9-55 八丈島解放 終
戦闘映像のライブ配信の翌日、d地区解放を目指す第1・第2任務部隊はボルドー軍の本拠地である八丈島空港周辺を取り囲んだ。第1任務部隊の神宮寺は本拠地内にいるならず者に警告を発した。八丈島空港に向かうまでにゲリラ攻撃を受けたが何とか排除することに成功した。
「全てのボルドー兵とその指揮官に警告する!この時間より1週間以内に投降せよ!しかし、1週間以内に成される行動が無かった場合、我々は君たちを戦意ありとして強行突破と初動空爆による部隊殲滅を開始する!」
6月16日8:00に神宮寺はボルドー軍に警告した。1週間以内であるため6月23日8:00がタイムリミットである。
「神宮司隊長、1週間で良かったのでしょうか?余りにも長過ぎだと思うのですが・・・大丈夫なのでしょうか?」
「構わない。彼らにはこの1週間で死というものを覚悟してもらいたい。だが1週間後のこの時間は彼らは我々の捕虜になっているかそれともあの世に行っているかどうかの二択だ。それと、どうせあのヤバい薬を使って攻撃してくると思うから十分に気をつけなければならない」
「了解です!」
八丈島空港周辺には巨大なバリケードが張り巡らされている。まずはその壁を壊さなければならないが迫撃砲を用いても穴が空いたり崩れたりする予兆は無かった。また、神宮寺は第18戦闘航空隊に航空支援を要請するも母港にて燃料補給や整備などの都合により航空支援は5日後になるため1週間以内のタイムリミットになったのである。
「しかしこのバリケードは固いなぁ・・・何なら壊せるのだろうか?」
「彼らの作るものは全て我々に害しか無いですね・・・」
その通りである。ボルドー兵が設置したこのバリケードは戦車の砲撃すらも通さない超頑丈な作りになっている。しかし、弱点としては10回以上の連続攻撃や酸性をかけると脆くなるという弱点があるのだがまだ自衛隊側には気づいていない。
「総員!このバリケードの性質や弱点を2日以内に調べよ!」
「了解!」
しかし、夕方になってもそびえ立つバリケードの突破方法や弱点を掴むことは出来なかった。
一方1日目を耐えきったと感じたボルドー軍側は
「隊長、敵部隊が到頭我々の拠点周辺に集結しましたが1日ではここを陥落させることは不可能なようです。1週間という長い期間がありますので籠城といきますか?いかがしますか?薬物を服用しますか?」
「まだ薬は服用しない。だが万が一の時に備えて服用できる状態にしておくこと。そして、効果を強めておくことを他の連中にも伝えておいてくれ」
「了解しました」
八丈島での戦闘が始まってまもなく7日が経過した。長いようで短く感じた。それまでにどれくらいの人間が死んだのか分からなかった。ボルドー軍の隊長はあまり寝つけなかった。自分は1週間後どちらの選択をするのかということに。
6月17日10:00
残り5日の間にバリケードを破壊しなければ中に入れなないとなれば登るしか選択肢は無い。しかし、ソロで行くのにはあまりにも危険すぎるためペアで行くこととなった。6人1組×3組の18人がよじ登って行った。
「隊長!登りきりました!あとは降りていくだけです!」
「バカ!声を出すな!敵に見つかるだろ!」
「すみまs」パーン
気づかれたのか18人は一斉に攻撃を受け血の雨が降り注いだ。狙撃された18人全員が脳や心臓付近に撃たれたため即死となった。神宮寺は頬に浴びた血を拭き取りこの作戦は隊員らを危険にさらすだけのものになってしまうと判断したのかこの作戦は中止となった。
撃たれて死亡した18人は衛生部隊によって処置が施された。神宮寺は自分の責任で18人が無駄死にしてしまったことに後悔した。
