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俺は携帯ですぐにマジファンΣを検索して、ダウンロードした。VRゴーグルへのインストール手順と注意書きが表示される。注意書き全部にチェックしないとインストールできないみたいだ。
『マジカルファンタジークエストΣをダウンロードいただき、ありがとうございます。
このゲームは基本無料でお楽しみいただけます。VRゴーグルにデータをインストールして、就寝の際にゴーグルの電源を入れた状態でご使用下さい。睡眠時の脳波にシステムシグナルを送り込み、夢の代わりにゲームシナリオを体験する事ができます。』
長い注意書きが続き、チェックボックスの付いた箇条書きの文言が携帯画面に並ぶ。
『約7時間の睡眠で2時間のプレイが可能です。生活に支障のない時間帯にプレイしてください。』
『1日のプレイ時間は最大2時間半(睡眠時間9時間)です。プレイ時間と配信開始時間をゲームスタート時に設定して下さい。プレイ時間は後から変更できますが、配信開始時間は変更できません。』
『個人差はありますが、シナリオ中の動きに合わせ、就寝中の体が動くことがありますので、必ず寝具の上などの安全な場所でご使用ください。』
『プレイ中は五感が現実世界と異なります。痛覚は全くありません。ゲーム中の感覚で現実世界の生活を送らないようにご注意ください。あくまでゲームであることを忘れないようにしましょう。現実世界で発生したトラブルについて、運営側は一切責任を負いません。』
『シナリオはお客様が設定した時間にゴーグルを起動すると無線配信します。終了時にシナリオの進捗を記録を行ってください。記録せずに終了すると、その日のプレイデータが消えてしまいますのでご注意ください。』
『特別シナリオや特殊アイテムの配信には一部有料となるコンテンツがございます。利用する際は、携帯などの端末でダウンロード、お支払い設定を行ってください。ゲームデータが欠損・消滅する恐れがありますので、非正規のデータはダウンロードしないでください。』
長いので内容をほとんど読み飛ばしてチェックを入れ続ける。最後に有効になったインストールボタンを押した。インストール完了の字が携帯に表示されて、プレイ時間の設定を要求された。とりあえず、2時間に設定する。
時刻は22時手前。早速今日からやってやろう。配信開始時間を22時以降に設定した。
『端末での設定は完了しました。就寝前にゴーグルを起動し、装着してください。』
俺はさっさと寝支度を整え、ゴーグルを装着してベッドに横になった。
ゴーグルを付けたままで眠れるものかと思っていたが、結構すぐに意識が曖昧になって、頭がぼんやりとしてきた。深く深く夢の中へと沈んでいく感覚。
ーーーーーーー…………
暗闇の中、声が聞こえる。何となく機械的な女性の声。
『ようこそマジカルファンタジークエストΣの世界へ。あなたはこの世界の危機を救う勇者として旅をしていただきます。まずは性別を教えて下さい。
性別によってストーリーが変化することはありませんが、キャラクターが若干変化します。マジカルファンタジークエストの世界は非常に感覚がリアルとなるため、現実世界の性別と会わせることをオススメします』
じゃあ、男で。
『次に外見を教えて下さい。体型や髪型、色、目、鼻等の各パーツは千種類、あなたの好みで作り上げてください』
え?千種類??見るだけでかなり時間掛かるじゃないか。
面倒だな…何か良い感じに適当にやってくれないかな。
『畏まりました。それではあなたの現実的外見を元にフィジカルメンテナンスを開始します…
ーーー………………
………………
お待たせしました。外見の設定が完了しました。確認しますか?』
いや、別にいいや。
『以降は外見の変更はできませんが、よろしいですか?』
いい、いいよ。見た目は何でも。
『では最後にあなたの名前を教えて下さい。指定がなければ「ミカタカ・セイギノ」となります』
…ミカタカ?ダサいな。名前…うーん…キョウスケでいいや。
『畏まりました。勇者・キョウスケの旅に幸多きことを!』