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星を掴んで旅に出ろ

『ーーーーー1つの世界は6つに分かれ、星に危機迫るとき、再び1つとなる』


…暗い。

予言めいたセリフが暗闇の中、聞こえる。

闇の中に現れた、薄らぼんやりと光る小さな瞬き。1つ、2つ、3つ…。宙に浮いているような6つの丸い光。


何か居る。そのかすかな光の前に、おぼろげな輪郭が浮かび上がっている。辛うじて人の型であることが分かった。


光の球が動く。ゆっくりと。緩やかな軌道を描きながら。


『時満ちるか。子等が運命に耐えられると良いが』


しわがれた声が冷たく響く。


『全ては星の下に』


そして光は消え、あとは闇が満たすばかり――…


ーーーーーーーーーー………


視界がゆっくりと明ける。まるで夢から覚めたみたいな感覚だ。実際は寝てるのに。不思議だ。


名前とか見た目をどうこうと言ってたナレーションみたいなのは頭の中に直接響いて、さっきの闇の中の光景は俯瞰して見てるみたいだった。


瞬きを数回して目を慣らす。古い木版を繋げた部屋の天井が見える。背中側の感じが固い気がする。マットの上に寝ているのか。


上体を起こして辺りを見回してみる。壁、家具、布団、自分の体…。おお、自分の体も見える。手のひらでマットを押すとギッギッと鳴った。本当に知らない部屋に居るみたい。すげぇな。これゲームなんだ。


「………………!………………!!」


声を出してみようとしたが、出ない。…喋ることはできないのか。


「キョウスケ、起きてる?

早く支度しないと、マージウちゃんが来るわよ。一緒に星掴み取り祭に行くんでしょう」


木の扉の向こうから女性の声がする。家族か。

俺はマージウという子と何かの祭に行くみたいだ。何だろ。星掴み取り祭って。星の形のお菓子とかを袋に詰め放題とかするのかな。


あれ、俺…肌着みたいな格好だ。靴も履いていない。さっきまで寝てたからそりゃそうか。ええと…服は…


部屋に1つしかない箪笥の引き出しを全て開けてみたが、服は一着しか見つからなかった。

白いシャツと紐の付いたグレーのベスト、ベージュのズボンに古びたブーツというコーディネート一択。

一着って。洗ったら、着る服無くなるじゃないか。いや、部屋の感じも質素だし、ここの生活水準が貧し目設定なのかもしれない。


服の他に見つけたのは、ベッドの下に落ちてあった小さな手鏡。

覗き込むと、オリーブグリーンの髪をふんわりと流し、鼻筋の通った小さな顔が写る。二重の穏やかそうな目は、薄い茶色でハイライトが多い。薄い色の唇が絶妙な位置に配置され、肌はすべすべだ。


かなりの美形に仕上がっている。海外のモデルみたい。自分である感覚のまま、自分でない顔を見るのは変な気分で、しばらく鏡を見つめてしまった。


…我に返って手鏡をベストのポケットに入れた。服と手鏡の他、もう何もなさそうなので、部屋を出てみる。


リビングダイニングのような部屋に通じた。玄関のような厚みのある木の扉が正面に見える。階段はない。平家だ。茶色の髪を一纏めにした痩せ型の女性が、台所付近に居る。見た目的にどうやら彼女が母親だ。父親は居ない。出掛けてるんだろうか。


ダンダンダン!


玄関らしき扉を叩く音がした。いきなりだったのでびっくりした。

扉を開けると、茶色に近い赤毛を編み込んだ、小柄な女の子が立っている。袖が膨らんだ長袖のブラウスに桃色のオーバースカート。ちょっと俺が着てるのより質が良さそう。先程の玄関を叩く音は彼女の仕業だ。音でかくない?

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