9-20 北海道二正面作戦 中編
同日、根室市・稚内市にてボルドー軍と陸上自衛隊による大規模な戦闘が開始されている。陸上自衛隊は無人戦闘車を用いて敵撃破を計画していたものの想定していた以上にボルドー側の抵抗が激しく最悪の場合鹵獲されて情報が流出する恐れがあることからAIと人の手による作戦が開始されることになった。
そのため作戦開始まで時間があったため各地点で連携確認を行った。
「これより根室・稚内解放共同作戦【トリガー】を発動する。作戦内容は両市内に展開中の敵部隊の排除と海上自衛隊員の救出と基地の解放、住民の安否確認などを行っていく。その際敵兵士を捕虜として保護した場合速やかに報告すること。稚内方面隊、よろしいでしょうか?」
『了解です。ですが順調に作戦が進むとは思えません。最悪の場合も想定して交戦した方が良いかと思われます。敵は我が国の無人兵器に対しても互角の戦闘を繰り広げています。ですので油断は禁物かと思われます』
「分かった。最悪の事態というと部隊の全滅間近もしくは相手側の抵抗が激しく泥沼状態になって来た場合を想定した方がよいですね」
『そうですね・・・だとすると鹵獲などの情報漏洩を防げるように無人戦闘車の一部撤収を行わせなければいけませんね』
「ですね。それと敵捕虜の扱いについての方針は変わらずですよね?」
『はい。捕虜は丁重に扱わなければいけません。さて、まもなく作戦開始です』
「了解。総員まもなく作戦開始。繰り返すまもなく作戦開始。作戦参加隊員は所定の位置に集合し指示を待て」
その間に25式無人戦闘車(25無車)は数台撤収された。既に何台か破壊されており今回の作戦には損傷した25無車の回収も作戦の内に入っている。理由として25無車は重要な情報が多くあるため同じようなものを複製されたものを投入されると厄介なことになる。
《25無車-3~6帰還しました。整備点検を実行してください》
「了解。整備班は25無車の整備を開始せよ!」
「了解!」
現在根室市の一部を占領中のボルドー軍は徐々に駐屯地に近づきつつある。一方稚内方面は膠着状態となっている。稚内方面の25無車はボルドー兵士を次々と撃破していっている。
「稚内方面部隊へ通達。30分後に総攻撃を開始する。戦況報告を行え」
『了解。稚内方面のボルドー軍に対処中の25無車は優位な状況に立っている模様』
稚内から上陸したボルドー軍は携帯型対装甲ミサイルを持ち運んでいないため稚内方面の25無車は容易に敵の撃破が出来ている。一方根室方面のボルドー軍は携帯型対装甲ミサイル部隊に上陸されているため苦戦してしまっている。
「隊長、連絡中失礼します。敵陣地への威嚇射撃を行ってもよろしいでしょうか?」
「ダメだ!その威嚇射撃によって戦況が北海道全土に広がる可能性がある。状況を見極める判断力を持たなければならない。いいね?」
「了解です隊長」
威嚇射撃によってそれが戦線の拡大に繋がることを危惧した。北海道全域にまで戦域が広がった場合、第7師団全戦力が北海道防衛を行わなければならず管轄下の沖縄方面の防衛もあることから戦線拡大は避けるべきだと判断したのである。
『こちら稚内方面隊、15分後より敵上陸部隊へ攻撃を開始する!根室方面は機を見極めし第射撃を開始せよ』
「了解。現在1430(ヒトヨンサンマル)。稚内方面同様15分後に敵部隊への制圧射撃を開始する」
そして15分後、稚内・根室方面隊は戦車大隊と普通科連帯を統合させ機械化歩兵部隊を編成させ攻撃を開始した。
「全隊員に射撃命令。目標市内にて抵抗中のボルドー軍!あらゆる手段を用いて敵を排除せよ!撃ち方初め!」
隊長の合図のもとジャベリン等を用いてボルドー軍へ攻撃を開始した。突然の攻撃によってボルドー軍は第一次攻撃で120人が負傷した。
ボルドー軍 根室方面陣地
「部隊長!敵軍からの攻撃です!」
「分かった!動けるものは総力を上げて反撃せよ!」
「了解であります!全兵士へ、敵軍からの攻撃に対する反撃を開始せよ。遠慮はいらない。どんどんやっていってくれ!」
「「「了解!」」」
根室市内の一部を占拠中のボルドー軍は携帯型対装甲ミサイルやXS戦車などで反撃を行った。XS戦車は再装填に時間がかかるものの日米から鹵獲した弾薬を進化させ、威力の強い武器へと改良することに成功した。また、携帯型対装甲ミサイルも米国から鹵獲したジャベリンを捕虜に改良させ、各部隊へ配備された。
