9-39 アスタキサンチ会談
6月3日、日本・アメリカ・武蔵連邦・アコースティ・グレーシス・国際同盟の代表が戦後のボルドー国に対する占領政策を話し合う会談がアズール民主国の北西部のアスタキサンチで行われた。日本からは川野外相と門脇防衛相補佐官が出席した。
「これより対ボルドー国への戦後の占領政策について議論して参ります。まず、軍事力の方からですがご存知の通りボルドー軍の残存戦力はおよそ6500万人。これほどの人数を一度で武装解除する他、占領を行うと500万人規模の部隊が必要になります。年内の終戦は厳しいと考えられます」
川野外相は映像資料を出しながら話を続けた。その前に武蔵連邦国の圃国防相が挙手した。
「川野外相、ボルドー軍の残存戦力は把握しましたが終戦後はこの国をどのように扱うのでしょうか。また、捕虜返還も行われていくのでしょうか」
「捕虜返還に関しましては終戦後、捕虜の健康診断を実施した上で母国に返還します。武蔵連邦軍の捕虜は現時点では470名が捕虜となっています。また、終戦後のボルドー国の処遇に関しましては国際同盟が首都・サバーロを委任統治を行うと通達が昨日ありました」
ボルドー国首都・サバーロは終戦後、国際同盟軍によって占領される予定である。また、それ以外の地方は独立またはG7各国の判断での分割統治が認められる。予想される自衛隊の派遣部隊人数は治安情勢を考慮して5万~10万規模の部隊を配置する計画がある。一方のアメリカは40万規模の部隊が派遣可能である。
「ふむ・・・ですがボルドー国を地理的に見ると年内で終戦は難しい可能性があります。もちろん年内終戦は理想的ですが来年も戦闘継続を続ける計画もなければなりません」
武蔵連邦軍の総戦力137万人のうち50万人が作戦従事している。そのうち8万人の死傷者を出しているため翌年以降の戦闘継続はかなり厳しくなってくると圃国防相は連邦軍の戦闘継続能力を心配していた。
「次に参ります。ボルドー国の降伏後、アスキーの処罰をどういたしますか?」
米国代表のオルレア国務長官が挙手した。
「我が合衆国からしましてはボルドー政府全員が戦争に加担していると見ているため、国際同盟に懲役30年以上または死刑を要求します」
「死刑ですか・・・私からすると死刑にするより重要な情報源ではあると思います」
国際同盟代表のヒョード司法長官は苦言を呈した。国際同盟の裁判の判決手段には死刑は導入されているものの司法局は死刑制度の撤廃を検討している。
「うーむ。では状況の変化次第で決めるとしよう」
その後、終戦後のボルドーに対する民主的政策や教育制度の改善、労働者の環境改善、非軍事化などについて話し合われた。これらは第二次世界大戦で日本の敗戦で行われた民主化政策を参考となった。ボルドー国の教育制度は国民小中高と国家大学を配置している。
非軍事化はボルドー軍の陸海空ミサイル軍に対して武装解除を命じ、1万人を定員とする国家警備隊を創設させる。国家警備隊は戦車や戦闘機、艦船の不保持とする。警察的役割を持っているため武器は拳銃または装甲車両にするなど二度と戦争できないようにさせる。
「さて、今日はこの辺にしときますか・・・第二回会談は9月に行うとしましょう」
こうしてアスタキサンチ会談は終了した。この会談による文書がまとめられ【アスタキサンチ宣言】が出された。各国首脳の名義の元宣言された。以下が宣言の内容である。
【アスタキサンチ宣言】(2028年6月3日「アスタキサンチ」において署名)
日本国「大島康二」総理大臣、アメリカ合衆国「ベッセマー」大統領、武蔵連邦国「昴」総裁、新国際同盟「メーリングリス」事務総長は各自の軍事顧問及び外交顧問と共に「アズール民主国」に於て会議を終了し以下の声明を発する。
一,各同盟国は陸海空路に依り其の野蛮なる敵国・ボルドーに対して弾圧を加える決意を表明せり。
ニ,各同盟国はボルドー国の侵略を阻止しそれらを罰する為今次の戦争を為しつるものなり。各同盟国は自国のために何等の利益を欲求するものとする。
三,各同盟国の目的はボルドー国が先の世界戦争の開始以後に於てボルドー国が奪取し又は占領したる一切の領土を剥奪すること並に困窮に苦しむ国民の解放を害するものを駆逐せらるべし。
四,以上の目的を以て各同盟国は同盟諸国中ボルドー国と交戦中なる諸国と強調しボルドー国の無条件降伏を必要とする重大かつ長期の行動を続行すべし
五,戦争終結後、ボルドー国政府・国民は国際同盟が指示する以外の一切の活動を禁ずる
六,当宣言は6月10日より有効となる。
これらが【アスタキサンチ宣言】の内容である。ボルドー国の国土は広大かつ世界最大の人口を抱える国であるため占領政策は難航する可能性がある。しかし、これらの宣言を出したことは同盟国にとって意義のあるものである他、ボルドー国の早期の降伏が期待される。
「今日はありがとうございました。ボルドーの早期降伏を目指して頑張っていきましょう」
その後、各国の出席者同士で握手をした。
一方、ボルドー国のアスキー指導は自治区の区長らを召集し【大帝国共同会議】を開催した。この会議で決まったことは主に日本やアメリカを含めた国際同盟全加盟国に対する武力的鎮圧と大帝国の繁栄を目的とするなどが決まった。
「この【大帝国共同宣言】を開催した意義はある。我が国と国民は日米の驚異を排除する責務がある。彼らの宣言を我々は黙殺する」
アスキー指導は【アスタキサンチ宣言】を黙殺する意向を示した。しかし、日米との融和を主張する親日米政治家は国家の裏切り者として追放された。黙殺によって日米を含めた同盟国の戦意はさらに高まって行ってしまう。
カイロ会談・カイロ宣言・大東亜共同宣言を参考にしました。