9-27 航空母機 6 -両者の思惑-
国際同盟 安保会長室
「議長、先ほどボルドー国から発射されたミサイルが接近中です!30分後後に着弾する予定です。大至急退避をお願いします」
「遂に国際機関まで手を出したか・・・これは現在行動中の同盟軍が全力でボルドー国を潰さなければならない。しかしボルドー国の国土は広大な上山岳地帯も多い。コーデュロ上陸作戦の戦況報告を待たなければ」
ボルドー国の国土は地球世界で言うと中国とインドとロシアの沿海州ぐらいの国土面積である。また、標高の高い地点も多いため燃料補給が重要になる他、様々な課題がある。
米軍が設置したシェルターに入り話を続けた。
「そうだ。それと日本方面の状況はどうなっている?」
「日本側は抵抗を続けていますがややボルドー軍側が優勢です。現在部隊派遣中ですが間に合うかどうか・・・」
すると地上の方で爆発音が鳴り響いた。ボルドー国が発射したミサイルが着弾したのである。
「これは面倒だな・・・」
航空自衛隊 厚木基地 第6レーダーサイト
この厚木基地の第6レーダーサイトは昨年設置されたためまだ実戦経験は豊富では無いが最新鋭のレーダー探知機が備えられている。また、関東甲信越隅々まで監視ができることから八丈島の動向も余裕である。
更に爆弾装甲も備えられているため核兵器や貫通弾以外は大丈夫な仕組みであることや地下にあるように目立たないようになっているのである。
「司令、八丈島で大型航空機の離陸を確認しました。3時間後に神奈川上空に到達します!」
福留司令はレーダーに大型航空機の機影が映った画面を見ながら指示を出した。レーダーの表示には設定された国籍やどれくらいの武装が施されているのかが分かる他、いつ到達するかの時間まで計算されているのである。
「分かった。速やかに現場部隊に伝えよ!」
「了解!」
第6レーダーサイトから発せられた通信は東京方面の防空部隊に伝わった。また、羽田・成田・入間・府中・習志野等から陸自ヘリやF35、早期警戒機、渋谷区内のPAC4が展開した。さらに長距離ミサイルや超角度ミサイル、鹵獲した超動力ミサイルの展開も開始された。
「果たしてこの作戦が吉と出るか凶が出るか・・・」
八丈島近海上空
燃料補給と点検整備が完了した航空母機は若返ったかの如く新品同然の状態で離陸した。八丈島基地で点検整備を担当した根須整備士は苦い顔をしていた。
「(自分が整備点検した航空機が同じ日本人を殺めるなんて・・・逆らえないのは分かるが何とも不甲斐ない・・・)」
彼は整備点検の際に一度虚偽の報告をしようとしていたが最終確認はボルドー軍司令官と整備員が厳重チェックする。そのため虚偽報告や誤魔化しは一切通用しないのである。
航空母機 機内 機長司令室機長
離陸後の機内には680人のボルドー空軍兵士が搭乗している。司令室ではレーダーで補足した飛行機の所属判定をしていたりする。
「待機中の全ての隊員に連絡する。敵首都爆撃後空軍降下団員による首都占領を開始する。占領開始よりすべての日本人を丁重に扱え」
降下団による首都占領が開始されるため総理大臣ら閣僚などは一時的に隔離施設に収容される。一時的なものであるため数日すれば解放されるだろう。
「機長、敵首都で部隊の動きがありました。早速攻撃を開始しますか?」
「まだだ。敵が油断している所を狙う。初動の攻撃を開始するならカナガワ上空に接近したところで第一次攻撃を開始する」
八丈島での整備の際、載せられる戦闘機の上限から25機となった。また、第一次~第五次攻撃+空母からの爆撃は効果抜群である。
「ですが機長、撃墜された場合の状況も視野に入れなければなりません。その場合は一体どうするんです?ここにいる680人の人命を預かっていることもお忘れなく」
「分かっている。その時の事態に備えての対処も考えている。安心するんだ」
「了解です」
航空母機は残り数時間で首都攻撃が開始される。ボルドー側の作戦は果たして成功するのかまたは日本側が防衛成功するのか否か。
ボルドー国 通例会議
アスキー指導は各大臣を召集し、通例会議兼国防会議が開かれた。この会議では日本方面での戦況報告や国防費の増強と軍事力の更なる拡大、戦後の国家権威の上昇や新世界秩序の構築などについて話し合われる。
「まもなく日本側から降伏の勧告が来るだろう。しかし最後までやつらは何をするのか分からない。彼らの国は武器ではなく槍で航空機を落とせると考えていたそうだ。だから最後まで気を緩めることなくやるのだと伝えよ」
「了解であります」
航空母機が離陸する前から開かれていたこの会議は四時間を越えた。最後の話題であったため足早に終了した。
アスキーは端から見たら人をイラつかせるような笑みを浮かべながらこう言った。
「我が国は日本を完膚なきまでに蹂躙してやる・・・くくく」