「皆申し訳ない。私の指揮のミスで18人が犠牲となってしまった・・・本当に申し訳ない!」
「悪いのはすべてボルドー兵です。神宮司さんは悪くありません」
神宮寺はその言葉に感謝の意を示した。しかし、この作戦がダメならば他にどのような手段があるのか試行錯誤考えた。
「ドローンを使うのはどうでしょうか?」
「ドローンか・・・分かった。使ってみよう。しかし、ドローン部隊を今から派遣要請すると明日以降になるため今日はここから撤収し第5第6大隊と合流しよう」
「了解です」
その後、第1・第2任務部隊は食料や拠点作成担当の第5第6大隊と合流した。第5大隊が料理した食べ物は極上で第6大隊の設置したキャンプ地は快適で久しぶりに吸い込まれるかのようにシュラフに身を包んだ。
2日目も突破することが出来なかった自衛隊をボルドー兵は嘲笑った。
「ふははは!この難攻不落な拠点を落とすことは不可能だ!我々は明日も明後日も完璧な守備を見せ粘っていくだろう!」
「ここまで我々の損失ゼロはすごいですね。やはり籠城は最高です。それに対して我々の攻撃で相手は18人が死ぬとは・・・もったいないですね」
「そうだな!明日も耐え抜いて見せよう。まさかとは思わないがこの中で敵軍にビビって投降しよう等という愚か者いないよなぁ!」
敵部隊の隊長は声を荒らげて威嚇した。
「もちろんです!」
部下は声を揃えて言った。しかし、中には投降するべきという考えを持った隊員も昨日まではいたがその隊員は裏切りと判断され処分された。
6月18日13:00
二度寝してしまい13時まで寝てしまった神宮寺は飯を食べ、部下と合流した。昨日派遣要請したドローン部隊に関しては19日に到着すると伝えられた。今日は敵拠点周辺の調査と弱点を探った。
「この壁をどうにかして破壊したいのだが迫撃砲や戦車砲でも無理なら何が有効なんだ・・・?益々分からなくなってくる・・・」
「神宮司さん!穴を掘るのはどうですか?」
神宮寺は地中からの拠点侵入を提案された。しかし、彼らも鈍くはないため掘っている途中で地上に上がって来たとしても囲まれて射たれて死ぬという未来が見えている。
「地中からはダメだ。正面突破が好ましい」
その後も二手に分かれて攻撃を開始する作戦や第3空挺団の派遣要請を検討するもどれも敵の的になってしまうと考え全部ボツとなった。夕方になり隊員らも苛立ちを見せた。
「いい加減投降しろよ!ボルドー兵は自分の命をそんなに軽く見ているのかどうかは知らないが投降したら三食の上手い飯があるんだぞ?!」
「そこじゃないんだろうな・・・彼らには彼らなりのプライドがあるのかもしれんな」
そう考えている内にもう1日が終わった。仮に正面突破できても薬漬けにされた彼らと戦うとなると相当な犠牲を払うかもしれないと考えた。
拠点周辺を囲まれて3日が経過しても食料や備蓄に余裕があるボルドー軍は予祝をした。
「今日はたくさん飲みまくれ!敵は疲労で一杯だ!あと4日耐えきるぞ!」
「うおぉぉぉぉぉ!ボルドー国とアスキー様に万歳!万歳!万歳!万歳!万歳」
「(くくく・・・敵の勢いは完全に失った。もはや我々の勝利としか思えんな)」
隊長は肉を頬張りながら酔っぱらう部下を見ながらニヤリと笑みを浮かべた。
6月19日11:00
神宮寺がボルドー兵に対して1週間のタイムリミットを設けてから4日が経過し半分が過ぎた。本当に23日に終わるのかということを考えながら第1・第2任務部隊はドローン部隊の出迎えをした。
「第1ドローン隊の村田です!よろしくお願いします!」
「第1任務部隊の神宮寺です。支援大変感謝します」
第1ドローン隊は攻撃型と偵察型のドローンを10機ずつ持ってきた。
