9-26 航空母機 5 -反撃の狼煙-
ボルドー国占領下 八丈島
ボルドー軍によって改修された旧自衛隊基地は大変貌を遂げた。そのため任務中の航空母機の着陸も容易である。また捕虜の空自隊員は交通網の復旧などの作業をしている。
松島基地爆撃後、航空母機らは八丈島基地に着陸した。着陸後機体の整備や負傷者の治療などが行われる予定である。
「負傷者を治療室へ!」
「了解!」
松島基地作戦時、空対空ミサイルによって爆弾倉庫付近が攻撃され近くにいた6人が負傷した。6人の内2人は日本人捕虜であった。
「ボルドー軍傘下自衛隊八丈島方面衛生部隊の五十鈴です!すぐに治療を開始します!」
負傷者の容態は安定しているもののいつ健康状態が悪化するか分からないため迅速かつ慎重に作業を進めた。
交代交代で治療を行い、9時間後に全員の治療が完了した。心配停止など重篤兵がいなかったためスムーズに終了した。
「治療任務終了しました!」
「了解。ゆっくり休め」
五十鈴ら衛生隊員は航空母機の修復を見ながら休憩した。
「本土は今どうなってるんだろう・・・」
「分からん。だが松島基地が破壊されたということは日本は負けかけている状況なのかもしれない。捕虜解放を待つばかりだ」
「いっそのこと脱出して見ます?」
「馬鹿なことを言うな。国防の職についている者が民間人を見捨てるのか?一度考えてみたらどうだ」
畠衛生隊長は五十鈴を叱責した。自衛隊員たるもの国民を見捨てるわけにはいかない。
「分かりました!頑張ってみます!」
「あぁ。それが良い。今は我慢の時だからな!」
「はい!」
その後、衛生部隊は島内を巡回し、異常が無いか確認した。八丈島の島民はボルドー軍占領時は恐れたものの次第に友好的関係になっていった。例えば農業の手伝いや食料配達、医療関係の後方支援などを行うなどしていた。
ボルドー国 コーデュロ陸軍基地
この基地は国際同盟軍上陸予想地点付近の陸軍基地で、対空兵器が数多く配備されている。自衛隊から鹵獲した対空ミサイルや自走砲が置かれている。
しばらくして、敵接近を知らせる警告音が鳴り響いた。
「各員、臨戦態勢!国際同盟軍の接近を確認した!速やかに敵を排除せよ!」
「行くぞぉ!」
「うおぉぉぉ!」
自衛隊から鹵獲した装備品は捕虜の自衛隊員がボルドー兵士に教育を行った。
接近する国際同盟軍の部隊は陸海空軍の統合部隊の編成である。その数1万。圧倒的に数が足りない状況である。
「たったの一万か・・・我々の敵にもならんな!攻撃開始!」
基地に隣接していた空軍基地所属の戦闘機部隊13機が離陸した。一方の国際同盟軍の編成は米軍第5艦隊を主力とした部隊となっている。
国際同盟軍 ボルドー国初動上陸艦隊
航空母機の攻撃前夜の間に国際同盟はボルドー国へ上陸作戦を開始した。相手方も動向に気づかれているため大規模な戦闘が予想される。
「敵本土接近。各艦の判断で攻撃を開始せよ」
『こちら「ノア」了解』
ノゲイラ連邦海軍のミサイル駆逐艦「ノア」を筆頭に海上自衛隊護衛艦「もがみ」などの艦艇がミサイル発射を開始した。
「敵地よりミサイルを確認!対空戦闘用意!」
ボルドー軍側からも地対艦ミサイルが放たれた。同盟海軍は迎撃準備を開始した。しかし、地上配備型の超動力ミサイルであったため準備が間に合わなかった艦もいた。
「こちら「ヴェルデ」。敵ミサイルにより後方に着弾。負傷者あり。至急応援を求む!」
『こちらもだ』
ザールラ共和国海軍駆逐艦「ヴェルデ」やノルテ王国海軍の艦艇などに被害が及んだ。米海軍空母「アナハイム」から救難機が離陸した。
「艦長、敵ミサイル発射拠点を一掃しますか?」
「そうしたいのだがいかんせん敵防空網が固い。強行突破といくか・・・」
「了解です艦長。艦載機を全機発艦させましょう!」
「あぁ。日本方面では苦しい状況が続いているがこっちも頑張らないとな!全機発艦!」
米海軍空母「アナハイム」のソロモ艦長の命令によって各国の空母の戦闘機からステルス戦闘機F35JSやアコースティ空軍のアクロス8X爆撃戦闘機が発艦した。
「敵ミサイル部隊の拠点を黙視した。攻撃開始。敵基地を更地にせよ」
『了解。爆弾投下!』
戦闘機から対地爆弾や空対地ミサイルを投下した。この攻撃によって多くの戦闘機のミサイルを消費してしまった。
「敵基地への攻撃終了。敵基地は更地と化した。いつでも上陸可能です!」
『了解。揚陸艦隊及び水陸両用戦力部隊の出撃を開始せよ』
戦闘機からの対地攻撃によってコーデュロ陸軍基地と空軍基地は更地となった。そのため上陸作戦開始の合図が下された。
「さぁ始めようか・・・どっちが降伏するか勝負だアスキー」
日本国 首相官邸地下
「総理、明日いよいよボルドー軍による首都爆撃が開始されます。民間人の避難は完了していますが、都市機能の復旧には時間を要するかと思われます」
「承知している。そのためには根元から潰さなければならない。また、八丈島の奪還も検討している。今は耐えの時間だ」
「了解です」
大島総理は明日開始される首都爆撃に冷静に対策案を練っていた。また、航空母機の撃破後は八丈島の奪還も視野に入れている。命令は出来ないものの作戦を国際同盟軍に伝えることになっている。