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出会い




お兄様とミリアを連れて家から出たところで、お兄様がリュリアーナの片手を取り歩き始める。


「それで、リーナは本当はどこに何しに行きたいの?」


お兄様の言葉に驚いた顔を向け「え!?」と声を発する。

そういえば今日は街に行くことにしてあったた・・・。

魔の森に向かう気満々だったけどお兄様に言うのを忘れていたわ!


「あ、あのねお兄様。お願いがありますの!わたくし本当は魔の森に行きたいのですわ」


「お願い、お兄様!」と言葉を続け、お兄様を見る。

お兄様は顎に手を当て考えるそぶりを見せる。


「魔の森か・・・。ちなみに理由は?」


「魔の森に行けば魔王の息子に会えるかもしれないからですわ。わたくし、どうしても魔王の息子に会いたいんですの!お兄様お願いしますわ!」


「魔王の息子に?どうして会いたいんだ?」


「どうしても会いたいんですの!!」


惚れているからですわ!とは言えず、とにかく会いたいんだと伝える。

お兄様は少し俯き考えていたようだったが、少しすると顔を上げリュリアーナを見る。

リュリアーナは必死な顔で「お願い!」と全身で訴えていてレイフォードは少し笑ってしまった。


「分かった。じゃあ魔の森に行こう。でもリーナはまだ魔法が使えないから絶対に一人で行動しては行けないよ。必ず僕かミリアと一緒にいること。約束できるかい?」


「は、はい!絶対に離れないとお約束しますわ!ありがとうですわ、お兄様ー!!」


意外にもあっさりと魔の森への許可が下りて、嬉しさのあまりお兄様に抱きつき、すりすりと頭を擦り付ける。


「ほら、リーナ。髪がぐちゃぐちゃになってしまうよ。魔の森は近いけど森の中は深いから早く行こうか」


お兄様が差し出す手を取り、にこにこと笑いながら歩き出す。


「お兄様、お昼のためにお弁当を作りましたの。一緒に食べてくださいませね!」


「あぁ、もちろんいただくよ。楽しみだね」


繋いだ手を少し振りながら意気揚々と魔の森に向かった。

髪は少し乱れてしまったけど即座にミリアが直してくれました。

一瞬で直ったのよ!すごい早技だったわ!

さすがミリアね!




* * *



魔の森の入り口についた三人は、お昼にはまだ早いのでそのまま進むことにする。


「リーナ、魔王の息子がどの辺りにいるのか分かるのかい?」


「いいえ、分かりませんわ!」


「・・・え?」


「え?」


お兄様が「やっぱりかー」と項垂れる。


「あのね、リーナ。魔の森は、森の中がすごく広大なんだ。何も目処がないのに入るべきではないんだよ、普通は」


なるほど。

魔の森に入って適当に歩いていれば、そのうち魔王の息子と会えるものだと漠然と思っていたわ!

なんて馬鹿だったのかしら!


でも魔王の息子に会う目処なんてないもの。

こうするしかないわよね!


すぐに立ち直り、「迷子にはならないように、いろいろ歩き回りましょう!」とお兄様に言うと「普通は迷子にならないように歩き回らないものだけどね」と笑われた。





魔の森に入ってから1時間ほど経ち、そろそろお昼にしようかという流れになった時。


リーナの目の前に”黒髪黒目”の少年が現れた。


お兄様がはっと息を飲み、リュリアーナの腕を少し引き少年と距離を取る。


「何のためにこの森へ入った」


少年はまだ声変わり前の少し高い声で問いかけてきた。

お兄様がそれに応えようとしたところでリーナが返事をする。


「あなたに会いにきましたの!お会いできて光栄ですわ!ユリシュティ様!」


リュリアーナは内心で「きゃー!!!」と叫びを上げながらもそれは外に出さずに、笑顔でユリシュティに駆け寄り手を取った。

ユリシュティは急なことについていけてないようで「き、君は?」と発するのがやっとのようだった。


「あら、わたくしったら!申し遅れましたわ。わたくしはシュベルツァ公爵家の娘、リュリアーナ・シュベルツァと申します!今日はあなたにお会いするためにこの森へ参りましたの!」


「僕に会いに?どうして?」


リュリアーナの勢いに気圧されながらも、理由を問うユリシュティの瞳には鋭さが宿っていた。

が、リュリアーナの言葉にその鋭さは消え、代わりに瞳がこれでもかと言うほど見開かれることになる。




「ユリシュティ様!わたくしと結婚してくださいませ!」


対するリュリアーナは終始とても嬉しそうににこにこしていた。

やっと出会わせられましたー!

長かった!!!!

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