表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪戯なサイコロゲーム番外編~素直の先にあるものは~

作者: 真ん中 ふう

この物語は、短編「悪戯なサイコロゲーム」の続きのお話です。


気に入って頂けると幸いです。


それでは、物語、スタートです。


外はすっかり、冬景色の12月。

吹く風はますます、寒さを加速させていく。

そんな季節、秋は部活終わりの修司と二人、いつもの屋上へ続く階段の踊り場で過ごしていた。


「…ん…ちょ…」

階段の踊り場の壁際で、秋は座り込んでいた。

そんな秋に覆い被さるように、片方の手を壁につけた修司が呟く。

「なに?」

「だから、…ん!」

何かを言おうとした秋の唇を、修司はまた塞いだ。

修司は目を閉じ、秋の唇の甘さを堪能する。

そんな、修司に対して、秋はなす術もなく、骨抜きにされてしまう。

(ダメだ…体の力が抜ける…。)

修司が与えてくれる、甘いキスに、秋は抵抗できない。


最近の修司は、変わった。

秋が修司に告白してから、秋に対しては、前より喋るようになったし、いつものポーカーフェイスで居ることが、少なくなった。

秋の前では、よく笑顔を見せてくれるし、考え事をしている時も、分かりやすくなった。

そして、何より変わったのは、秋に対して、積極的になった。

修司は、部活が終わると、秋の待つ、屋上の階段の踊り場に急いでくる。

最初は秋と、他愛のない話をしているが、すぐに秋を求めてくる。

音楽を聞いているイヤホンを外され、耳元に修司の手が伸びてくる。

そのまま、耳元をくすぐった手は、秋の頬に触れ、反対の頬に口づけをする。

そして、秋の目を見て、「好き。」と呟く。

それを合図にするように、秋の唇に、長くて甘いキスをする。


秋は、そんな修司も、修司がしてくれるキスも、嫌ではない。

修司が秋の唇に酔っているのをみると、安心する。

ただ、恥ずかしさだけは、どうしようもなかった。

その恥ずかしさの原因も、秋には分かっている。

でも、修司はどうなんだろうと思う。

自分と同じように…。

しかし、そんな考えはいつも、キスの途中で、覆されてしまう…。


秋は、今日こそはと、自分を奮い立たせた。

「…ん…ちょっと…たんま…。」

「…え?」

秋は、キスの途中で、修司の肩を押した。

急にキスを中断された修司は、小さく、驚いている。

秋は、下を向いたまま、今までずっと言いたかった事を口にした。

「お前、ちょっと、がっつきすぎだから。」

そう言われて修司は、一瞬止まってしまった。

しかし、すぐに理解して、クスクスと笑いだした。

「ほんとの事だろ❗オレ、いっつもいっぱいいっぱいなんだからな!」

笑われた事で、秋の照れ隠しが加速して、言わなくても良いことまで、口走ってしまった。

「いつも?」

修司が優しく確認してくる。

それ事態、秋にはもう、恥ずかしい。

「…そうだよ。」

秋はそっぽを向いて、呟くように答える。

「いっぱい、いっぱい?」

「…悪いかよ。」

恥ずかしさに顔を上げられなくなった秋を、修司はぎゅっと抱き締めた。

「すみません。」

修司が優しく、囁く様に言った。

「悪い事、してないのに、謝るな。」

「どっちなんですか?」

修司は、秋を抱き締めたまま、またクスクスと笑った。

秋は、抱き締められる心地よさにしばらく、身を委ねた。

修司は秋の髪を優しく撫でている。

(気持ちいい。)

いつも、修司の腕の中にいると、気が緩んでしまう。

今日も、その例外ではなかった。

秋は、空っぽになった頭のまま、思った事を口にしていた。

「お前はいつも、余裕だよな。」

「…そんな風に見えますか?」

「見えるよ。なんかこう、落ち着いてるって言うか…。」

(このまま、聞いちゃおっかな。)

