9-24 航空母機 3 -松島空中戦-
ボルドー空軍航空母機による初動の爆撃まで残り一時間となった。現在地としては松島基地から270km地点を飛行中である。そのため松島基地所属隊員は戦闘機の整備を怠らずにやっている。
「F15-6の整備完了しました!」
「よし!そのまま7,8,9の整備もやっていってくれ!」
「了解です!」
松島基地では整備時に機体番号順にやっていく。そのため整備漏れ報告を減らすことが可能なのである。
すると基地にアナウンスが流れた。
『松島基地所属隊員にお知らせします。接近中の大型航空爆撃機の現在地と到達予想時間を通達します。本基地より東に約360km、到達予想時刻は11時3分と予想しています』
気づけばもう残り30分程度となっていた。整備士たちは急ピッチで作業を行っていた。
「整備確認第4弾終了しました。これでいつでも行けます!」
「了解です!よしお前たち!気合い入れていくぞ!」
「おう!」
東京都心
昨日からボルドー軍による爆撃で強制避難勧告が発令されていることもあり、新スクランブル交差点や人通りの多い場所にあまり人がいなかった。避難先としては名古屋や大阪、京都など標的外の西日本地域であった。天皇陛下も京都に避難された。
新スクランブル交差点には規制が敷かれ、万が一の場合に備えて陸上自衛隊の対空装備が配備されている状況になっている。
「佐賀美隊長、敵航空機の本土到達まで残り10分です!」
「そうか・・・奴等がやられるか我々がやられるかの瀬戸際。つまり首都崩壊のカウントダウンが迫ってきている。何とかしてでも食い止めなければ・・・」
佐賀美首都対空特別任務隊長は嫌な汗を流しながらもその時を待っていた。
「防衛省から通達!「大至急装備展開を行い、対空警戒を厳とせよ。武器の使用許可権は現場指揮官にの判断で行え」との通達です」
「了解。総員!武器展開準備!」
日本国 首相官邸地下 緊急安全司令室
大島総理を含めた全閣僚は爆撃予想時刻の30分前に地下司令室に移動した。
「総理、まもなく敵空軍機による攻撃が開始されます。総理、自衛隊部隊の無制限武器使用の許可を!」
「うむ。これより敵大型航空機撃墜作戦開始に伴い、対象地域に展開中の自衛隊部隊の無制限武器使用を許可する」
「了解です!」
5月5日以降の自衛隊の指揮官は国際同盟軍に移行されるため大島総理の最後の命令となった。
航空自衛隊 松島基地
「隊長、敵航空機の本土到達まで残りわずかです。出撃しますか?」
すでに少し小さいながらも肉眼で見える距離までボルドー空軍航空母機は到達している。
「総員!出撃準備!接近しつつある敵軍機を排除せよ!」
「了解!」
出撃の時となった。最初に離陸したのはF9NS-1,2,3とF15-1,2,3,4,5の8機である。第2陣でF9NS-4,5とF15-6~12が離陸する。F2やF35は最後の切り札として温存しておく。
「こちら15-1。敵大型航空機を補足した。実際に見てみると写真や資料よりもずっと大きい!」
『15-1他作戦行動中のすべての機へ。報告を受け取った。可能な限り接近し空対空ミサイルを2発ずつ発射せよ!』
「了解!」
航空母機に接近すると後方に控えていた20機弱の戦闘機が姿を表した。
「現在敵戦闘機と交戦中!繰り返す!現在敵戦闘機と交戦中!」
『こちら基地司令部!敵戦闘機を速やかに撃墜せよ!』
「りょっ了解!」
司令部と通信している間にも味方戦闘機は3機撃墜された。一方相手は2機しか撃墜することが出来なかった。
「やはり相手の戦闘機の動きが読み取りずらいな・・・一か八か空対空ミサイルを!」
F15-1のパイロット・萩尾は空対空ミサイルを発射した。放たれたミサイルはボルドー空軍戦闘機に命中したが、肝心の空母機には当たらなかった。
「司令部へ。空対空ミサイルでは敵空母機はびくともしません。ですが必ず弱点はあるかと思いますので探してみたいと思います!」
『了解!』
この大型航空機を動かすほどの力がどこで働いているのか。それを知らなければミサイルが消耗されるだけとなる。
『NS-2から15-1へ。まもなく敵が我が国の本土上空に到達します。また爆弾倉庫と見られる扉が開きました!』
「了解。全機、目標の爆弾倉庫へ攻撃を開始せよ!」
命令のもと、各機は通常弾で爆弾倉庫を攻撃した。すると見事に命中し誘火されたのか大爆発を引き起こした。しかし、それだけでは墜落しなかったどころか機体の破片が地上に落下していってしまった。萩尾はこの爆発で全てを感じ取ったのである。航空母機の弱点は爆弾倉庫だということを。
「こちら15-1から司令部へ。敵航空機の弱点は下部の爆弾ハッチであることが判明!大至急・・・司令?」
司令部からの発信がなかった。司令部を見てみると炎上していた。一部の爆弾が地上に落下し、司令部に着弾してしまったのである。
「まずい!このままでは全滅・・・」
しかし幸運なことに待機中だった戦闘機は離陸し、萩尾らと合流した。
『萩尾、これからどうする!今はお前が司令の代わりだ!』
「了解!これより敵空母機下部付近を集中的に攻撃せよ!」
萩尾の指示のもと、各戦闘機はミサイル発射を行った。しかし、航空母機を護衛していたボルドー空軍戦闘機に妨害され命中には至らなかった。
「萩尾!二つ目の扉が開いたぞ!」
「総員、攻撃開始!」
しかし、相手も敵の動きに気づいたのか爆弾投下までの時間が早まった。そのためミサイルは命中したが、タイミングがずれたため地上に被害が及んだ。
「萩尾隊長!松島基地使用不可能です!」
2度目の爆撃により、松島基地の滑走路が爆破され使用不可能となった。松島基地は使用可能になるまで使えないため百里基地に待避することを決定した。
「総員、百里に向かう」
『了解!』
17機の残存戦闘機はこれ以上の戦力消費を防ぐため茨城県の百里基地と成田基地の使用許可を得た。また徹底によって松島での作戦は失敗。航空母機は首都圏方面への爆撃準備のため八丈島で燃料補給を行うことにした。
航空母機の燃料補給は整備含めて時間がかかるため首都爆撃は2日後になる。その間には国際同盟軍がボルドー国を攻撃していることだろう。