9-18 4月(2)
4月30日、エルヴィス海軍第1護衛艦隊はボルドー海軍と交戦中であった。ボルドー海軍第50駆逐空母艦隊は第1護衛艦隊を圧倒している。そのためエルヴィス海軍は近海で航行中の武藏連邦海軍に支援を求めた。
「エルヴィス海軍第1護衛艦隊から武藏連邦海軍第8空母艦隊へ救援要請!」
『こちら第8空母艦隊。救援要請を受理した。至急援護に向かう』
「了解。敵艦艇数はおよそ120隻と推定。米国から給与された対艦散弾ミサイルを搭載しているか?」
『搭載していません。ですが安心してください。我が国が開発した新型ミサイルである対制海戦闘ミサイルの使用を行います』
武藏連邦国の国防省は米国との新型ミサイル開発の結果、対制海戦闘ミサイルは相手国からの侵攻を受けた際、制海権の維持が確保できない場合、そして奪還する際に自国領海に侵入した相手国艦艇を撃破させることができるミサイルである。海上に着弾させ爆発を誘導させることで効果を発揮する。日本にはまだ給与されていないが2032年までに100発を給与する方針で連邦政府は調整している。
「対制海戦闘ミサイルの援護攻撃を開始してください」
『了解』
エルヴィス海軍にはまだ対艦散弾ミサイルは給与されているものの数に制限があるため中々使うことが出来ないのである。
『対制海戦闘ミサイル発射用意!目標味方艦艇前方の駆逐艦およそ120!撃て!』
専用のミサイル発射管から対制海戦闘ミサイルが発射された。このミサイルが使用されるのはボルドー国と開戦して以降初である。威力は試験発射で確認しているものの真の威力をまだ知らないのである。
『まもなく目標に弾着!』
「サワラ艦長!ミサイルが数発撃墜されました!」
『了解!』
武藏連邦海軍から発射された戦闘ミサイルは20発発射された。その内の8発がボルドー海軍駆逐艦の迎撃システムで撃ち落とされた。しかし12発が敵艦周辺に落下し爆発を起こした。
『目標に着弾を確認!敵艦残り68と推定。通常ミサイルを使用する』
「了解。支援攻撃感謝する」
海上に着弾させ第爆発を起こす戦闘ミサイルはボルドー海軍駆逐艦数を120隻いた艦艇が68隻まで減少した。さらに無料化させるためエルヴィス海軍と武藏連邦海軍は通常型の対艦ミサイルを使用した。
『敵駆逐艦ミサイル発射!全艦回避行動!』
「了解。全艦回避と共に迎撃戦闘システム起動!」
この迎撃戦闘システムはミサイル攻撃時に起動し、必要な高度と迎撃方向の角度調整、対処方法などを自動的に選別してくれる海上ミサイル防衛手段である。G7構成国で開発し、試験運用後各国海軍艦艇に順次配備予定となった。
ちなみにエルヴィス海軍の護衛艦は全て日米のお下がりの艦艇であるため第4・第5護衛艦隊の数隻は旧式装備を使用しているため威力が弱い。そのため新装備の配備が求められる。第1,第2,第3護衛艦隊は国防出動の際に出動する可能性が多い艦隊であるため多くの新兵器が配備されている。
「須磨田艦長!システム不良です!」
「何!?間に合わないか・・・総員!衝撃に備えよ!」
エルヴィス海軍第1護衛艦隊護衛艦「はるさめ」の艦長の須磨田は冷静に対応した。迎撃戦闘システム4基の内3基がシステム不良となった。そのため1基のみで対応しなければならない。
「本艦に敵ミサイル着弾まで10秒前!9.8.7.6.5」
「須磨田艦長!迎撃戦闘システム復旧しました!」
「撃て!」
奇跡的にシステム不良だった迎撃戦闘システム3基が弾着5秒前で起動した。
《海上ミサイル迎撃戦闘システム・マリーン起動しました。補足したミサイルを撃破します》
このシステムはAIが喋る機能が付いている。また、この迎撃戦闘システムの正式名称は海上ミサイル迎撃戦闘システム・マリーンと呼ばれている。
「危な・・・!」
「全ミサイル撃破成功!」
AIによる迎撃戦闘システムは一部システム不良があったものの無事にミサイル攻撃による被弾から免れた。須磨田艦長は安堵した。
「さぁ残りの敵を駆逐するぞ!」
「了解!」
すると敵艦隊後方から見たことのある戦闘機が登場した。それはボルドー軍が鹵獲したF15戦闘機であった。捕虜の空自隊員がボルドー空軍のパイロットにF15の乗り方・操作方法を訓練させた。
「あれは日本のF15!?何でここに?」
「分かりません!ですが一つ推測されるとしたらボルドー軍が鹵獲した戦闘機が他にもあるかもしれない。あの空母の中に・・・」
「マジですか・・・撃墜しますか?」
「敵の驚異はいかなるものでも排除しなければならない。あれが鹵獲した戦闘機とすると何をされるか分からない。撃墜を許可します」
「了解。全艦に撃墜命令!目標上空敵戦闘機!艦対空ミサイル発射用意!撃て!」
飛来してきたF15戦闘機4機とボルドー軍が所有するCT-90戦闘機2機に対して撃墜命令を出した須磨田は艦対空ミサイルを発射させた。
「目標の撃墜を確認!墜落した戦闘機の乗組員の救助活動に移行せよ」
「了解。救難護衛戦闘ヘリの発艦を許可する」
『こちら第1救難戦闘ヘリ部隊。発艦許可を確認。敵戦闘機の乗組員の救助活動を開始する。全機出動!』
第1護衛艦隊の護衛艦から3機の救助護衛戦闘ヘリが発艦した。この救難護衛戦闘ヘリは救助活動へ行こうとする際に敵側からの攻撃で二次被害が発生する可能性を考慮して救助ヘリにミサイル2発、機銃2基が搭載されたヘリである。
「敵戦闘機の乗組員を2名救助完了。君たちの名前は?私の名前は須磨田だ」
「ナカイ・ホクトです・・・」「イシー・ジョーシ」です
ナカイ・ホクトと名乗る日本人とイシー・ジョーシと名乗るボルドー空軍軍人を発見した。彼らは捕虜として救助された。
「自分は日本に帰れるのですか?」
「あぁ。エルヴィス本土の捕虜検査後に日本政府に身柄を引き渡す。君もだよイシーくん」
「ありがとうございます!」
救助された捕虜のナカイ(中井)は日本に帰れることに喜びの笑みを浮かべた。
「さぁ護衛艦に戻りましょう」
その後も救助活動を継続した結果、新たに2名発見された。一人は米国人、もう一人はボルドー空軍の軍人だった。
『艦長、4名を救助しました。日本人捕虜を1名救助しました。その他にも米国人も発見されたためエルヴィス本土の検査場での検査を実行後各政府に身柄の引き渡しをお願いします』
「了解」
すると敵艦隊は動きを停止した。撤退の準備かと思われる。
「艦長、敵艦隊が動きを停止。撤退かと思われます」
「そうか・・・。敵艦隊が撤退を開始した。全艦戦闘停止!」
その後ボルドー駆逐艦隊は撤退を開始した。失った艦艇数は40隻以上となった。一方エルヴィス・武藏連邦艦隊が失った艦艇数は6隻であった。
しかしボルドー国は日本の休日に会わせて大攻勢を仕掛けてくるのであった。地獄のGWが始まろうとしているのである。




