表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

モテてモテて仕方の無い男

パンツの右ポケットが小刻みに震える。携帯端末に無料アプリのメッセージが届いているのだろう。その度に音が出るのが鬱陶(うっとう)しくて、いつもマナーモードにしている。

一々確認しない。返信しない。端末もいじらない。今は。

一応、隣に人が居る。


「じゃあ湯川くん、夕方にまた。あたし次講義、教育学部棟だから」


ニコッと手を振り、彼女はガラス張りの教育学部棟へ入っていった。指先に光るトレンドカラーのネイル。きれいに巻いた揺れる茶髪を俺は見送る。

俺は次の講義、マクロ経済だ。


『来週の水曜日、映画楽しみだね』

『昨日はすごい楽しかった』

『ねえ明日空いてる?』

『また遊んでよ』

『何で返事くれないの?もう3日たってんですけど』

『私たち、別れよ』


ポケットから携帯を抜いてチラッと見ると、画面を新着のメッセージが埋め尽くしている。違う女の子達からだ。最後のやつは誰だろう。付き合っている子はいないんだけど。


「京介!やっほー」

角一(かくいち)…」


日本人男性の平均より少し低い背の男が小走りで近づいてくる。寝癖なのかパーマなのか分からない黒髪。手入れをしていないハの字眉 、浮腫(むく)んだような重たい一重の目。低い鼻にぷっくりとした唇がアンバランスな丸顔の男。同じ学科に通う角一 誠だ。


「さっきの子、すげー可愛いね、誰?」

「三回生の… 名前なんだっけ」

「マジかよ。昨日連れてた子は?」

「さつき…いや、ききょうだったかな」

「これだからモテ期が止まらないヤツは」


そうだ、俺は客観的に見てモテる。一人で街を歩くと声を掛けられることはしょっちゅうで、メッセージアプリの交換を迫られるのは日常茶飯事だ。

流行りの若手俳優に似たスッキリとした顔立ちで、長い手足。

恵まれた持って生まれたものもあるけど、何も努力していないわけじゃない。身だしなみには気を付けている。筋トレやジョギングも欠かさずやって、ジャンクな物は極力避ける。引き締まった体の維持に気を配って、清潔感を重視した服装を心掛ける。ファッション誌を定期的にチェックして、髪型から足先までシルエットがきれいに見えるようにしている。

逆に言うと、外見だけちょっと手入れすれば、女の子が勝手に寄ってくるってだけ。

次々にメッセージが来るけど、面倒だから返信は気が向いた時しかしない。


「塩対応だと嫌われるぞ」

「俺は来る者は拒まないし、去る者も追わないからね。それに俺のこと好きなわけじゃないよ。見た目のいい男を連れておきたいだけだから」

「そんなことないよ。真剣に恋をしてる子もいるよ。虚しい事言わないでよ」

「俺に寄って来る子に真剣な子は居ないよ。付き合ったとしても、適当に付き合って、適当に別れるんだから」

「京介に人の心を説くのは無駄だったわ」


角一が薄目で溜息を()く。

こんな感じだから、俺は男の連れは殆どいない。女達と遊ぶ時間を優先するから誘いを断るのもあると思う。飲み会も俺が一人モテるから、全く呼ばれなくなった。大学で会っても挨拶する程度の付き合いの奴等ばかり。俺に話しかけてくるのは、学科のオリエンテーションでたまたま隣に座っていたこの角一くらいだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