「午後より飛ばしたいと思います。まずは空腹なので何か食べたいです」
村田第1ドローン隊長以下20名は出発からカロリーメイトと水分以外何も口に含んでいないためお腹が空いてしまったため早めの昼食を取った。
時刻は13:00となり1時間に1機ずつ飛ばした。しかし、敵の防空兵器によって制御不能になり墜落してしまったドローンもあった。敵の手に渡ってしまい嫌な状況になっていった。結果的に戻って来れたドローンの数は攻撃型2、偵察型4の6機しか帰還できなかった。
「申し訳ないですが神宮司隊長、我々はここまでです。敵の防空網が想像以上に固くただ闇雲にドローンを消耗するだけのみとなってしまいました」
「大丈夫です。ありがとうございました」
その後、ドローン部隊はわずか8時間で本土に戻ることになった。ドローン単体では無力であると判断し神宮寺は第18戦闘航空隊の到着を待った。肝心の第18戦闘航空隊は天候不良によって明日となった。
4日目も自衛隊の攻撃を防いだボルドー軍は今日も宴で盛り上がった。何せ自衛隊の最新のドローンに興味津々の兵もたくさんいた。
「敵より20の無人機が飛んできたため16機を我々が回収しました」
「良くやった。この戦闘が終了次第本国に送るとしよう」
「了解です!」
6月20日14:00
5日前に要請した第18航空戦闘隊がようやく到着した。航空戦闘隊には多くの爆弾が装備され航空支援で片付ける作戦に出た。
「頼む。ボルドー軍を蹴散らしてくれ・・・」
第18戦闘航空隊(以下18戦空)は20機編成でボルドー拠点航空隊と空中戦を繰り広げた。序盤は相手が優勢であったが18戦空の活躍により全機撃墜に成功した。航空戦力の主力を失ったボルドー軍は18戦空に爆弾やミサイルをあちこちに放ち制空権を奪取した。
「ナイス!18戦空!」
『こちら18戦空。敵航空戦力と地上戦力の3分の1を殲滅完了。これより母艦に帰投する』
「了解!」
18戦空のミサイル攻撃によって一部のバリケードが崩壊した。また、対空兵器も打たれる前に破壊したため損失を最小限に食い止めた。これをチャンスと見たのか神宮寺は突入を命じた。
「総員!突入!敵の動きに警戒し速やかに殲滅せよ!」
第1・第2任務部隊全員が拠点内に侵入し激しい銃撃戦を繰り広げた。あまりの形勢逆転によりボルドー軍の指揮系統は完全に崩壊した。
「投降せよ!武器を置け!置け!」
拠点内では多くの怒号が飛び交った。夕方そして夜になっても激しい戦闘を続いた。どちらかが降伏しなければ終わらない状況となり到頭21日に入り日付をまたいだ。
「くそ!どこに行きやがった!ここの指揮官は!まさか逃げやがったな?」
探しても探してもボルドー軍の隊長を見つけられなかったが茂みに隠れているところを7:30分頃に発見し、隊長を確保した。
『敵部隊の隊長を確保。繰り返す、敵部隊の隊長を確保』
「了解!」
その後、ボルドー軍隊長が確保されたと知りボルドー兵は投降してきた。5日間による長い拠点攻防戦の末、自衛隊の勝利で幕を閉じた。
「現時刻の6月21日8時23分をもって八丈島の完全解放を宣言する!我々の勝利だ!」
その後、ボルドー軍の部隊の隊長らそれ以下の兵士たちは捕虜として日本国内に移送された。また、完全解放に成功した自衛官たちはこの戦闘で亡くなった1万人の自衛官に哀悼の意を示した。そして、一部の部隊は撤退するがインフラ整備などで100人が八丈島に残留した。
ボルドー軍による八丈島占領から2か月、そして自衛隊による奪還作戦開始から11日。この長きに渡る八丈島解放作戦は自衛隊による勝利に終わった。また、拠点から発見されたボルドー軍が服用したと思われる薬物を回収し日本国政府と国際同盟に調査を開始させた。




