9-63 反撃の意思 2 -苦闘-
ボルドー空軍の爆撃による北海道特攻から30分後
北海道千歳市 航空自衛隊千歳基地
「被害状況確認のため速やかに離陸せよ!」
「了解!」
千歳基地所属の第25飛行隊は被害状況の確認のためF15戦闘機とF35戦闘機による緊急発進を行った。およそ30分前、ボルドー空軍の爆撃による特攻で札幌市や千歳市、函館市などの北海道の主要都市に墜落しことにより大爆発が起きた。
「こちら15-1(フィフティーンワン)。これより札幌市の被害状況を確認する!」
『了解。二次被害に警戒せよ!』
F15-1(フィフティーンワン)の岡留二等空尉らが操縦した飛行隊は札幌市上空に到達した。その他にも釧路市や函館市上空に到達した飛行隊との通信を取った。
「これは・・・ひどいな・・・」
岡留の眼前には辺り一面に広がる炎、崩れ落ちた建物の間に間一髪生き残った市民と思われる人がいたりとその札幌市は地獄と化していた。
『こちら釧路市上空偵察機。釧路市内の状況を報告する。釧路市の被害レベルは4。二次被害の可能性はないが復旧には時間がかかると思われる』
「了解。こちら札幌市上空偵察機。札幌市内の状況を報告する。札幌市の被害レベルは9。札幌市全域が壊滅的被害を受けてている」
『了解。こちら函館市上空偵察機。函館市の状況を報告する。函館市の被害レベルは6。未被害地域もあるが被害を受けた地域は壊滅的である』
自衛隊が定めた被害レベルというのはレベル1と2が復旧可能レベルであり、レベル3と4が復旧にある程度の時間がかかると思われるが復旧可能、レベル5と6が復旧困難、レベル7と8が復旧不可能、レベル9が壊滅的被害であり、レベル10が全滅である。
今回、札幌市に墜落したボルドー空軍の爆撃機は3機であり、その中に配備していた爆弾やミサイルが大爆発を引き起こし壊滅的被害を被った。道庁も崩壊しているため移転が必要となってくる。また、函館市に関しては被害を受けた地域と受けていない地域で差が出てしまっている。
『千歳基地より偵察機全機へ。被害状況を確認完了次第、基地に帰投せよ』
「了解」
一時間半の偵察後、各偵察機は千歳基地に帰投した。この千歳基地もこの爆撃機特攻の際に破片やミサイルの一部が降ってきて3機の戦闘機が使用不可能になった。
「これは復旧までに相当の時間がかかりそうだぞ・・・本土の方は大丈夫だろうか・・・」
基地帰投後、偵察機のパイロットらは基地司令官と飛行隊長に報告を行った。札幌市の全域が被害範囲であることと今後死者・行方不明者は急増していくということ、札幌市内の医療施設も機能不全に陥っていることや札幌市長の安否が分かっていないことから日本政府に存続危機要請と臨時道庁設置を求めた。
同日 青森県三沢基地付近
北海道の都市に爆撃機による特攻後、残りの爆撃機らは青森県の三沢基地に照準を定めた。三沢基地は攻撃に備えてPAC4,5と地対空地上配備型防衛システムを配備している。
「敵航空機の飛来を確認!飛行経路を確認します!」
「了解!」
「飛行予想経路出ました!高度・速度・距離より敵接近航空機は20分後に本基地へ!」
「やはりか・・・!それで被害予想は!」
「千歳基地からの報告を参考にさせていただきますとここに落ちたら間違いなく全滅かと・・・」
仮に三沢基地にボルドー空軍の爆撃機による特攻があった場合、2機以上で間違いなく三沢基地及びその周辺は更地となる可能性がある。何としてでも阻止しなければならない。そのためここで大事なのは基地司令官の判断である。
「山彦第24飛行隊長!境第23飛行隊長へ。基地所属の全戦闘機に緊急発進を命令する!あらゆる手段で敵機を撃墜せよ!」
「了解!」
福尾基地司令官は彼らに緊急発進を命令した。三沢基地所属の戦闘機は全25機が発進し迫り来る驚異に対応した。
「大湊基地より報告!」
「読み上げよ!」
