9-113 贖罪
10月14日、国際同盟は旧ボルドー国(現豊麗県)の旧政府関係者・旧軍関係者・公職追放対象者に対して国際軍事裁判の開催がこの日から始まった。旧政府関係者はA日程とB日程で行われ、旧軍関係者はC日程とD日程で行われ、公職追放対象者などに対してはE日程とF日程で裁判が行われる。A日程は10月14日~10月20日、B日程は11月1日~11月10日となっている。
現時点で日本政府の管理下に置かれているアスキーには重い処分が下される可能性がある。旧政府関係者も同様の判決が下される。
同日10:30、グレーシス共和国のデクスター裁判所で【ボルドー国及び軍への国際軍事裁判】が開始された。各国から2名の代表が出席した。日本国からは大島総理と豊麗県知事で元新世界大臣の畠山が出席した。
「これより旧ボルドー国政府とその軍関係者らに対する国際軍事裁判A日程を開始する。A日程の裁判長は日本国の坂城正道、副裁判長にグレーシス共和国のゼーボが担当する。よろしくお願いします」
ピりついた緊張感が走る中、旧ボルドー国の国際軍事裁判が開始した。アスキーの順番は最後となっており財務大臣→農政大臣→労働大臣→交通大臣→法政大臣→文部教育大臣→外務大臣→国防大臣→陸軍局長→海軍局長→空軍局長→ミサイル軍局長→首都警察長官→指導府長官→副指導→最高指導の順番となっているため6日後の20日にアスキーの判決が決まる。
「(私の裁判は20日か・・・残り6日、死ぬまでの瞬間を有意義に過ごすとしよう・・・)」
初日の挨拶に出席した大島総理と畠山知事とアスキーの3名はデクスター裁判所を後にし、一時帰国した。飛行機内でアスキーは大島総理に心境を打ち明かした。
「アスキー。君は残り6日どのように過ごすのだ?」
「総理、私は判決までの6日、出来る限りの贖罪を果たしたいと考えております」
「ふむ。良い心がけだ。しかし君が行ってきた行為は決して許されるものではない。その事を覚悟して言っているのだな?」
「もちろんであります総理。たとえ贖罪を果たせたとしても私の過ちは決して消えることはないでしょう。ですが出来ることは何でもやります」
「分かった。では君はこの6日間、悔いのないよう過ごしたまえ」
「分かりました!」
そして機内で国際軍事裁判のライブ配信の映像を見た。映像にはアスキーとともに国を支えた大臣らが判決を待っていた。
『旧政府財務大臣、農政大臣、交通大臣に対して懲役30年の判決を下す。懲役終了後に各国政府が保護する。そして労働大臣、文部教育大臣に対して懲役50年の判決を下す』
長期の懲役判決にアスキーは無期懲役か死刑を覚悟した。アスキーは死刑判決が出るのも覚悟しており、あらゆる判決も受け止める覚悟がある。
その後、国防大臣・陸海空ミサイル軍局長・首都警察長官の判決が下された。この5名に対しては懲役60年の判決が下された。それから14日~19日にかけてアスキーを慕っていた多くの大臣が判決を下され、無期懲役や死刑判決を下された者はまだいない。そして19日に再度日本からグレーシス共和国へ移動したアスキーは翌日の13時から始まる裁判の時を待った。
20日13:00、アスキーの判決が決まる裁判が開始された。数えきれない民間人の命を奪った彼に浴びる批判は凄まじいものであった。裁判長は静粛にを連呼したものの批判が止まることはなかった。それでもアスキーはどんな批判も受け止めた。
「これより旧ボルドー国最高指導・ネオン・ベリテ・アスキー被告への裁判を開始するため静粛に願う。被告は3月30にちから9月にかけて非武装民間人への度重なる攻撃を加え多くの犠牲者を出したこと自覚していますか?」
「はい。自分が犯してきた過ちは決してー」
《極悪人アスキーを許すな!》
《アスキーを死刑にしろ!》
《謝罪しても許されないぞ!》
「静粛に!」
一般席から罵声をアスキーは浴びるが話を続ける。
「この5ヶ月間、私は我が物顔で多くの民間人の命を奪いました。先程のように厳しい意見をいただきました。もちろん自覚しており、私はあらゆる判決も受け止める所存であります」
「分かりました。3時間後に判決を下しますので被告は退出して下さい」
3時間後に判決が出るためアスキーは退出した。退出する際も罵声を浴びるがアスキーは下を向いて待機する部屋へと向かい大島総理と顔を合わせた。この3時間で自分の生死が決まるため緊張しつつもいかなる結果であれ自業自得であると自覚している。待つこと3時間、再度入室し裁判長から判決が下された。
「これより被告に対して判決を下す。審議の結果、我々は被告人を無期懲役とする。しかし、旧ボルドー国の賠償金支払い終了までは日本国が厳重な保護観察を行い、支払い後に再度裁判を実施し無期懲役もしくは死刑の判断を行う。以上だ。何か反論はあるかね?」
「ありません」
「以上で旧ボルドー国に対しての国際軍事裁判A日程を終了する。B日程は11月1日から開始される」
このようにして国際軍事裁判A日程の裁判が終了した。アスキーは無期懲役となるが東京講話会議で定められた賠償金の支払いが終了していないため終了するまでは日本国の保護下に置かれることになる。しかし終了後はもう一度裁判を実施し無期懲役か死刑の判決を行うかどうか決定した。A日程終了後、アスキーは自分の命が尽きるまで精一杯尽力していくことを誓った。贖罪を全て果たすのは難しいが当人の覚悟が強いならば外野があれこれ言う必要はないだろう。大島総理もその一人であった。
「(私もそろそろ引き際かもしれないな・・・)」
まだ任期はあるものの世界戦争やボルドー国との戦争で多くの国民が犠牲になったということに責任を感じており、まだ周囲にも打ち明けていないが退任も考えていた。
次回最終話です。最終話の後書きにていくつかお知らせがありますのでよろしくお願いします。




