9-28 航空母機 終 -空の支配者の落日 -
航空自衛隊 入間基地
「国際同盟より新たな命令を受信した。ボルドー空軍の大型航空機の破壊を敢行せよ。と。これは日本のこれからを左右する大事な任務である。作戦開始!」
国際同盟軍からのボルドー空軍の航空母機への破壊命令により入間基地から24機、横田基地から13機、習志野基地から9機、羽田基地から15機、成田基地から14機の計76機の戦闘機とヘリコプターが出撃した。
「いよいよですね・・・ですが仮に撃墜に成功したとしても都内に落下する可能性があり、乗組員の確保が困難になるかもしれません。東京湾に落とすのが最適かと思われます」
しかし、ボルドー空軍の航空母機は横須賀上空から侵入しているため東京湾上空付近まで誘導することは不可能であるため、可能な限り住宅密集地から離れた所に落とさなければならない。
「α-1より司令部へ。各基地からの戦闘機・ヘリ部隊と合流を確認。20分後に敵軍機と接敵する」
『司令部よりα-1へ。20分後に接敵次第、敵軍機へ先制攻撃を許可する。速やかに撃墜せよ』
「了解」
入間基地所属のF35戦闘機のパイロット・其田を戦闘機部隊の先頭を任された。第1陣が其田甚吾、第2陣に福浦直毅、第3陣に斉條秀平、第4陣に助松平次の4部隊に分かれている。彼らは各基地所属の志願パイロットである。
「後10分で戦闘予想空域に到達!全機攻撃体制及びミサイル発射準備!」
空自戦闘機の4基のミサイル発射準備を完了した。これでいつでも発射可能である。また、万が一戦闘機部隊による撃墜任務が失敗した場合は海ほたると木更津などに配備されたPAC4-Fによる撃墜を行う。
このPAC4-Fにはボルドー軍から鹵獲した超動力ミサイルを改良したミサイルとパトリオットミサイルを融合させたミサイルである。
すると其田第1陣長が航空母機を発見した。周辺には17機程度の護衛戦闘機を確認した。
「α-1より司令部へ。敵航空母機と護衛戦闘機を確認。先制攻撃を開始する」
『了解。幸運を祈る』
「全機、ミサイル発射用意!射て!」
ミサイルを温存するため4発のうち、2発を使用する。其田の命令の元1、76機×2発の合計152発が航空母機に向かって行った。
「全機の2発ずつのミサイル発射完了、まもなく命中する!」
放たれた152発のミサイルは護衛戦闘機や航空母機の側面部、後方部に命中した。しかし
「敵航空機部隊にミサイル命中!護衛の敵戦闘機15機の墜落を確認!」
初動攻撃は成功した。17機のうち、15機を撃墜させられたため相手側からしたらかなりの痛手となる。また墜落した戦闘機は横浜都市郊外の非人口密集地に落ちた。
「α-1から司令部へ。初動攻撃成功、初動攻撃成功。敵護衛戦闘機17機のうち、15機を撃墜。至急墜落現場に救急班の派遣を願う」
「了解。救急班を急行させる」
15機撃墜後、航空母機の右側中央部から後方部にかけて黒煙が上がっているのを確認した。
「敵軍機体から黒煙確認!先ほどの攻撃でかなりのダメージを受けたようです!」
『了解。再度ミサイル発射を開始せよ』
そして再度ミサイル発射を開始しようとした瞬間、航空母機から一直線に向かって貫くような閃光が放たれた。
「一体なんだ!?」
この閃光攻撃により、串のように空自戦闘機の装甲を貫いた。30機以上が墜落する事態に陥った。また、爆弾倉庫扉の開口も確認され爆弾が投下された。
『其田陣長、恐れていた事態が発生しました。敵航空機の無力化を実行しないと二次被害が発生します!』
「了解・・・全機、再度ミサイルを発射せよ!」
其田の指示により、閃光ミサイルが発射された発射口及び機体全体への攻撃を開始した。この閃光ミサイルは1度の発射で3km先まで届くミサイルで、周辺にいる航空機を一気に貫く史上最悪のミサイルである。
