9-49 八丈島解放 6
6月13日 13:40
第1第2大隊はb地区目前にてボルドー軍の捨て身攻撃部隊を排除した後、b地区にて警戒中のボルドー兵を攻撃し、捕虜の居場所と人数を問い詰めた。攻撃中、執拗に抵抗するボルドー兵に対して降伏後の厚待遇を約束させた。
「この地区にいる全てのボルドー兵に警告する。今より12時間以内に投降しなければ射殺する!繰り返す!12時間以内に投降せよ!投降後の安全を約束するがこれに応じなかった場合、速やかに射殺を実行する!」
神宮寺大隊長は厳しい言葉で降伏を命じた。捨て身攻撃によってこのb地区を守備していた6000人のうち4000人がすでに命を落とした。しかし、一部のボルドー兵は抵抗するものもいた。
「大隊長!b地区南部付近にて抵抗中のボルドー兵が我が隊に向けて発砲!負傷者13人、死者7人を出してしまいました!」
「くそ!」
神宮寺大隊長は再度警告を発した。
「b地区を選挙している全てのボルドー兵に警告する。12時間以内に降伏しなければ我々は君たちを殲滅する行動に出る。抵抗するならばそれなりの覚悟を持って来い!」
第1第2大隊はボルドー兵の長い抵抗にうんざりしている。神宮寺大隊長は彼らが降伏しない理由を考えた。
「(何故だ・・・なぜ彼らはそこまでして我々に抵抗を続けるのか・・・そんなに射殺されたいのか!気が狂いすぎだろ!そもそもあの捨て身攻撃に意味はあったのか・・・これは本国に伝えなければならないな)」
神宮寺大隊長は作戦司令部に伝えた後、大島総理と加藤防衛相にも伝えられた。政府の返信が2時間で返ってきた。
「大隊長、作戦司令部より日本政府の今後の敵軍による捨て身攻撃に関しての反応です」
「了解。読んでくれ」
「分かりました。【八丈島奪還作戦遂行中にてボルドー兵による特攻があったという報告を受けた。我々日本政府の見解としてはこれはボルドー政府の判断力欠如そして大切な国民を意味もなく死なせるボルドー政府に強い憤りを覚えた。我々はこの行為を見過ごす事は出来ないが作戦遂行中の隊員の安全を考慮して射殺ではなく脚部への射撃によって無力化せよ。危険を感じた場合速やかにその場から離れるのもひとつの手段でもある。また、このような作戦を遂行する敵司令官を拿捕せよ】と返信が来ました」
簡単に言うと日本政府はボルドー兵が自衛隊部隊に対しての攻撃の際に特攻による無意味な攻撃で命を落とした兵らを指揮している司令官を探しだし速やかに身柄を拘束せよということや身の安全を確保して攻撃せよということである。
「なるほどな・・・」
そして、12時間のタイムリミットのうち6時間が経過した。最初はほとんどゼロだった投稿人数が徐々に増え始め500人が投降した。しかし、以前b地区内には1000人以上が潜伏している。神宮寺らは捕虜のボルドー兵に対してこう質問した。
「君の判断は正しかった。君の名前は?」
「ヴェル・マール・アスクルです」
「私の名前は神宮寺だ。よろしく頼む。ひとつ聞きたいのだが良いか?」
アスクル中隊長は息を整えて話をした。
「何でしょう?」
「我々がここに来る前君らの部隊は無謀な捨て身の特攻した。それも急にだ。何か危険な作用のある薬でも飲んだんじゃないのか?」
「我々は昨日に夜間でも集中できるよう国の労働省が製作した試薬品を飲まされました。体質によって効果は異なるのですがほとんどの場合、脳などが覚醒する感じで、気が狂ったように暴れる作用があります」
ドーピングより危険な薬であった。しかし、平常心を保てているこの兵士は飲んでいないのか質問した。
「君はその試薬品とやらは飲んでいないのかい?」
「飲んでいません。全員に支給されたあと私は数人の仲間と飲んだふりをして吐き出しました。そのお陰で今は平常心を保てています」
「なるほどな・・・今その試薬品は持っているか?」
「はい。このビンに少し残っています。どうぞ」
神宮寺はアスクル中隊長から受け取ったビンの中身を確認した。蓋を開けると匂いは強烈な匂いであった。非常に臭かった。匂いを嗅いだとき一瞬倒れそうになった。色は半透明であった。
「これを飲んだのか!今すぐに捨てるが問題ないな!」
「はい!大丈夫です!二度と見たくありません!」
そのあと神宮寺は匂いを耐えながらサンプルを回収した。これを国際同盟に提出する。
「これは国際同盟に出さなければならない危険薬品である。これは人が平然と飲んではいけないものであることをよく覚えておきなさい!君たちは今後捕虜として日本国に輸送され、健康体であるかどうかの確認のため検査診断が行われる」
「分かりました・・・」
彼らが特攻した原因がこの試薬品であることが分かった。神宮寺は他の隊にも連絡後、作戦司令部にこの旨を伝えた。
「八丈島攻略中の全隊員に緊急連絡。ボルドー兵の突然の特攻は彼らの国から支給された試薬品による平常心の崩壊によるものである。各自注意して作戦遂行せよ」
『こちら第一空挺団、原因解明に感謝する』
『こちら第3第4大隊、報告感謝する』
それから4時間、神宮寺はその場で捕虜が投降するのを待った。しかし、タイムリミットが近づくに連れて段々と投降する兵士の数は減っていっている。
「a-9聞こえるか?」
『聞こえます!それと大隊長、大変です!ボルドー兵が次々と自爆していっています!』
「何!?それは本当か?どういう状況か教えてくれ」
神宮寺はいささか信じれなかった。投降後の身柄の安全は保証されるというのに自害する理由が考えられなかった。ボルドー兵の思考回路は狂っているのかと感じた。
『了解です。彼らは自爆する直前に【我らの最高指導者アスキー様万歳!】や【アスキー様に栄光あれ!】と叫びながら自害していく兵士が増えていっています』
ボルドー兵は昔の日本兵のようになってきてしまっている。投降して敵の捕虜になるくらいだったら死ぬ方がよっぽど良いという考えに変わってしまっていた。
「報告感謝する。今は身の安全を確保せよ」
『了解』
自衛隊員らは彼らの自爆に対して何もすることが出来なかった。逆にこの自爆を見て何も感じない隊員はおらず一部の隊員で戦闘ストレス反応が出る隊員もいた。
「(タイムリミットまで残り2時間、果たして残りの敵は全員自爆するのか・・・)」
神宮寺は14日1時40分まで残すところわずか2時間となった状況に今後彼らから投降する者は現れるのか注目している。




