・この写真を見るに完全に敵の拠点を排除できたとは言えないようだ。隅々に渡って排除できるように地上部隊の投入も視野に入れる必要があると思う。我々の攻撃により防空兵器は破壊されたか?」
「一昨日の攻撃によりほとんどの対空兵器の破壊を確認しましたが先ほど6基が残存しているということが分かりました。地上部隊を投入するのであればそれらを破壊してからだと・・・」
「私は軍の指揮官では無いためあまり多くのことは言えないが目先の物事に執着しないで見てもらいたいものだ」
「ですね。引き続き解析を続けましょう」
その後、ヤリオス局長らは局員と共に周辺地域の変化や『赤の衝動』の動きを追跡した他、まだ対空能力を保有しているということを国防総省などの政府機関に伝えた。これらの報告を受けて2/8の13:00にジョーンズ大頭領は再度NSC(国家安全保障会議)を召集した。
「改めてここに集まっていただき大変光栄である。航空宇宙局からの報告を受け取ったがまだ敵の拠点にて6基の対空ミサイルの存在を確認した。また、地上部隊による徹底的な排除をしなければ地域の安定は守られないと考えている。そのため空軍による対空ミサイル排除と陸軍による敵拠点の制圧をグレーシス共和国軍と共同で行う」
「大統領、グレーシス共和国へ陸軍を派遣するのであれば相当の時間がかかります。そこのところは問題ないのでしょうか?」
アメリカ合衆国とグレーシス共和国の距離は地球世界で言うとアメリカ-イギリス間の距離程度ではあるものの戦車や装甲車などを輸送する場合、時間が必要であるためグレーシス共和国陸軍の戦車を借りることも可能である。
「改めて言うが我々は平和な世界を望んでいる。これを妨げるものは全て排除しなければならない。現場部隊と指揮官には無制限武器の使用を許可しておくように」
「了解しました」
2回目のNSC(国家安全保障会議)が終了しグレーシス共和国北部・テリロンに存在する『赤の衝動』の拠点の完全排除のため陸上戦力の投入が決定した。しかし、対空ミサイルがまだ配備されている状況にあるため再度空軍による再攻撃が開始される。
2/11 8:00 アメリカ合衆国ハワイ州 パールハーバー・ヒッカム統合基地
この日、この基地に陸軍およそ3000人と海兵隊1000人の合計4000人の部隊がテリロンに派遣されることになった。そしてこのパールハーバー・ヒッカム統合基地はアメリカ本土とハワイを防衛する重要拠点ではあるものの今後ホノルルに司令部などの中枢機能を移転させる考えがあるようだ。
「さぁ諸君!仕事の時間がやって来たぞ!大いに暴れ散らかしてやろうじゃないか!」
「うぉお!」
4000人の歓声が響き渡った。彼らの士気はエベレスト以上に高いだろう。
「さてここからは真面目な話だ。よぉく耳にいれておかなければ聞かなかった者は敵のエサとなるだろう。聞く準備は良いか!?」
「イエッサー!」
「良い返事だ。我々はこれよりグレーシス共和国北部・テリロンにある敵の拠点を制圧する任務に取りかかる。この作戦は非常に重要だ。失敗は許されないという覚悟で望め」
米軍統合戦闘団の団長・ヤングは団員に作戦内容を伝えた。グレーシス共和国デクスター海兵隊基地にてグレーシス共和国陸軍と合流後にデクスター基地に配備されているC-17輸送機で人員・物資輸送後、テリロン近郊のシャンヨンにて作戦を開始することになっている。
また、懸念されていた対空ミサイルに関しては2/10つまり昨日にF-16C/D戦闘機による攻撃で全破壊を確認したことにより地上部隊の派遣が決まったのである。
ちなみに米軍統合戦闘団は以下の部隊に編成されている。
【米軍統合戦闘団 STRIKE FORCE 編成】
●第1統合戦闘団→完全機械化(戦車・装甲車・水陸両用戦闘車など)
●第2統合戦闘団→混合部隊(全てが入り交じる部隊)
●第3統合戦闘団→情報収集部隊
●第4統合戦闘団→衛生部隊
●第5統合戦闘団→現地偵察部隊
という編成になっている。
「総員、出港の準備が整った。速やかに輸送艦に乗艦せよ!繰り返す!作戦参加兵は速やかに乗艦せよ!」
各自、武器や軽食・夜営可能設備などを輸送艦に運びグレーシス共和国本土への到着を待った。一部の兵士らの船酔いの心配があったが天候は絶好の晴れ模様かつ波が立っていなかったことから船内では問題なく事が進んでいった。
船内では筋トレに励む者、戦闘中に空腹にならないよう食事を摂取する者、それぞれの時間を過ごしていたがデクスター基地に到着した。
「米軍統合戦闘団、ただいま到着しました!」
「これはこれは遠路はるばると。我々はグレーシス共和国陸軍強襲歩兵師団のパイラートと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ。素晴らしい戦果を上げられるよう頑張りましょう!」
「はい!」
しかし、まだこの頃は想定外の事態が起きるとは思いもしなかった。
次回もよろしくお願いします