「敵ミサイル発射口に命中!無力化に成功。また、滑走路の破壊にも成功しました!」
『了解。最終段階である撃墜を敢行せよ!』
発射口の無力化だけでは作戦成功とは言い切れない。撃墜するには航空母機のエンジン部分を破壊しなければならないのである。
「全機、敵の防御体制はゼロに等しい。エンジン部分と爆弾倉庫扉の破壊を開始せよ」
『了解』
*
一方、生き残った2機の護衛戦闘機すらも撃墜され、防御力を失った航空母機内では混乱が生じていた。
「敵機からのミサイル攻撃により、護衛戦闘機の全滅を確認しました。また、滑走路も破壊され、機内の戦闘機8機の離陸が不可能になりました。さらに中央部から後方部にかけて多数のミサイルが命中。この状態で行くと我々は1時間もしないうちに墜落するでしょう」
航空母機内のコントロールルームのベイサイ室長の報告により、機長は墜落も視野に入れて話を進める。
「そうか・・・持っても1時間か・・・物というのは作るのは難しいが壊れるのはあっという間ということか」
「・・・はい」
機長は無線を使い、機内の乗組員に対してアナウンスした。
「総員、敵の攻撃によりこの機体は墜落間近である。滑走路も使えない上、護衛の戦闘機すらも失い、最後の希望でもある閃光ミサイル発射口まで潰された。これは相手の作戦勝ちで我々は敗けである」
護衛戦闘機全機が撃墜され、成す術無しと判断した機長は墜落までの瞬間を待った。さらに話を続けた。
「今後一時間以内に敵首都に墜落する。敗けは敗けであるが敵に一矢報いるため全爆弾投下を開始する。残された爆弾倉庫は5部屋。この5部屋×40発の合計200発の散弾がある。これを使い果たす!作戦開始!」
空自による攻撃により怪我人も続出した。
「機長、我々はこれから何を・・・」
「この機体のメインエンジンなどは」
その時広報部で爆発がした。
『機長!エンジンが破壊されました!』
「何!?」
空自によるエンジン破壊が成功した。このエンジンの破壊により航空母機はバランスを保てなくなり、1時間の残りの飛行時間が20分まで短縮される。
「機長、これは安全に不時着するしかありません。この辺で海や都市から離れた場所はありますか?」
「分からない。だから機内にいる日本人捕虜を連れてきてくれ。急げ!」
5分後、日本人捕虜2人を連れてきた。
「君たちに問う。この辺で不時着する場合どの辺りにすれば良いと思う?10秒以内に答えてくれ」
「不時着地点・・・東京湾とかどうでしょうか。現在この航空機は横浜市上空を飛行しています。方向転換が可能であればこの案は最善かと思われます」
「そうか・・・トウキョウ湾か。そこにするか」
日本人捕虜の案を参考に地図を確認した。横浜市上空飛行中の航空母機は東京湾へ方向転換した。
「きっと我々が墜落したあと、直ぐに捕まるだろう。上手かと思っていたがこうもあっけなく終わるとは・・・」
「ですが機長、爆弾投下も完了し、現在ヨコハマ市は地獄と化しています。やり残すことはもう無いでしょう」
200発の小型~中型の爆弾を横浜市に投下した。幸い市民は避難しているため人身被害は無いものの建造物の崩壊等が発生した。
東京湾上空に差し掛かり、機長は再度アナウンスボタンを押す。
「機内にいる全隊員へ。これより東京湾に不時着を開始する。衝撃に備えよ」
黒煙や炎を上げながらボルドー空軍の航空母機は東京湾に不時着した。不時着の瞬間機体が大きく損傷し、浸水が発生した。機長は
「申し訳ございませんアスキー指導。私の力不足でした」
*
東京湾に墜落したボルドー空軍航空母機の周辺には海上保安庁の巡視船と海上自衛隊の救難艦が武器を携行して現場に急行した。