「了解!【本基地所属の護衛艦により敵爆撃機2機を対空ミサイルで撃墜に成功した。しかし撃墜成功後、大爆発が発生し大湊基地全域が損傷した。負傷者も多数。三沢基地も警戒せよ】とのことです」
「撃墜に成功してもしていなくても被害が出るというのか・・・」
しかし、撃墜失敗で基地全滅よりも撃墜に成功して被害を最小限に抑えることが出来るのであれば確実に後者を選ぶ。
「緊急発進中の全機へ!敵機を確実に破壊せよ!敵機周辺に護衛機はいるか!?」
『こちら野本。敵機周辺に護衛戦闘機無し。彼らから撤退の意思はないようです。確実に仕留めます!』
その後、接近するボルドー空軍の爆撃機を陸奥湾で攻撃した。基地所属の全25機のミサイル攻撃により爆撃機3機の撃墜に成功した。しかし、撃墜後の大爆発により8機の戦闘機が巻き込まれた他、破片などが青森県の一部の市町村に落下し負傷者が出た。
「敵機の撃墜に成功!基地全滅は回避された。これより基地に帰投する!」
「了解!」
しかし北海道の死負傷者は52万人、青森県の死負傷者は1万人と二道県だけで53万人が犠牲となった。三沢基地所属のF35も8機の8人のパイロットが殉職した。
「被害に遭われた方に哀悼の意を捧げる。黙祷」
基地帰還後、巻き込まれた民間人や自衛官らに黙祷を捧げた。
同日 首相官邸
大島総理大臣はボルドー空軍の爆撃によって北海道や青森県にて50万人を越える死負傷者が出たことにより緊急の記者会見を開いた。
「現在ボルドー国空軍による類を見ない攻撃により北海道と青森県で大きな被害がありました。現地の自衛隊によりますとボルドー空軍の爆撃機がミサイルや爆弾を大量に積み都市への特攻を行ったということです。米国政府やグレーシス政府さらには国際同盟の加盟国にまで被害が出ている状況にあります」
「総理!被害状況はどうなっているのでしょうか!自衛隊の対応は正しいのでしょうか!」
「現在自衛隊が対応に追われており、彼らの対応は適切だと思います。また北海道と青森県の二道県だけで50万人越えの死負傷者が確認されました。我々政府の対応としては大至急復旧を行うため激甚被害地域復旧部隊を派遣します。そして今後同様の事態が発生する可能性があります。そのため我々政府は国家存立危機事態と認定致します」
国家存立危機事態は日本転移後に改訂され、国家及び国民の生命・自由及び幸福追求の権利が根底から覆される事態になったことを指す。
「総理!ここにもその特攻する爆撃機が来るのでしょうか!教えてください!」
「その可能性はあります。この会見終了後、防衛省周辺及び都内に自衛隊の部隊が展開されます。速やかに退避をお願いします」
その後、すぐに会見が終了し記者たちは避難を開始した。大島総理は国際同盟に被害状況の共有を求めた。しかし
「【こちらも被害が著しく悪く状況の確認が出来ない】だと・・・!アメリカはどうだろう・・・?」
大島総理はベッセマー大統領に連絡した。
「お疲れ様です大統領。そちらは被害どうなのでしょうか?」
『我が国はボルドー空軍の攻撃によりシカゴ、マイアミ、オンタリオなどの都市が壊滅的被害を受けた。幸い首都への防空には成功したが残骸の落下による被害が大きかった。そっちはどうだ?』
「我が国は北海道と青森県で50万を越える被害が出ました。非常にヤバい状況です」
『分かった。米海軍の派遣を行う。間に合うかどうかは分からないが協力しよう』
「感謝します大統領。では」
電話終了後、総理らは官邸地下の官邸対策室にて被害状況の確認と自衛隊部隊への命令などを出した。本来自衛隊の指揮権は開戦後に国際同盟に渡ったたが向こうの方から一時的に指揮権が返還された。
「最悪の事態も想定しないといけない・・・」
最悪の事態と言うのは東京へのボルドー空軍の爆撃機特攻による首都機能崩壊である。これは絶対に避けなければならないのである。




