9-68 反撃の意思 終 -企みは散る-
北陸・東海方面を飛行中のボルドー空軍の爆撃機を撃墜後、彼らの次の目標地点は大阪・広島に定められた。当初、兵庫や京都なども攻撃目標ではあったが各地での完全破壊の報告を受けてこの二都市に絞られた。また、最もな理由としては爆撃機の数が足りなくなったからである。
19:10 航空自衛隊伊丹基地
ボルドー空軍の爆撃機が次々と撃ち落とされているという情報を受けて伊丹基地所属の戦闘機と美保基地所属の戦闘機による共同での全滅作戦を開始した。視界は暗くなっているため夜間での緊急発進となる。
「総員!敵爆撃機の数は残りわずかとなった。この1時間で彼らの敵爆撃機を片付けようと思う。夏場とはいえ暗くなってきている。味方機との接触を回避し速やかに排除せよ」
広島・大阪に接近中のボルドー空軍の爆撃機は計8機。これが最後の8機である。伊丹基地所属の戦闘機はF15が12機、F22戦闘機が8機、F35戦闘機が5機配備されている。一方、美保基地には15機のF22戦闘機、10機のF15戦闘機が配備されているため8機相手に50機のうち30機を出撃させる。夜間であることから接触の可能性もあるため視界の状況に応じて出撃制限が駆けられる。
「各機、機体の整備確認後速やかに離陸せよ」
『了解。視界良好の否かを確認する』
その後、3機のF15戦闘機が視界確認のため伊丹基地と美保基地からそれぞれ離陸した。また、補足すると伊丹基地所属の戦闘機には【ITM】、美保基地には【MH】の呼称が与えられている。
「ITM-4よりMH-5へ。現在敵爆撃機との同高度にあり。現時刻での伊丹基地上空~大阪にかけて視界は良好なり」
『こちらMH-5よりITM-4。本機周辺の視界も良好なり。敵爆撃機への攻撃いつでも行ける状態』
夜間での出撃が可能であると判断され、伊丹基地・美保基地の両基地から戦闘機が1機ずつ離陸した。接触を避けるため発色テープを張り付け敵味方の識別を取れるようにした。
※転移後のこの世界の季節感覚は地球世界とは異なり12月~2月を冬、3月・4月を春、5月を多雨季、6月~9月が夏、10月・11月が秋という四季感覚となっている。5月の多雨季というのは地球世界で言う梅雨と同様のものである。しかし、今年は異常気象であったためあまり雨が無かった。
「ITM全機は大阪湾もしくは紀伊半島沖、MF全機は瀬戸内海、日本海、高知県沖のいずれかで敵爆撃機を完全破壊せよ。なるべく民間への被害を抑えよ」
『了解。敵爆撃機への攻撃を開始する。全機、ミサイル発射準備!』
伊丹基地から出撃した15機の戦闘機は紀伊半島沖から大阪湾へ入ってきたボルドー空軍の爆撃機を攻撃した。大阪市内等への被害が出る可能性があるため強制避難が出された。そして一行は敵爆撃機を紀伊半島から大阪湾付近にて迎え撃った。
「敵爆撃機4機を捕捉。これよりミサイル攻撃を開始する。攻撃後、大爆発の可能性あり。極力回避行動を実施せよ。開始!」
ITM-1の井上機隊長は伊丹基地から出撃した15機の戦闘機にボルドー空軍爆撃機へミサイル攻撃の実施を命令した。15機×2の30発が第一次攻撃として4機の爆撃機に命中させるが完全爆発させられず高度を低下させ大阪市内へ特攻していこうとしていた。
「全機!降下中の敵爆撃機4機を撃ち落とせ!予備のミサイルの使用も許可する!」
『了解。敵爆撃機へ第二次攻撃を開始する』
大阪市内に徐々に落ちていく爆撃機に対して2回目の攻撃を開始した。ここで撃ち落とせば市内に被害が出るが札幌の惨状にはならないため速やかに撃墜するよう命令した。しかし、初動の攻撃でミサイルの残発が少なくなり予備のミサイルも2発しかなかったため残発4発の計60発で4機の爆撃機を攻撃した。
「(夜間なこともあり命中率は下がっている・・・ここで完全破壊に失敗すれば被害は大阪市内だけでは済まされない・・・)」
