9-69 偵察/新たな陰謀
7月12日。ボルドー空軍の爆撃機による特攻から一夜明け、大島総理は関東地域に被害状況確認後、午後から航空自衛隊の千歳基地に向かい、北海道の被害状況を確認する。
航空自衛隊 千歳基地
「お待ちしておりました総理、大変な状況ではありますが何卒よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む、酉島基地司令」
爆撃機による攻撃から一夜明け、千歳基地は北海道復興の重要拠点となった。壊滅的被害が生じた道庁の札幌市を小樽市に道庁機能を移した。また、生存者の安否確認のため爆撃機の特攻から2時間半後に救助部隊が入り、半壊していた札幌ドームを臨時救護施設とし生存者の手当てを実施した。
「現時点での生存者数は?」
「まだ1万人も達していない状況です。札幌ドームが崩壊していなくて本当に良かったです」
「確かにそうだな・・・にしても一体これほどの破壊力を持つ兵器があるとは考えられないな・・・核の放射能汚染などは無かったのか?」
「ありませんでした。我々も爆発の威的に核爆弾は使用されませんでしたが救助隊員は現在念のため防護服着用の元、活動しています」
11日の北海道都市部への最初の爆撃機の攻撃以降、核爆発による放射能汚染が考えられたが基地の特殊兵器観測レーダーには核燃料は確認されなかった。そのため、同様の攻撃を受けたアメリカやグレーシス共和国、国際同盟と共に調査を行う方針の他、対ボルドー国終戦後に製造元などに調査団を送ることを検討中である。
「それではこちらのoH-3に搭乗願います総理」
大島総理は酉島基地司令の指示の元、OH-3偵察戦闘ヘリコプターに乗り込み札幌市上空へと向かった。このOH-3は偵察のみならず偵察中での敵との遭遇の際に戦闘が出来るよう施されている。また、あらゆる放射能汚染を防ぐことが可能である。
「忙しいときにすまないね酉島基地司令」
「いえいえ。我々は国民の命を守る人間です。残りわずかな希望も捨てることはしません」
「そうだな・・・」
数十分飛行していると救命ヘリコプターがあちこちから飛んでいた。接触の危険は無いのかと思ったがこのOH-3は手動でも自動でも操縦が可能であり飛行中の機体が多かった場合自動操縦に切り替わり接近しても距離を取ることが出来る優れた性能を持っている。
「こちらTS-A1よりTS-Aへ。総理の搭乗の本機、まもなく札幌市上空へと到達する。上空の飛行許可を求める」
『TS-AよりTS-A1へ。札幌空域の飛行を許可する』
壊滅的被害を被った札幌市では一般の航空機の飛行を制限し救急・自衛隊関係のヘリのみ飛行できないようになっている。そして、大島総理を乗せたOH-3偵察戦闘ヘリコプターは仮設ヘリポート13番に降下した。この仮設ヘリポートは全20あり、爆撃の7時間後に臨時に設置された。
「総理、到着しました。ここが札幌駅付近かと思われる場所です」
大島総理はヘリコプターから降り、辺り一面を見渡した。ほとんどの建物の原型は残っておらず残っていたとしても頑丈なコンクリートの建物くらいだろう。良く目を凝らして見ると瓦礫の隙間に【JL札幌駅】と記された看板が落ちていたことから札幌駅と推測される。また、爆撃後の北海道の交通網は麻痺し、鉄道・飛行機は使えなくなってしまったのである。
「中を見ることは可能かな?生存者がいるかもしれない」
「駅構内の生存者の行方不明捜索はすでに実施しましたがご遺体のみしか・・・見つかりませんでした。ここで総理が中へ入ってしまったら二次被害の可能性があります」
「分かった。ここは亡くなられた方に黙祷を捧げるとしよう」
大島総理は駅構内で亡くなった市民に哀悼の意と黙祷を捧げた。自分が何も出来なかったという悔しい気持ちを背負いながら・・・
「そろそろ時間制限が来てしまいました。基地に帰投しましょう」
「どうしてだろうか?」
「二次被害の対策ももちろんしなければいけませんが何より我々がしなければいけないのは北海道の復興と再建です。ですので一度基地に戻りましょう」
「分かった」
「こちらTS-A。これより総理を乗せた本機は基地へ帰投する」
『TS-A1よりTS-Aへ。了解。安全確保を十分した上で基地へ帰投せよ』
※TSというのは千歳基地所属の航空機を指す。TS-Aは基地司令が搭乗している航空機、TS-A1は基地管制塔のことを指す。ボルドー空軍の爆撃機による攻撃後、識別しやすいようにTSというコードが付けられた。
札幌駅周辺をぐるりと旋回し、千歳基地のある方向へ帰っていった。帰投途中でも復旧部隊が各ヘリポートから降り、人命救助・瓦礫の撤去などを行う姿を上空から見た。
「(私もやるべきことをやらねば・・・今が重要な時なのだから)」
その後、総理を乗せたOH-3は15:10に千歳基地に戻ってきた。千歳基地に戻り、大島総理はSPらと共に千歳基地の空自隊員らに挨拶をした。
「敵国による愚かな攻撃により多くの日本国民を昨日の8時間で失いないました。大変無念であります。ですがここで怯んでいては相手の思う壺です。全員で協力しあい、この苦難に打ち勝って参りましょう。以上です。お忙しいなかこのような時間を作っていただきありがとうございます」
大島総理は挨拶の後、自信が乗ってきた小型政府専用機に搭乗し東京に戻っていった。機内にて総理は追加で送られてきた各地の被害報告を確認した。また、明日は大阪へと赴き札幌との被害の状況を比較し、どのように復興・再建をしていくか考えていく計画である。
「東京と横浜と千葉で新たに12人の亡くなられた方が発見されたか・・・」
北海道や大阪以外の地域では直接的被害は被らなかったものの炎の破片と化した機体の一部が各地に落下し火災が発生する被害が生じた。大島総理はこのボルドー国の蛮行は決して許されない行いだと強く非難し、アスキー指導捕縛計画を提案した。
ボルドー国 指導室
「指導、お呼びでしょうか!」
「あぁ。敵国どもの無惨な光景を目に焼き付けたか?」
「はい!もちろんであります!我が国に刃向かった人間の末路だと私は思いました」
ボルドー国政府の官僚には思いやりの精神が無いらしい。この3文だけ見ても分かる。アスキー指導は側近に次なる指令を出した。
「次の命令を国防相と作戦本部に伝えよ」
「何でしょう!楽しみです」
「8月1日より我が軍の総戦力を用いて全敵国への上陸と占領を開始する。抵抗するものは皆あの世へ送るつもりだ。無抵抗の者には労働という褒美を与えることにする」
「それは素晴らしい作戦でございますね!きっと指導の作戦は成功するでしょう!」
アスキー指導は19日後の8月1日に国際同盟の加盟国に対して同時上陸・占領作戦を提案した。この提案は実行されることとなるが果たして国際同盟側が先手をかけるかそれともボルドー国側が優位に立ち、電撃的な侵略を行うのか注目である。残り19日、ボルドー国の運命はこの日から決まる。




