9-22 航空母機 1
5月4日、GWも残りわずかとなってきたこの日ボルドー軍は航空母機の投入を決定した。この航空母機は機体が大きいため速度が遅いことから撃墜される確率が高くなるいっぽう、爆弾搭載も数百発可能である。
日本国 総理執務室
「総理、緊急です」
「どうした?」
「敵航空基地から我が国が危険兵器と判断した航空母機の離陸を先ほど小型偵察機で確認しました。速度が遅いため我が国領空侵入予想時間は明日午前となるでしょう」
「そうか・・・高度は?」
「高度は約17000mと考えられます。F15で撃墜できるかどうかなのですが・・・」
ボルドー空軍航空母機の高度は17000m~20000mまで上昇可能である。そのため最大15000mまで上昇可能なF15での攻撃は難しく、護衛の敵戦闘機との交戦もあることからF15は使用不可になった。
「米国の判断は?」
「核による迎撃を検討していましたが民間人への被害が及ぶ可能性があることから核使用は中止になりました」
敵航空母機の経路は本土から米国領海を通り、グレーシス本土の首都郊外を爆撃後日本に向かっているのである。米国本土に接近の際、国防長官は核兵器による爆破を大統領に要請していたものの爆発後に本土への被害が出る可能性があった。
しかし、領土を避けて飛行していったため核兵器による敵航空母機爆破作戦は中止になった。
「総理の判断はいかがしますか?」
「私からすると・・・極力戦闘機の消耗を防ぐため無人戦闘機で対処する。また、防衛相に伝えてほしいのだが・・・」
「何でしょう」
「無人戦闘機編隊の脇に6機のF35を配置させ敵航空部隊を紛らわせるようにしておいてくれと伝えてくれ。明日が山場だ」
「了解です。全滅の可能性はありますか?」
「成るべく避けたいが全滅も視野にいれなければならない。この作戦は失敗すれば我が国の国民が再び危機にさらされる」
航空母機は米国本土を避け、グレーシスの首都郊外に15発投下。まだ100発以上残っている状況にある。また、空母機の護衛任務についている戦闘機は25機となっている。その中には日米から鹵獲したF2やF15,16,22,35の機体の姿もあった。
グレーシス共和国 近海
グレーシス共和国首都郊外に爆弾投下後、ボルドー空軍第302特別航空隊の航空母機は日本本土上空へ向けて飛行していた。グレーシス共和国首都郊外の爆撃は民間の建物はなかったため死者は出なかった。
「隊長、日本領空到達前に八丈島へ寄っていきますか?その際に燃料補給を行いたいと思うのですが・・・」
「残りの燃料はどれくらいだ?」
「全然余裕です。燃料補給の心配はないかもしれません。ですが一応やって損はないかと」
「分かった。飛行場のスペースは取れるのか?」
航空母機の機体は大きいため飛行場の敷地スペースはある程度の大きさが必要なのである。そのため占領した八丈島の飛行場はギリギリのスペースである。
「今確認しましたがこの機体での着陸は非常にギリギリですが何とか着陸できます」
「了解。予定通り日本国首都爆撃を遂行する。また、攻撃の際、敵からの迎撃が予想される。非常に危険な任務であるが君たちには努力してもらいたい」
「はい!隊長!質問があります」
「何だ?」
「敵戦闘機による反攻があった場合我々側の戦闘機が全機撃ち落とされた場合、又はこの機体が撃墜された時我々はどうすれば良いのでしょうか?」
航空母機の撃墜確率は97%である。そのため撃墜後速やかに脱出しなければ助かる可能性はゼロなのである。爆弾なども積んでいるため誘火の恐れもある。
「全隊員へ通達。敵空軍航空部隊による本機体が撃墜された時、早急に脱出しないと死ぬため君たちは覚悟を持って挑んでもらいたい」
「了解!」
隊長の話が終わり、小腹が空いた隊員は一口サイズの食べ物を食べていた。また、武器弾薬庫の整備や確認をしている者もいた。その中には7名の日本人捕虜の姿もあった。
「なぁ俺らはどうなるんだろうなぁ・・・捕虜になったのは残念だが今度は敵側になって日本と戦うことになるとは・・・」
「それなんだよなぁ・・・撃墜確率が高確率な機体に乗るのはためらいがあるよな」
捕虜の日本人は爆弾投下室の担当をしていた。また、隊長は彼らを優遇しているため最優先に脱出装置を装備させている。
「まぁ隊長は俺たちを優遇しているのは確かだからな。そこは許せるんだよなぁ」
「そだな!」
現在グレーシス共和国本土から300km放たれた距離を飛行中である。そのため日本への到着今日中には到着できない。また、燃料補給の時間もある。航空母機の燃料はかなりの量を必要とするため時間がかかるのがネックである。
日本側からすると明日が首都崩壊するか否かの別れ道である。果たして撃墜されるか首都機能が崩壊、そしてこの7人の日本人隊員は無事生き残ることが出来るのか。5月5日が迫ってくる。




