9-19 北海道二正面作戦 前編
5月1日 北海道の根室と稚内方面からボルドー軍が上陸を開始した。自衛隊機に偽装した輸送機や鹵獲した護衛艦を用いて歩兵部隊を送ったのである。その数およそ13万人。根室方面に6万人、稚内方面に7万人に分割させた。
陸上自衛隊根室駐屯地 第25戦車大隊
「草津大隊長!根室の海自基地が攻撃を受け上陸を許しました!至急敵部隊殲滅開始許可を!」
「分かった。隊員の安全を考慮し無人戦車の実践投入を開始する!大至急準備されたし!」
「了解!」
海上自衛隊の根室基地と稚内基地が不意打ち攻撃を受け、出航不可能となったことでボルドー軍はこれを北海道占領の好機とし部隊を上陸させた。
「札幌の司令部からです!」
「読み上げよ」
「【敵軍の北海道への大規模部隊の上陸を確認した。敵戦力およそ13万人。各駐屯地はあらゆる武器を用いて敵部隊の侵攻を阻止せよ】だそうです」
「分かった。25式無人戦闘車起動せよ!」
《敵戦力排除任務戦闘車・25式無人戦闘車起動しました。排除対象を設定してください》
「ボルドー軍。そしてこのマークか・・・」
《排除対象の設定が完了しました。排除対象はボルドー軍地上戦力部隊。現在根室駐屯地方向に向けて進行中。完全排除を実施します》
「ほぇ~すごいですねこれ」
「あぁそりゃそうだろう」
日本政府と米国政府と防衛省と国防総省が長年の研究によって開発された25式無人戦闘車はAIへ指示を行うことで音声認識システムで敵の位置・戦力を把握することが出来る。この無人戦闘車はまだ北海道にしか配備されておらず、今後順次配備されていく。一方米国は25式無人戦闘車の改良版としてM2A4無人エイブラムス戦車を配備した。
「この映像で確認することが出来るらしい」
「なるほど・・・」
無人戦闘車からの映像で敵との交戦中の映像が映し出されている。
《排除対象を確認しました。敵部隊の完全殲滅を開始》
『何だコイツら!本土で聞かされた情報と全く違う!喋る戦車なんて聞いたことない!隊長!引き返しを求めます!』
『バカ野郎!ここは戦場だ!ひとまずあの不気味な戦車を片付けるぞ!』
『了解です!』
出撃した25式無人戦闘車の数は10両。その10両全部に大量の武器が入っている。有人のスペースが無いことで弾薬の補充と隊員の殉職リスクが減るのである。
「大隊長!」
「今度はどうした?」
「稚内にて第24戦車大隊と第17ドローン隊がボルドー軍約7万人が上陸。これに合わせて無人戦闘車と攻撃型ドローンの投入が行われました」
「時代は常に変化しつつあるのだ。それは戦車も同じなのだ」
「大隊長、これ見てください」
映像に映っていたのは案外善戦するボルドー軍兵士であった。
『手榴弾投げろ早く!』
『はい!』
『どんどん撃っていけ!例え相手が喋る戦車だろうがなかろうがやることは変わらん!鹵獲するか破壊するかのどっちかだ!』
『了解です!』
ボルドー軍兵士の徹底抗戦で無人戦闘車はすでに2両壊されていた。
「不味いな・・・鹵獲されたら今までの苦労が水の泡になる可能性が高い。総員出撃準備!」
いくらAIであろうと最終的には人の手によって全てが決まるのである。草津大隊長は帯広から急行してきた第17普通科連隊と合流し人の手によるボルドー軍殲滅が行われようとしていた。
陸上自衛隊稚内駐屯地
現在上陸してきたボルドー軍を排除するため第24戦車大隊と第17ドローン隊と第19特科団と第5水陸機動団が交戦中であった。敵側の兵力は7万人に対し陸自側は2万5000人程度であるため無人装備の使用行われている状況である。
「映像から見る限りだと苦戦しているようだ・・・」
白木隊長は無人機の映像から徹底抗戦の様子が伺われる。そのため航空支援も要請した。
「稚内統合作戦部隊長の白木から第19航空支援隊へ。現在敵上陸部隊と交戦中。状況は現在一進一退の。航空からの敵軍掃討支援を求める」
『こちら第19航空支援隊。航空支援要請を承認した。敵戦力排除のため攻撃ヘリを出撃させる』
「了解」
東千歳基地から18機のAH-2Sコブラが離陸した。このコブラはAH-1やAH-1Zヴァイパーの新型攻撃ヘリで2027年に配備された。対地・対戦車に有効であるため敵部隊の上陸時に敵輸送車輌の撃破も可能である。
『まもなく現場空域に到着。景気付けに曲でも流せ』
士気上昇のため例の音楽が流された。
『目標空域到達。敵地上軍の掃討攻撃を開始する。全機射撃開始!』
コブラから25mm機関銃が連続で射撃された。これによりボルドー軍は混乱した。しかし、ボルドー軍側も反撃を行った。以前鹵獲した19式地対空ミサイルによって18機の内6機が撃墜された。ボルドー国に一度持ち帰られ捕虜が提案した追尾型のミサイルが備えられた。
『くそ!味方が6機もやられた!対地爆弾投下開始!』
『それだけはダメです隊長。これを落としたら味方まで被害が及びます!』
『分かった』
この対地爆弾は地上に展開する敵部隊を凪ぎ払うかの如く爆発する。そのため直接被害を受けていなくても駐屯地に爆風が飛んでくるぐらいの威力を有している。使用のタイミングは総理と防衛大臣の許可があった場合に認められるため今使用したら違反となる。
『支援航空隊から稚内統合作戦部隊へ。敵部隊の半数を撃破した。通常兵器での攻撃で排除せよ』
「了解。航空支援感謝する!」
その後12機のコブラは東千歳基地に帰還した。殉職したのは6機の隊員24人が殉職した。黙祷を捧げ被害が出ないことを誓った。
航空支援後、稚内統合作戦部隊は総攻撃を開始した。
「総員戦闘体制!目標敵上陸部隊。最大級の攻撃を行い敵の進軍を阻止し、占領された一部地域の奪還を開始せよ!行くぞぉ!」
「「「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」」」
根室そして稚内でも大規模な戦闘が開始された。この戦闘は北海道の死守によって戦局が大きく変わる可能性もある。