「こちら救難艦「でわ」。墜落現場に到着。敵機機体は大きく損傷。生存者の救出を開始する」
『了解。生存者発見次第、捕虜として保護する』
小型ボート18隻×6人の計108人が航空母機に乗り込んだ。写真で見るよりも一層大きいことが分かる。
「生存者を発見!動くな!武器を降ろせ!」
数名のボルドー兵士が武器を取り出したため海保隊員と海自隊員は射撃の構えを見せた。
「これよりあなた方の身柄は政府の監視下に置かれる。直ちに我々の所へ」
警告により武器を取り出したボルドー兵士は全ての武器を捨てた。
「・・・わ、分かりました」
すると通信にて
「真田、向こうで機長と日本人捕虜と見られる人物が発見されたらしい。この場はあいつに任せよう。頼んだぞ柳!」
「任された!」
真田らは小型ボートで連絡のあった場所へ向かった。
「こちら真田。敵機右側前方部にて機長と捕らえられていた日本人を発見した。特に機長は墜落の衝撃により重症と見られる。優先救助者として搬送する」
『こちら機体後方部の遠藤。了解』
航空母機長は機体の墜落による衝撃で機長の意識は薄れつつあった。直ぐに搬送用ボートも到着し、病院に搬送された。
「日本人捕虜の方ですよね?お名前をお聞きしても?」
「早島です」「福野です」
「早島さん、福野さん。健康診断・メディカルチャックのため自衛隊中央病院に搬送します。他に日本人の方はいらっしゃいますか?」
「他に5名います」
「分かりました」
その後、真田らは5名の日本人捕虜を捜索した。その結果全員の無事が確認された。5人の名は藤原、野々島、戸河内、河内、安藤の5名も搬送された。
「しかしこの機体どこに持ってくんのかな?」
「これ程でかいと海に沈めるか、それとも陸地まで引っ張るか・・・」
「沈めるのはダメだ。海洋汚染に繋がる」
何せ機体が大きいため陸地まで運ぶのには時間がかかることが予想される。そのためしばらくの間は東京湾周辺は封鎖される。
「さて、これで一段落したがまだまだ任務は続くぞ!」
「了解!」
墜落から16時間後、捕虜の搬送や遺体の輸送などで時間はかかったが無事作業は終了した。この航空母機の損失はボルドー国にとって大きな痛手となった。
この航空母機に対する戦闘でボルドー側は130人負傷,30人死亡、日本側は200人負傷、90人が殉職した。また、戦闘機の損失も両軍合わせただけでも150機以上が破壊された。
また、捕虜も多数いるため各地の収容施設に送られた。しかし、優先救助者として搬送された機長は年齢もあってか息を引き取った。彼の最後の顔は優しい顔をしていた。
*
日本国 首相官邸
「総理!朗報です!敵航空機の撃墜に成功しました。これは大きな勝利です」
「あぁさっき聞いた。しかし撃墜したと言うことは我々は敵乗組員を大勢の命を奪った。これは開戦直後からではあるが人間として冥福を祈らなければならない」
「分かりました」
総理ら閣僚は亡くなられた航空母機長や乗組員や空自隊員など対して深い黙祷を捧げた。
ボルドー国 指導部
「一体どういうことだ!我が国が何年もかけて作った傑作を1時間で撃墜されただと!?」
「申し訳ございません!」
「もう1機製造することは可能か?」
「不可能です!何せ機体が大きいため今から製造するにしても来年になってしまいます!」
「っ!」
アスキー指導は航空母機撃墜により危機感を募らせていた。すでに本土にも上陸されているため大型の航空機を作っている暇はないのである。
「私は・・・死ぬのか?」
アスキー指導はそう考えていた。今後、劣勢になっていた日本の勢いが再び加速する。果たしてこの戦いを生き残るのは誰なのだろうか。