失敗が許されない中、爆撃機へと向かうミサイルの弾道の行方を追った。ミサイルの行方は見事3機の爆撃機に命中し爆発を起こし完全撃破に成功したが4機の戦闘機が巻き込まれた他、1機の爆撃機を完全破壊することができず大阪市内に墜落し大爆発が発声し、一瞬にして町は破壊された。幸い大阪市民は京都や滋賀に避難していたため民間人の犠牲者が無かったことが幸いである。
「ITM-1よりITM-Aへ。敵爆撃機3機の完全破壊に成功するも1機撃破できず大阪市内に墜落した。基地に一時帰投し、被害状況の収集を開始する」
『ITM-Aより全機。大まかな被害を把握した上で速やかに帰投せよ』
「了解」
その後、大阪市を旋回後、伊丹基地に帰投した。基地帰投後、被害報告を行い市の復興を今後行っていく方針を示した。また、基地のライブカメラには爆発した瞬間を捕らえていた。
19:30、残り4機となったボルドー空軍の爆撃機は広島へと向かってた。美保基地ではすでに15機の戦闘機が出撃しておりいつでも撃ち落とせる体制が整えられている。また、19:17付近で大阪市で爆発雲が美保基地から出撃後に見えた。
「(大阪で爆発・・・爆撃機の撃墜に失敗したか・・・気をつけねば・・・)」
15機の戦闘機には4機に爆撃機に対して3発ずつ発射できるようになっている。そして関門海峡付近でボルドー空軍の爆撃機4機を視界に捕らえた。
「敵爆撃機を関門海峡付近で確認。これより撃墜を開始する」
『了解。すぐに合流する』
その後、岩国基地からも援軍があり、PAC4が使用され1機の爆撃機に直撃した。しかし、一発二発では撃ち落とすことは出来なかったため各戦闘機から45発のミサイルが発射された。爆撃機4機へと向かった45発のミサイルは見事に命中し3機を同時に爆発させた。同時に爆発させたことにより大爆発が発生し6機の戦闘機が巻き込まれた他、岩国基地の滑走路に破片が降下した。
「残り1機の敵爆撃機を完全に破壊せよ。あらゆる武器を使用することを許可する」
『了解。極超音速ミサイル等も使用する』
残った1機の爆撃機に対して9機の戦闘機から全てのミサイルが発射され、最後の爆撃機に命中した。結果民間地域に被害が及ぶことなく完全爆破に成功したが2機の戦闘機が爆発に巻き込まれた。8機の戦闘機を失ったがボルドー空軍の爆撃機を全機撃破することに成功した。
「MH-1よりMH-A司令部へ。敵爆撃機を全機撃破。これより基地に帰投する」
『MH-A基地司令よりMH全機へ。被害状況の共有を行うため基地へ帰投せよ』
『了解』
その後、基地に帰投し、4機の爆撃機の完全撃破による民間地域への被害が無いことが確認されたが岩国基地に破片の一部が降下し滑走路が閉鎖された他、8人の殉職が確認された。基地司令以下基地隊員全員がこのボルドー空軍の特攻で亡くなられた全ての民間人と自衛官に黙祷の意を捧げた。
「これで終わりか・・・今度は我々が反撃に出る番だ!次の司令があるまで待機または休息を取れ!」
「了解!」
このようにしてボルドー空軍の爆撃機による特攻は日本のみならずアメリカなどでも30万人を越える死者を出した。アスキー指導の企みは成功したらしい。
ボルドー国 国防委員会
アスキー指導は全爆撃機の任務が完了したことを受け、ニヤリと笑みを浮かべた。
「指導、我が空軍の勇敢な活躍により敵国の各都市へ大規模な被害を出すことに成功しました」
「うむ。無謀な作戦だとは思われたが彼らは見事我が国のために貢献してくれた。彼らには安らかに眠っていてほしい」
「ですね!」
ボルドー空軍はこの8時間以上の攻撃で全100機の爆撃機を失った。しかし、日本国内で55万、米国で30万、グレーシス共和国で15万の被害を出したことに成果を得たと実感したようだ。アスキー指導の愚かな企みはまだまだ続くのかそれとも国際同盟側が食い止めるのか否か注目である。