ずっと、気になっていた。

「お前さ、初めてじゃないよな?」

「え?」

修司の髪を撫でる手が、止まった。

「別にそれが嫌だとかじゃないんだ。ただ…」

秋は顔を上げ、修司を見たが、修司をまっすぐ見ることが出来ず、目線を反らした。

「ただ?」

修司の優しい声に、秋は泣きそうになった。

「悔しいなって。」

そう言って秋は、修司の胸に顔を埋めた。

なんで、ほんとの事を言うのって、こんなに恥ずかしいのかと、秋は思う。

そして、なんでこんなに切なくなるのか。

秋は自分が修司にとって、最初なら良いのにと思っていた。

だが、そんな考えは、キスをする度に消えていく。

秋をリードするように優しくキスをする修司が、初めてじゃない事は、なんとなく想像できてしまっていた。


そして、秋の髪を優しく撫でながら、修司が言う。

「すみません。中学の頃、付き合ってた子がいたんです。向こうから告白されて、初めてだったから、好奇心で付き合って。…キスもして欲しいって言われてしたのが、最初で。でも、オレ、後悔したんです。」

「…なんで?」

秋が小さく聞いてくる。

「本当に好きな人と最初にしたかったなって。」

その言葉に、秋は、顔を上げた。

(本当に…好きな人…。)

そんな秋の顔を修司は、両手で包みながら、言った。

「だから、先輩とは、いっぱい、いっぱい、キスしたくて。たまらなくて。いつも、我慢出来ないんです。」

そう言って、修司は照れたように笑った。

秋は、その修司の言葉と表情に、一気に胸がいっぱいになった。

(なんで、いつも、こんなに、まっすぐなんだよ。)

修司の素直な言葉は、いつも、秋をドキドキさせる。

そして、切なくさせる。

でも、その事を伝えるのは照れ臭くて、秋は、少し意地悪な言い方をした。

「オレ、結構大変なんだけど。」

「…すみません。」

修司は秋の頬を包んでいた手を離し、申し訳無さそうに呟いた。

秋は、修司がほんとに、しょげているように思えた。

そんな修司に秋が言った。


「オレ、お前が初めてだから…。」


「え?」

修司は驚いた顔を見せた。

「付き合うのも、キスすんのも、お前が初めてなの!…だから、余裕なんて、ないんだよ!バカ!」

秋は、言いながら、膝を抱えて、顔を隠した。

(言っちゃった。)

ずっと、言わないつもりだった。

こんな恥ずかしい事。

そして、修司にキスされる度に恥ずかしくてたまらない理由まで、言ってしまった。

「先輩」

膝を抱えて、顔を隠す秋の頭を修司がポンポンとする。

「なんだよ。」

「顔、見せて。」

「やだ。」

まるで子供のような秋に、修司は困ったような顔をしながらも、秋の膝を抱える手にキスをした。

「お前!」

修司の予想外の行動に、秋は思わず、顔を上げた。

秋が顔を上げた隙に、修司は秋の両サイドに手をつき、距離をさらに縮め、秋を覗き込んだ。

「そんな事、言われたら、我慢できなくなるでしょ。」

そう言って、また秋がうつむかない様に、下からすくい上げるように、キスをした。

「ん!」

秋は突然の事に、目をぎゅっと閉じた。

しかし、修司は、それだけですぐに唇を離した。

「え?」

いつもと違う流れに秋は、思わず閉じていた目を開け、声を出してしまった。

そして、修司が言った。

「なるべく先輩が困らないように、ゆっくりするから。先輩も少しずつ、慣れて下さい。」

修司は優しく微笑んだ。

その修司の想いに、秋はまたドキッとさせられた。

(まったく。天然め。)

でも、そんな修司が好きなんだと、再認識させられる。

それがまた、悔しくて、秋は拗ねたように言った。

「子供扱いすんな。」

そんな秋を見て、修司は笑顔で返す。

「すみません。」

「まったく。」

そして、二人で額を合わせて、笑い合った。


秋は思う。

修司になら、どんな自分も見せていける。



二人の恋はまだ、不安定さを持ちつつも、少しずつ前に進んで行く。










読んで頂き、ありがとうございました。


他にも同じく、BL作品で

短編 「悪戯なサイコロゲーム」

   「忘れられない彼~君との時間は~」

「忘れられない彼~あなたが知らない僕~」

を投稿しております。

まだの方は、是非、読んでみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