9-73 ターニングポイント
7月25日、アスキー指導が各地での捕虜交換を行いボルドー国首都近郊のアンドワ空軍基地に到着した。絶対防衛圏のプジョー島が陥落したという報せを知らずに・・・。
「お帰りなさいませ指導。敵国の地を初めて踏みましたがいかがでしたか?」
「うむ。お迎えご苦労。自分の足で敵地を踏むというのは別の何かを感じさせられる。彼らが降伏したらどのような面で私を出迎えるのか、占領した国をどのように統治していくかという考えが頭の中で張り巡らされたよ」
「それは良かったです!ですが指導、残念なお知らせがございます」
出迎えの国防相が神妙な面持ちでアスキー指導に伝えた。
「7月22日、3日前なのですが我が国が絶対防衛圏と定めているプジョー島が陥落いたしました」
「・・・は?」
絶対防衛圏の陥落。これはボルドー国にとって最大の痛手である。アスキー指導は信じられずもう一度聞き返した。
「プジョー島が・・・陥落・・・!?それは一体どういうことだ!あそこは我が国にとって絶対に守らなければならない島!そこを陥とされたということか!?」
アスキー指導は血相を変えて国防相を問い詰めた。しかし彼を問い詰めても同じような返答しか返ってこなかった。
「指導・・・残念ながら結果を変えることは不可能です」
「・・・だが!島の敵部隊の所在と人数を答えろ!」
「現在陥落したプジョーには10万規模の敵軍が占領を行っております。奪還も可能ですがそれ相応の被害が考えられます。ここは絶対防衛圏の変更をしなくてはなりません」
プジョー島の陥落でこの島から同盟軍の爆撃機を飛来させることも可能である。しかし、最終防衛ラインを引いたとしてもそこを突破されればボルドー国の敗北はそう遠くない未来である。
「一度防衛ラインを再設定するため指導室に参りましょう!」
「分かった・・・」
その後、空軍基地から自衛隊から鹵獲した高機動車に乗車し、ボルドー国指導府の指導室へと向かい他の官僚も呼び出し、緊急会議を行った。
「今日呼び出したのは他でもない。君たちも知っているだろうと思うが我が国の絶対防衛圏が崩壊した。我々は絶対防衛圏の崩壊に危機感を持っている。今後敵との降伏か継戦かの二択に迫られる時が来るであろう。君たちもそして私も戦う顔をしなければ我が国は負けの一歩を辿ることになるだろう!」
絶対防衛圏の崩壊だけは避けたかったがその時が来てしまったことにアスキー指導は焦りが見え始めていた。しかし、最後の最後まで戦い抜くことを誓った。
「我々は今危機に瀕している。何か打開策があれば構わず言って欲しい」
「指導、一つ提案が・・・」
「何だ?言ってみよ」
意見を言おうとするのはザンク新外相であった。彼はバンジ共和国のリュー代表がボルドー国外相の時の副外相であった。
「あまりこう言うことは言いたくなかったのですが降伏するというのは・・・どうでしょうか?」
恐る恐るザンク外相は発言した。外相の発言にアスキー指導は激怒した。
「愚か者!貴様は我が国の敗北を臨んでいるというのか!貴様には期待していたが私は失望した!指導を加えなければならない!教育教育教育!」
「大変申し訳ないです・・・今の発言は撤回させていただきます・・・ですが現状の戦局から考えうる限り過去最悪です。先ほどの発言は申し訳ないですがその覚悟もしといた方が良いかもしれません」
「分かった。少し興奮しすぎた。だが君の発言は不愉快極まりない発言だ。今後発言するときは君たちも考えて発言したまえ」
「「「分かりました!」」」
その後、重苦しい雰囲気が続くなか緊急会議は進んでいった。しかし、プジョー島の奪還という選択肢もあるにはあるが戦力が分散するのだけは避けたいのである。
「さて、私としては最終防衛ラインの構築を構想しているのだがどうだろうか?」
「私としてはあまり作らない方が良いかもしれません」
「なぜだ?」
「最終防衛ラインを引くのは自由ですがそれを守るのに夢中でその他の地域が手薄になってしまっては何の意味もありません。ですので私は最終防衛ラインを引くのに反対です」
「ふむ・・・それもそうだな・・・良し分かった。防衛ラインは引かないことにしよう。しかし、全地域の守りを固めるのだ!」
「了解です!」
その後最終防衛ラインの設定をしないことが決定した。しかし、最終防衛ラインを引く引かないに関係無く、今後ボルドー国は史上最悪な展開が眼前に訪れる。
国際同盟軍 プジョー島 同盟海軍基地
「司令!港の整備完了いたしました!」
「了解。今後は飛行場も設置し戦闘機や爆撃機が出撃できるようにしていく予定である。また、彼らにとってこの島は超重要。取り返しに来る恐れもあるため引き続き警戒せよ」
「はっ!」
プジョー島陥落から3日、同盟軍が着実に軍事要塞化をしようとしている。すでに海上自衛隊の護衛艦が3隻、米海軍の駆逐艦や補給艦12隻が停泊を開始した。また、ボルドー国首都への攻撃を可能にするため飛行場の設置を速やかに行うため日本の民間会社や陸上自衛隊の施設科部隊が派遣された。
「相手からするとこの島の陥落は彼らにとって不利益でしかない。仮に奪還が行われたとしても我々の圧倒的な力を見せつけようじゃないか!」
「もちろんです!」
8月1日から始まる総攻撃に備えて着実に準備が進められていっている。どんどん追い込まれるボルドー国はこの戦況をどのように乗り切るのか、そして同盟側はボルドー国に対してどれくらい追い詰められるか。これは彼らにとって分岐点である。