陸上自衛隊 第7師団機械化歩兵部隊根室方面隊
「前方に敵兵視認!撃て!」
「隊長!距離が遠すぎて敵に当たりません!もう少し近づいた方が・・・」
「総員!危険なのは十分承知の上だがここから敵との距離が遠いことから接近戦闘を開始する!全隊員前へ!25無車の後ろへ!」
《目標を再確認しました。これより殲滅射撃を開始します。危険ですので一定の距離を保つことをオススメします》
「了解!総員25無車より後ろへ!」
根室方面隊は25無車による殲滅射撃開始が行われることにより安全確保のため後方に下がらなければならなかった。しかし敵に背を向けたことにより数人の隊員が撃たれて怪我をすることがあった。
「全員気を抜くな!集中しろ」
「了解!」
《殲滅目標敵歩兵部隊。射撃開始》
すると25無車は適切な殲滅方法を導きだした。それは自衛隊員の小銃と同時に射撃を行い部隊の包囲殲滅を行うことが導きだされた。
「総員、包囲殲滅開始!第1班~第7班までは北部方面から、第8班~第17班は南部から、第18班~第27班はこの場で待機、第28班~第40班は西武方面から包囲殲滅を開始せよ」
『了解』
「(さぁここがお前らの墓場だ!)」
陸上自衛隊稚内方面隊
ボルドー軍と市内にて交戦してから2時間が経過した。被害は建物まで及んでいる他対人・対戦車対策兵器も配備されてしまっており、軍事拠点化してしまっている状況にある。
「大沼隊、聞こえるか?」
『こちら大沼。隊長、怪我人が続出です!次なる指令を!』
「分かった。怪我人には衛生隊員を送る。また新たな指令を告げる。それは市内にて展開している他の隊と共同で敵が配備した兵器を鹵獲するかもしくは破壊せよ!」
『りょっ了解であります!危険な任務であろうと必ずや遂行して見せます!』
「頑張れ!」
敵が配備した兵器の鹵獲または破壊任務に任命されたのは22人いる大沼隊であった。大沼は日米転移前の第三次世界大戦も経験している熟練隊員である。
「班隊長!司令から何か?」
「あぁ。敵が配置した置物を排除するか鹵獲するかのどちらかを行えとの命令があった。出来るか?」
「やらずに後悔するよりやって後悔した方がよいと思うので私は賛成です!」
「自分もです班隊長!」
自分も自分もという声が聞こえてきたことで大沼の士気は最上級なものとなった。
「行くぞ!」
「おぉ!」
一方稚内市に展開中のボルドー軍は携帯型対装甲ミサイル部隊がいないため戦車の撃破に苦労していた。そのため司令官は苛立ちを隠しきれずにいた。
「何故だ!何故あの喋る戦車を完全撃破出来ないのだ!?」
「モルドブ司令、イラついては余計に寿命が縮みます・・・ここは冷静になってください」
「分かっている・・・だが相手よりも人員・物資は多いはずなのにどうしてだ・・・」
「やはり技術ではないでしょうか?我が国は技術力も高いですがやはり数で押しきる風潮にあるようですね・・・」
ボルドー軍はもちろん技術は高いもののそれに反比例する形で数だけどんどん増えていってしまっている状況になっているのである。そのため相手の作戦・行動・武器などを正確に理解しないとたとえ人員が多くても技術力・指揮統制能力で負けてしまうのである。
「落ち着きましたか?」
「あぁ落ち着いた。しかし開戦前まではあんなのがあるとは聞かされてないぞ?いつ開発したんだ?」
「分かりません。ですがこれだけのものを短時間で作ってしまう技術力・工業力があるのは確かです」
陸上自衛隊の25無車は開戦前からあった。しかしそれは超軍事機密ものであった。そのため第7師団の自衛隊員と内閣官僚・製造会社の四辻重工業関係者しか分かっていないのである。
「モルドブ司令!失礼します!」
「どうした!」
「味方兵の一部が裏切りました!内通者かと思われます!」
「くそ!裏切りか・・・」
戦闘中に12名のボルドー軍兵士が裏切りを働いた。裏切りによって武器の性能や弱点・司令拠点の所在などがバレることになる。
「奴ら・・・汚い手を使いやがって!」
裏切り者の発生により戦局が一変する可能性がある。根室方面では裏切りは発生してはいないものの何が起きるか分からない。