9-48 八丈島解放 5
6月12日13時
八丈島解放作戦が開始して2日が経過した。その間に第1第2大隊はb地区に迫っていた。しかし、b地区に向かう途中であちこちとボルドー兵が現れてきた。
「うぉぉぉ!日本兵を殺せぇぇぇ!」
「うぉぉぉ!日本兵だ!打ちまくれぇぇぇぇぇぇ!」
「アスキー指導万歳万歳ー!」
気が狂ったかの如くボルドー兵は第1第2大隊に攻撃してきた。その数およそ1500人。それ以上いる可能性もあるなか第1第2大隊の隊員700人は反撃した。しかし、支援を頼もうにも第18・19軍団は神湊の警備をしているし、第2水陸機動団は上陸には成功したは良いものの故障の間に攻撃を受けていて苦しい状況にあるらしい。
「うっ!」
「くっそ!耳を持ってかれた!痛えぇ!」
「衛生!こっちだ!急いでくれ!」
ゲリラ攻撃によって大隊の連携は不十分であった。そのため不意を突かれて攻撃を受けたことにより多くの死傷者を出した。特に第1第2大隊は射っても射っても敵を減らせずかなり苦労している。神宮寺大隊長は全滅も覚悟したが、応戦によって抵抗は何とか出来ている。しかし、次々と撃ち殺されていっているボルドー兵の死体に嘔吐する隊員もいた。
「うっぷ・・・具合悪くなってきた・・・吐きそう」
「大丈夫か!そこで落ち着いてゆっくりしてろ。総員!体調が少しでも感じたら休め!」
「了解」
「(まずいな・・・士気が落ちてきている。このままでは今度はこっちが死体の山に・・・いかんいかん。変なことは考えるな。俺は大隊長だ。大隊長が弱音を吐いていてどうする!)」
するとb地区の方からまた声が聞こえてきた。その声は次第に近づいてくる。動けるもので何とかしようと必死に銃口を声が聞こえてくる方向に向け、引き金に指をかけた。
「日本兵を、日本兵を潰すのだぁぁぁぁぁ!」
「偉大なる最高指導者に栄光をぉぉぉ!」
などの声が聞こえてきた。
「(イカれてるだろうもうこれ。どうしようもないヤバイ集団になってきたなやつらは)」
「(洗脳されているとしか思えん)」
数分後、ボルドー軍の大軍が一斉に突撃してきた。しかし、武器を持っていなかった。死ぬ覚悟で来ているように見える。身体中に爆弾をくくりつけているのを確認した。
「隊長!彼ら捨て身で攻撃してこようとしています!どうしますか!射撃しますか?」
「構わず射て!射ちまくれ!」
その結果、第1第2大隊の射撃によってボルドー兵の体にくくりつけてあった自爆装置が起爆した。後ろから突っ込んでくる兵士も巻き込まれていた。第1第2大隊の眼前には血の海が広がっていた。これには耐えきれず吐いてしまう隊員もいた。
「なぜ彼らは捨て身で突進してくるのか理解できん!」
「それは私に言ってもどうにもならないです!とにかくb地区に向けて先に進みましょう!」
「了解。総員、足元に注意して前進せよ!」
上陸2日目にして神宮寺らは捨て身の攻撃をこの時代でやってくるとは思いもしなかったがb地区に向けて再度前進した。神宮寺はこの先どうなっているか想像もつくことが出来なかった。
同時刻、大坂トンネル展望台付近まで来た第1空挺団は先程の大声が何だったのかについて話していた。ここからb地区までは5km程度離れているがそれでもうっすらと聞こえてきた。
「さっきから何なんだ。うおぉぉぉだの何だの、万歳突撃でもしてるんか?」
「今昭和でも平成でも無いのにそんなことする国ないと思うよ」
「そっか流石に無いか・・・!」
すると再び同じような声が聞こえてきた。
《偉大なる最高指導者に栄光をぉぉぉ!》と。
「確かに聞こえたな。距離的にc地区で無くb地区の可能性がある。それとこの辺に敵がいないか十分確認せよ!」
「了解。それにしても全部は聞こえなかったけど彼らの行動ヤバすぎない?いくらなんでも「柿本後ろ!」」
「え?」
「貴様らアスキー様の悪口を言ったな!射て!」
トンネルの中からわらわらとボルドー兵が第1空挺団を発見した瞬間に射ってきた。突然のあまり柿本は撃ち殺された。敵の発砲によって第1空挺団員は応戦したが敵の数は減るどころか増えていく一方だった。岡田副団長はトンネル内の敵部隊一掃を命令した。
「撃ち続けろ!敵はトンネルから攻撃してくる。一ヶ所にまとまらず分散せよ!」
「了解!」
「(上本団長ならこの場合どうする!考えろ!考えるんだ!)」
しかし、敵に攻撃されている状況で作戦など考えている場合ではなかった。今はどのように敵を倒していくかが重要だった。すると無線が入った。
『こちら第18戦闘航空隊。第1空挺団はその場から速やかに退避せよ。これよりトンネル内部の敵を殲滅するため地中貫通爆弾を投下する』
「通常爆弾で十分だ!地中爆弾を投下したら我々が通れなくなる!」
『了解。通常爆弾で攻撃する』
その後、第18戦闘航空隊は第1空挺団の退避を確認後、対地爆弾を投下した。結果的にトンネルは崩れたものの人が通れるスペースは確保されていた。しかし、攻撃は当然のように停止したがこの瓦礫の下敷きになっているボルドー兵がいることにゾッとした。c地点に向かう第1空挺団や第1第2大隊はボルドー兵のここ数時間での行動や言動の変化、捨て身攻撃の意味を理解することが出来なかった。




