9-72 絶対防衛圏
ボルドー国の要求で行われた捕虜交換が21日の13:00をもって終了した。全ての国に一部の捕虜を返還するのに時間を要したがボルドー空軍の輸送機をフル稼働して任務を実行したと思われる。アスキー指導も大島総理と対面後、アメリカ合衆国のベッセマー大統領とも面会を行いボルドー国主導の世界秩序の構築を宣言した。
アスキー指導の発言は合衆国中でも大きな関心を集め、国内のトレンドには【I want to punish the bastard ASCII(アスキー指導を懲らしめたい)】や【The Bordeaux state and it's army should surrender immediately(ボルドー国とその軍は直ちに降伏すべきだ)】等のコメントが散見されていた。
そして停戦終了から8時間後の21:00、米軍を主力とする9万6000人の国際同盟軍の部隊はボルドー国の離島・プジョーを海洋拠点とするため派遣した。国際同盟軍の編成は米軍4万6000人、自衛隊4000人、メネズ王国軍1000人、グレーシス共和国軍3000人、アズール民主国軍1万人、アコースティ軍1万、バージョ皇国軍2万2000人という編成である。バージョ皇国は海洋国家であり4万の陸軍と空軍に対して20万の海軍が存在する。
ボルドー国北東40km プジョー島近海 国際同盟海軍艦隊旗艦「アンダーソン」
「艦長、占領目標との距離残りわずかです。艦砲射撃による威嚇の開始を行ってもよろしいでしょうか?」
「アンダーソン」の艦長のロドリゲスは戦闘司令部長のバルカスは目標のプジョー島のボルドー軍部隊に対して艦砲射撃を要請した。
「了解。敵部隊の位置把握後、速やかに射撃を行い驚異を排除せよ!」
その後、艦長の命令の元各艦から一斉に攻撃を開始し空母から発艦したF35Cによる同時攻撃である程度のボルドー軍部隊を排除することに成功した。しかしプジョー島に駐留中のボルドー軍は約3万人の駐屯していると言われており今の攻撃ではまだ沿岸部のみしか排除できていないためゲリラ戦が予想される。
「島への上陸を開始し予想されるゲリラ戦に備えよ。あらゆる武器を用いて敵の絶対防衛圏を破壊するのだ」
このプジョー島いう島はボルドー国が定めている絶対防衛圏ラインの上にある一つの島である。要は太平洋戦争での日米が衝突した硫黄島のような立ち位置である。このプジョー島が陥落すればボルドー国首都への攻撃も可能である。
「この島は彼らからしたら失う訳にはいかない島であることには間違いない。だが我々は目標を占拠し優位に立つ必要がある。絶対に失敗してはいけない」
「了解!」
その後第1陣4万人がプジョー島に上陸。しかしボルドー軍側からの攻撃は無く、あっさりと沿岸地域を制圧することに成功した。
「こちら南本。目標の上陸に成功し沿岸部の確保に成功。敵の抵抗は無く、負傷者なし」
『了解。全方位の警戒を怠らず前進せよ。敵を発見した場合速やかに射撃を行え』
そしてゲリラ部隊が潜む森林地域へと入っていった。森林地域内は薄暗くなっているため相手側は優位ではあるが最新鋭の暗視装置を使用している米軍側からしてみればどうってことはないのである。それからというもの第2陣上陸後、夜間に乗じてボルドー軍のゲリラ部隊を次々と排除していった。
「敵部隊後退を確認。やはり彼らは夜戦を得意としていない模様。これより島全域の制圧を開始する」
『了解。夜間であろうと昼間であろうと味方と敵の識別は怠るな』
夜間での戦闘であるためもちろん暗く、敵と味方の区別がつきにくいため気をつけていかなければならない。また、暗視装置は一人一個しか支給されていないため破損したりすれば危険が伴う状況になるため大切に使わなければならない。
「隊長、時刻は22日の2時を回りました。敵の夜間戦闘能力はここまでかと思われます。一気に叩きましょう!」
「分かった。総員に告ぐ。現在時刻は深夜2時、相手側は疲れきっている状況である。今が絶好の殲滅のチャンス。周辺をくまなく捜索し降伏を促せ」
『了解!』
その後、深夜における夜間戦闘が繰り広げられすでに戦闘継続能力が急速に落ちていたボルドー軍は射殺されたか捕虜になったかの二択の選択肢となり、支給されたいたであろう八丈島でも使われた洗脳薬物使用一歩手前で食い止めることに成功した。また、捕虜はボルドー兵1万5000人に膨れ上がった。
「こちら島嶼部占領部隊、目標制圧完了。繰り返す、目標制圧完了」
『了解。これで敵の絶対防衛圏は完全に崩壊した。今後徐々に制空・制海権も失っていくだろう。第1陣は捕虜を丁重に扱い、第2陣はプジョー島のボルドー軍駐屯地を制圧せよ』
司令官の指示によりプジョー島全域が国際同盟の物となりボルドー国の絶対防衛圏ラインの崩壊が決定した。また、第2陣の部隊はボルドー軍が駐屯していたプジョー陸軍駐屯地を制圧し武器や重要資料を押収した。
「これより任務を終了する。ボルドー国の未来はこの戦闘によりまた一歩降伏への道が開いた」
7月22日 3:00 国際同盟軍は10時間もかからないうちにボルドー国のプジョー島を占領し現地の部隊を捕虜として獲得した。同盟軍側の被害は最小限に抑えられ400人が殉職、6000人が負傷した。また、絶対防衛圏の崩壊の情報はアスキー指導にはまだ伝えられていなかった。




